遺伝子をベースにした発明の特許戦略

元記事では、オーストラリアとアメリカを比較していますが、このまとめではアメリカの部分のみをまとめています。

2015年、Association for Molecular Pathology v. Myriad Geneticsにおいて、アメリカ最高裁は、自然に存在する核酸分子をただ他の遺伝子物質から分離しただけでは、特許にならないという判決を下しました。しかし、最高裁は、クレームされたDNAと自然に存在するDNAの物理的な分子の比較に注目したため、合成的に作られ自然に存在するプロテインのための配列の一部を除去したcDNAに関しては、特許性があると判断。理由は、特許でクレームされたcDNAは自然に存在するものとは違う核酸配列であるからというものでした。

この最高裁の判例を拡張し、特許庁は、自然に存在するプロテインや微生物をただ単に自然な環境から隔離しただけでは特許にならないとしました。さらに、病気や健康状態と相互関係のある自然に存在する遺伝子やプロテインなどのバイオマーカー(biomarkers)による診断方法は「それ以上のもの」(“something more”)がなければ特許にならないとしました。(Mayo Collaborative Services v. Prometheus Laboratories, Inc. (Mayo”); Ariosa Diagnostics Inc. v. Sequenom, Inc. (Fed Cir. 2015)(“U.S. Sequenom”)。「それ以上のもの」(“something more”)とは、新しい器具や、新しい自然に存在しない試薬や、新しい治療などです。

このような遺伝子をベースにした発明に関する取り扱いは、国ごとに異なります。アメリカでは、このような発明で広い権利を取得するのは難しいので、クレームする際にスコープの異なったクレームを多彩に用意することをおすすめします。例えば、権利が広く取れる国ではクレームをより広くし、アメリカでは上記で説明した「それ以上のもの」(“something more”)を加えることで、発明に対する保護が最大化されることでしょう。

遺伝子をベースにした発明に対する権利化は、国ごとに判断が異なり、また、常に変わっていきます。医療系の特許は価値が高いので、同じようなクレームで各国に出願するのではなく、出願国によってクレームを変えることで、発明に対する保護を最大化するべきです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Kimberly Dempsey Booher, Hollace Topol Cohen, Edward R. Ergenzinger, Andrea Mealey and Martin B. Robins. FisherBroyles LLP

https://www.fisherbroyles.com/wp-content/uploads/2018/03/FB-IP-Newsletter-March-2018-2.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

追加記事

特許において、クレームの限定事項が明確に記述されているかどうかは、特許の有効性を左右する重要な要素です。今回、Maxell, Ltd.対Amperex Technology Limitedの判決は、特許クレームの解釈において、限定事項間の表面上の矛盾をどのように扱うべきかという問題を浮き彫りにしました。本文では、この重要な判決を深堀りし、一見矛盾すると思われる限定事項が、実際には特許の不明瞭性(Indefiniteness)を生じさせない理由について探求します。特に、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)がどのようにこれらの限定事項を同時に満たすことが可能であると見做したか、その解釈の根拠と、特許クレームを起草する際の実務上の教訓に焦点を当てて考察します。
特許法における「組み合わせの動機」(Motivation to Combin)の概念は、発明が発明された時点でその分野の通常の技術者(PHOSITA)にとって自明であったかどうかを判断する上で不可欠な要素です。自明性の問題は、新しい発明が既知の技術要素の単純な組み合わせに過ぎないのか、それとも特許に値する独自の技術的進歩を表しているのかを区別するために重要です。このブログ記事では、特許請求の自明性を評価する際に中心となる「組み合わせの動機」の概念と最高裁判決であるKSR判例を解説し、Virtek Vision 対 Assembly Guidance Systemsの事件を例に、実際の訴訟におけるこの概念の適用方法について掘り下げます。
先月、米国特許商標庁(USPTO)が「Means-Plus-Function」に関するメモランダムを発行し、審査官に最新ガイダンスを提供しました。その内容は実務における大きな変更を意味するものではなく、既存の法的枠組みの下でより明確な指針を提供することを目的としています。しかし、このタイミングにおけるガイドラインの発行は、35U.S.C.112条(f)に基づく一風変わったクレームの形式であるMeans-Plus-FunctionがUSPTOにおける特許審査で注目されていることを示しており、改めてガイドラインに沿った適切なクレームドラフティングが求められることを意味します。