アメリカの弁護士だったら誰でもDiscoveryの重要性を認識していて、訴訟の弁護で雇われてすぐにやることは訴訟ホールド(litigation hold )と呼ばれる証拠保全です。しかし、今回、弁護士がクライアントに十分証拠保全の説明をしていなかったとして、弁護士が違法行為(malpractice)に問われました。
経緯:
Industrial Quick Search, Inc.とMichael Meiresonne, and Meiresonne & Associates (まとめて原告とします) は、彼らを著作権侵害訴訟で弁護していたMiller, Rosado & Alogis, LLP(被告)を違法行為(malpractice)の疑いで訴えました。この訴訟では、被告事務所のパートナー2名も名指しで、被告人として加えられています。
被告は、この違法行為訴訟の元となった著作権侵害訴訟で原告を弁護していました。その著作権侵害訴訟で、原告は機密情報の不適切な取り扱い、著作権の盗用と意図的な関連する書類の廃棄の疑いで訴えられていました。この著作権侵害訴訟で、判事は、原告の意図的な関連する書類の廃棄を認め、原告は、著作権侵害訴訟で負けてしまいました。
このことを受け、原告は、彼らを著作権侵害訴訟で弁護していた被告の証拠保全に関する説明不足は違法行為(malpractice)にあたるとして訴えます。特に、被告はどのようにDiscoveryに対応して行ったらいいのか、Discoveryの返答の準備、訴訟に関連がない情報の保全、保管、開示と処分許可などについて原告による法律的なアドバイスがなかったと主張しました。
この原告の主張に対し、被告は、弁護士として原告の関連の可能性がある書類の保全に関してアドバイスする義務はないと主張し、さらに、口頭で訴訟ホールドを行なったと主張。
しかし、裁判所は、被告の主張を却下し、訴訟当事者の弁護士にも、当事者と同様、証拠を保全する義務があることを示し、訴訟当事者の弁護士がまず関連する書類の保全に責任があり、クライアントである当事者にどのような情報が訴訟に関連する可能性があるのか、また、どのようにそのような情報が破棄されること防ぐのかをアドバイスしなければいけないとしました。さらに、裁判所は、弁護士には訴訟ホールド(litigation hold )を行う義務と、クライアントが訴訟ホールドに従っているか監視する義務もあるとしました。
このような義務を怠る場合、通常の弁護士の基準を下回ると考えられるため、怠った弁護士は違法行為(malpractice)のリスクがあるとしました。
教訓:
弁護士がクライアントに対して証拠保全義務に関する説明を怠ってしまうと、違法行為(malpractice)のリスクがあります。このようなリスクを避けるためにも、弁護士は率先して証拠保全を指揮していく必要があります。具体的には、訴訟ホールド(litigation hold )の通知を行なったり、どのような書類を保全するか特定したり、クライアントからの証拠保全に関する質問に答えていくなどが挙げられます。ただ単に、関係書類全てを保全するようにクライアントに指示するだけでは、この弁護士の責任を満たす可能性は低く、より十分な説明とサポートを行う必要があります。
コメント:
この記事はアメリカの弁護士向けにかかれていますが、これを弁護士を雇う側の視点から見ると、もし証拠保全ができずにそれが原因で訴訟に負けてしまい、その証拠保全の失敗が雇っていた弁護士の責任であれば、その弁護士を訴えることができるということになります。ベストは信頼できる有能な弁護士を雇うことですが、もし雇った弁護士が無能(?)であっても、違法行為(malpractice)訴訟という形である程度の救済の可能性があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Tushar P. Vaidya. Seyfarth Shaw LLP
FAILURE TO ADEQUATELY ADVISE CLIENTS ON THEIR PRESERVATION OBLIGATIONS CAN BE CONSIDERED MALPRACTICE