IPRは訴訟コストを6%しか下げていない?IPR効果の分析

統計

IPRは特許訴訟よりもコスパがいいとされていますが、実際の効果はどれくらいなのでしょうか?IPRの訴訟費用に対する効果を考える時、費用節約と同時に、IPRが訴訟コストを増加させてしまうシナリオも考えると、以外と思われるたった6%のコスト削減という結果になりました。

PTAB手続きによるcollateral estoppelのリスク

estopel

PTABの手続きにおいて、過去に同じ問題が争われている場合、collateral estoppelが適用されるか注意する必要があります。今回はCollateral estoppelが適用された判例を通して、どのような時にcollateral estoppelが適用されるか考察してみます。

仮出願を特許無効審査で使う方法

先行例文献

原則、仮出願自体は、先行文献になりませんが、本出願の開示やクレームによっては、本出願の先行文献としての有効日を仮出願の出願日までさかのぼらせることができます。

下院特許法改正法案H.R. 5340

“Support Technology & Research for Our Nation’s Growth and Economic Resilience (STRONGER) Patent Act”という特許法改正法案H.R. 5340が下院(House)で発表されました。これは、上院( Senate )で以前に発表された法案とほぼ同じで、2015年から存在する法案です。 しかし、この法案はAIAで制定された特許庁で特許を無効にできる仕組みを排除するものになっており、この問題に対してソフトウェア・テクノロジーセクターの思惑(全体として弱い特許を望む)と製薬業界の思惑(全体として強い特許を望む) が真っ向に対立しているので、この法案が法律として制定される可能性はほぼありません。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Scott A. McKeown. Ropes & Gray LLP Long-Stalled Stronger Patents Act Introduced in House

遺伝子をベースにした発明の特許戦略

元記事では、オーストラリアとアメリカを比較していますが、このまとめではアメリカの部分のみをまとめています。 2015年、Association for Molecular Pathology v. Myriad Geneticsにおいて、アメリカ最高裁は、自然に存在する核酸分子をただ他の遺伝子物質から分離しただけでは、特許にならないという判決を下しました。しかし、最高裁は、クレームされたDNAと自然に存在するDNAの物理的な分子の比較に注目したため、合成的に作られ自然に存在するプロテインのための配列の一部を除去したcDNAに関しては、特許性があると判断。理由は、特許でクレームされたcDNAは自然に存在するものとは違う核酸配列であるからというものでした。 この最高裁の判例を拡張し、特許庁は、自然に存在するプロテインや微生物をただ単に自然な環境から隔離しただけでは特許にならないとしました。さらに、病気や健康状態と相互関係のある自然に存在する遺伝子やプロテインなどのバイオマーカー(biomarkers)による診断方法は「それ以上のもの」(“something more”)がなければ特許にならないとしました。(Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc. (Mayo”); Ariosa Diagnostics Inc. v. Sequenom, Inc. (Fed Cir. 2015)(“U.S. Sequenom”)。「それ以上のもの」(“something more”)とは、新しい器具や、新しい自然に存在しない試薬や、新しい治療などです。 このような遺伝子をベースにした発明に関する取り扱いは、国ごとに異なります。アメリカでは、このような発明で広い権利を取得するのは難しいので、クレームする際にスコープの異なったクレームを多彩に用意することをおすすめします。例えば、権利が広く取れる国ではクレームをより広くし、アメリカでは上記で説明した「それ以上のもの」(“something more”)を加えることで、発明に対する保護が最大化されることでしょう。 遺伝子をベースにした発明に対する権利化は、国ごとに判断が異なり、また、常に変わっていきます。医療系の特許は価値が高いので、同じようなクレームで各国に出願するのではなく、出願国によってクレームを変えることで、発明に対する保護を最大化するべきです。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Kimberly Dempsey Booher, Hollace Topol Cohen, Edward R. Ergenzinger, Andrea Mealey and Martin B. Robins. FisherBroyles LLP https://www.fisherbroyles.com/wp-content/uploads/2018/03/FB-IP-Newsletter-March-2018-2.pdf

弁護士が証拠保全のアドバイスを怠ると違法行為としてみなされる

アメリカの弁護士だったら誰でもDiscoveryの重要性を認識していて、訴訟の弁護で雇われてすぐにやることは訴訟ホールド(litigation hold )と呼ばれる証拠保全です。しかし、今回、弁護士がクライアントに十分証拠保全の説明をしていなかったとして、弁護士が違法行為(malpractice)に問われました。 経緯: Industrial Quick Search, Inc.とMichael Meiresonne, and Meiresonne & Associates (まとめて原告とします) は、彼らを著作権侵害訴訟で弁護していたMiller, Rosado & Alogis, LLP(被告)を違法行為(malpractice)の疑いで訴えました。この訴訟では、被告事務所のパートナー2名も名指しで、被告人として加えられています。 被告は、この違法行為訴訟の元となった著作権侵害訴訟で原告を弁護していました。その著作権侵害訴訟で、原告は機密情報の不適切な取り扱い、著作権の盗用と意図的な関連する書類の廃棄の疑いで訴えられていました。この著作権侵害訴訟で、判事は、原告の意図的な関連する書類の廃棄を認め、原告は、著作権侵害訴訟で負けてしまいました。 このことを受け、原告は、彼らを著作権侵害訴訟で弁護していた被告の証拠保全に関する説明不足は違法行為(malpractice)にあたるとして訴えます。特に、被告はどのようにDiscoveryに対応して行ったらいいのか、Discoveryの返答の準備、訴訟に関連がない情報の保全、保管、開示と処分許可などについて原告による法律的なアドバイスがなかったと主張しました。 この原告の主張に対し、被告は、弁護士として原告の関連の可能性がある書類の保全に関してアドバイスする義務はないと主張し、さらに、口頭で訴訟ホールドを行なったと主張。 しかし、裁判所は、被告の主張を却下し、訴訟当事者の弁護士にも、当事者と同様、証拠を保全する義務があることを示し、訴訟当事者の弁護士がまず関連する書類の保全に責任があり、クライアントである当事者にどのような情報が訴訟に関連する可能性があるのか、また、どのようにそのような情報が破棄されること防ぐのかをアドバイスしなければいけないとしました。さらに、裁判所は、弁護士には訴訟ホールド(litigation hold )を行う義務と、クライアントが訴訟ホールドに従っているか監視する義務もあるとしました。 このような義務を怠る場合、通常の弁護士の基準を下回ると考えられるため、怠った弁護士は違法行為(malpractice)のリスクがあるとしました。 教訓: 弁護士がクライアントに対して証拠保全義務に関する説明を怠ってしまうと、違法行為(malpractice)のリスクがあります。このようなリスクを避けるためにも、弁護士は率先して証拠保全を指揮していく必要があります。具体的には、訴訟ホールド(litigation hold )の通知を行なったり、どのような書類を保全するか特定したり、クライアントからの証拠保全に関する質問に答えていくなどが挙げられます。ただ単に、関係書類全てを保全するようにクライアントに指示するだけでは、この弁護士の責任を満たす可能性は低く、より十分な説明とサポートを行う必要があります。 コメント: この記事はアメリカの弁護士向けにかかれていますが、これを弁護士を雇う側の視点から見ると、もし証拠保全ができずにそれが原因で訴訟に負けてしまい、その証拠保全の失敗が雇っていた弁護士の責任であれば、その弁護士を訴えることができるということになります。ベストは信頼できる有能な弁護士を雇うことですが、もし雇った弁護士が無能(?)であっても、違法行為(malpractice)訴訟という形である程度の救済の可能性があります。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Tushar P. Vaidya. Seyfarth Shaw LLP FAILURE TO ADEQUATELY ADVISE CLIENTS ON THEIR PRESERVATION OBLIGATIONS CAN BE CONSIDERED MALPRACTICE

PTABのウェブサイトが更新されました

The Patent Trial and Appeal Board(PTAB)のウェブサイト(https://www.uspto.gov/patents-application-process/patenttrialandappealboard )が新しくなり、より直感的に操作できるようになりました。また、モバイルにも対応しているので、スマホやタブレットでも見やすくなりました。 あまり利用する機会はないと思いますが、PTABにおける手続きの統計データをわかりやすく公開しているので(https://www.uspto.gov/patents-application-process/patent-trial-and-appeal-board/statistics )、アメリカのPTABにおける特許無効審判に関する情報を入手するのに便利なサイトです。 まとめ作成者:野口剛史 情報元:AIPLA Newsstand March 26 2018

特許の所有だけでは当事者適格(Standing)を満たさない場合がある

Andrea Electronics Corp. (“Andrea”) がAppleなどを特許訴訟で訴えたITC調査のinitial determination (ID、仮決定)において、行政判事(ALJ)であるLord判事は、特許権者であるAndreaは、一部の権利を譲渡・移管した第三者を当事者として加えない限り、当事者適格(Standing)を満たさないと判決しました。Certain Audio Processing Hardware, Software, and Products Containing the Same, Inv. No. 337-TA-1026, Initial Determination (Oct. 26, 2017). このITC調査で、Andreaが特許権者であることには異論は出なかったのですが、訴訟の対象になっている特許に対する実態的なすべての権利(“all substantial rights in the patents-in-suit”)を持っていないとAppleが主張。 通常、このような当事者適格(Standing)が問題になるのは、訴訟の対象になっている特許における権利の一部を譲渡・移管された側(例えば、Exclusive licenseeなど)が訴訟を起こす時に問題になり、判例のAzure Networks v. CSR PLC, 771 F.3d 1336 (Fed. Cir. 2014)において、9つの判断要因がリスト化されています。 the nature and scope of the right to bring suit; the exclusive right […]

NPEから特許を買い訴訟を起こすNPEがいるアメリカ

NPE(またの名をパテント・トロール)に関する情報を多く提供するRPX社によると、Monument Peak Ventures, LLC (MPV) というNPEが、アクションカメラを生産・販売しているGoPro社やSZ DJI Technology社に権利行使をし、訴訟を起こしたとのことです。対象になっている特許は、MPVと提携のあるDominion Harbor Enterprises, LLC (DHE) がNPE大手のIntellectual Ventures LLC (IV)から買った旧コダック社の特許です。 過去2年間、Dominionと提携のある組織が、IVから受け取った特許を使い訴訟を起こし、IVから特許の追加取得を行なっています。2018年3月5日に、Dominionは、アメリカンエキスプレスが開発した1000にも及ぶ特許をIVから取得したことを発表。子会社のLiberty Peak Ventures LLC を使い、金融、小売、eコマースの分野で積極的にマーケティングを行い、収益化を見込むと発表しました。 RPX社の情報によると、Liberty Peak Venturesはテキサス州で設立され、 他の3つのDominionと提携のある組織 Vista Peak Ventures LLC (1,200 ものLCDに関わるNECから受け取った特許の収益化のための組織だと思われる; Principle Packaging LLC (食料品を扱うDel Monteが所有していた特許のキャンペーンを開始); Sovereign Peak Ventures, LLC (目的は不明)も同じテキサス州で設立されています。 コメント: NPEは細分化されより専門的になってきて、企業や個人から特許を買ったりするだけではなく、NPEから特許を買い、その特許の権利行使を行うNPEもいる状態です。また、NPEも特許訴訟事務所と手を組んだり、特定のポートフォリオに特化した子会社を特許権者に有利だとされている地裁、Eastern District of Texasがあるテキサス州に設立するなど、NPEの活動は緻密で巧妙になってきています。 アメリカのNPEにターゲットにされやすい会社は、RPX社などが提供するこのようなNPEの業界の情報を事前に把握することで、自社へのリスクを測り、NPEにアプローチされる前から事前に対策を考える体制を整えておくといいでしょう。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:RPX Corp https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=43b49c46-4890-49e1-975e-f83d31a8803f