特許の所有だけでは当事者適格(Standing)を満たさない場合がある

Andrea Electronics Corp. (“Andrea”) がAppleなどを特許訴訟で訴えたITC調査のinitial determination (ID、仮決定)において、行政判事(ALJ)であるLord判事は、特許権者であるAndreaは、一部の権利を譲渡・移管した第三者を当事者として加えない限り、当事者適格(Standing)を満たさないと判決しました。Certain Audio Processing Hardware, Software, and Products Containing the Same, Inv. No. 337-TA-1026, Initial Determination (Oct. 26, 2017).

このITC調査で、Andreaが特許権者であることには異論は出なかったのですが、訴訟の対象になっている特許に対する実態的なすべての権利(“all substantial rights in the patents-in-suit”)を持っていないとAppleが主張。

通常、このような当事者適格(Standing)が問題になるのは、訴訟の対象になっている特許における権利の一部を譲渡・移管された側(例えば、Exclusive licenseeなど)が訴訟を起こす時に問題になり、判例のAzure Networks v. CSR PLC, 771 F.3d 1336 (Fed. Cir. 2014)において、9つの判断要因がリスト化されています。

  1. the nature and scope of the right to bring suit;
  2. the exclusive right to make, use, and sell products or services under the patent;
  3. the scope of the licensee’s right to sublicense;
  4. the reversionary rights to the licensor following termination or expiration of the license; (5) the right of the licensor to receive a portion of the proceeds from litigating or licensing the patent;
  5. the duration of the license rights;
  6. the ability of the licensor to supervise and control the licensee’s activities;
  7. the obligation of the licensor to continue paying maintenance fees; and
  8. any limits on the licensee’s right to assign its interests in the patent.

今回は、この判例の逆、つまり譲渡・移管した側(特許権者)の当事者適格(Standing)が焦点になっていまが、このITC調査において、Lord判事は上記の判例を元に、特許権者であるAndreaの当事者適格(Standing)を判断しました。

Andreaは、AND34 Funding LLC (“AND34”)に訴訟資金を提供してもらう代わりに、対象特許に関わる幾つかの権利をAND34に移管していました。この移管で、特定の会社が特許侵害をしていた場合、AND34はAndreaがその会社を訴える、または、ライセンスすることに義務かし、さらに、AndreaとAND34が訴訟戦略のコントロールを共有することになっており(Azure factor 1)、さらに、Andreaは特許で守られている技術に対する開発を禁止されていて、権利行使することしか許されていなかった(Azure factor 2)、また、AND34は特許による収入を保証されていて(Azure factor 5)、AND34 が監督する権限を持っているという(Azure factor 7)点を考慮し、Lord判事は、Andreaは特許権者であるものの、一部の権利を譲渡・移管したAND34を当事者として加えない限り、当事者適格(Standing)を満たさないと判決し、ITC調査を終了しました。

教訓:

ITCにおいても、地裁での訴訟においても、特許訴訟を起こす場合、特許の権利に関わる当事者すべてを訴訟に参加させることが大切になります。訴訟の対象になっている特許に関わる権利が1つでも欠けていると、実態的なすべての権利(“all substantial rights in the patents-in-suit”)を持っていないとして、当事者適格(Standing)を満たさないと判断されてしまう可能性があります。また、被告側は、特許権に関して疑問がある場合、Azure factorsを考慮し、当事者適格(Standing)の不足を主張するか検討するべきです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Daniel Kazhdan Ph.D. and Blaney Harper. Jones Day

Owning the Patent Isn’t Always Enough for Standing

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