ハイライト
CAFCは、仮出願を仮出願の出願日における先行文献として使う場合、仮出願がその仮出願の優先権を主張した本出願のクレームの第112条サポートをしていなければならないとしました。
仮出願を特許無効審査で使うには?
通常、仮出願は、公開されず、先行文献としても考慮されませんが、最近のCAFCの判決を見ると、仮出願を有効的に特許無効審査で使える場合があることが見受けられます。例えば、仮出願の出願日を使い、その仮出願の優先権を主張した本出願の文献(つまりissued patentやpublished patent application)が先行文献だと示すことができます。もし仮出願による早い出願日への優先権の主張を証明できれば、仮出願で開示されている点について、仮出願の出願日の時点で先行文献になりえる可能性があります。つまり、そのような場合、事実上、仮出願を先行文献として取り扱うことが可能になります。
仮出願の恩恵を得るためには、仮出願が十分に情報を開示していて、優先権を主張する本出願のクレームに対して特許法35 U.S.C.A. § 112に明記されているwritten description と enablement supportを提供する必要があります。この本出願が特許ではなく公開特許案件(published patent application)の場合、クレームに対する審査が行われておらず、審査期間中はクレームが変わるため、公開されたクレームに対して仮出願が§ 112を満たしているかが不明瞭になってきます。
メインの先行文献が公開特許案件で、その有効日を仮出願の出願日に戻したい場合、仮出願において公開されたクレームに対して特許法35 U.S.C.A. § 112を満たすのに十分な開示がなされている必要があります。
例を用いて考えてみましょう
例えば、AとBが開示してありBに対するクレームのみが書かれている文献があり、その文献を出願日がその文献よりも早いAに対するクレームが書かれている特許の先行文献として使いたいと考えます。この文献は、優先権を主張している仮出願があり、仮出願の出願日が適用されれば、対象特許の先行文献となるとします。
このような状況で、仮出願にAのみが開示されている場合、文献でクレームされているのはBだけなので、クレームされたBに対して特許法35 U.S.C.A. § 112を満たす開示が仮出願でなされていないので、仮出願の出願日までさかのぼることはできず、この文献を先行例としては扱えません。
しかし、もし文献が自社のもので、審査期間中の公開特許案件(published patent application)の場合、この状況を変えることができます。例えば、審査中の文献のクレームをA関することがらに変更し、特許庁に再公開を依頼することで、新しい公開特許案件(published patent application)は、Aに関することをクレームしていて、仮出願もAに関しての開示があるので、仮出願が特許法35 U.S.C.A. § 112を満たすことができ、新しい公開特許案件の先行例としての有効日が仮出願の出願日になる可能性があります。
これに対し、特許権者側も反論することができます。判例を見ると、仮出願にさかのぼるためには仮出願が特許法35 U.S.C.A. § 112を満たす開示をしている必要があり、裁判所はこの基準を厳しく審査する傾向にあるので、仮出願と先行文献にしたい文献の間の関連性や開示などで不足している点を指摘することで、仮出願の出願日が適用されなくなる可能性があります。Dynamic Drinkware LLC v. National Graphics Inc., 800 F.3d 1375 (2015)などを参考。
最後に
原則、仮出願自体は、先行文献になりませんが、本出願の開示やクレームによっては、本出願の先行文献としての有効日を仮出願の出願日までさかのぼらせることができます。しかし、仮出願が本出願でクレームされていることがらに対して特許法35 U.S.C.A. § 112を満たすことができなければいけないので、仮出願と本出願の開示や関連性を見極めた後で、仮出願を特許無効審査で使うかどうかを検討することをおすすめします。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Michael J. Flibbert and Pier D. DeRoo. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP