企業機密を守るには法律的な保護だけでは足りない

効果的に企業機密を守るには、DTSA や州法などの法的な保護にとどまらず、様々な IT ツールを効果的に使うことをおすすめします。例えば Iron Mountain 社が提供する IP Development Protection Agreement (IPDPA)は、知的財産を保護し、企業機密を守るため に必要なデュー・デリジェンスを行うことができます。 自分のアカウントに置かれる全ての情報に対して日付とタイム・スタンプがつけられ、 IP の監査証跡(IP audit trail )が作られることで、自社の企業機密に対する所有権を独 立した形で証明することができます。独立した第三者機関として、Iron Mountain 社は 裁判所からの信頼を得ており、知財の存在と所有権を保証することができます。 また、セキュリティーの面では、deposit security, storage security, facility security, や deposit retrieval security も行っているので、情報を入れるところから出すところまで、 一貫したセキュリティーを実現しています。 法律の面で企業機密を守ることは大切ですが、そのために効率的なツールを見逃すこと がよくあります。しかし、会社や自社による企業機密の運用にあったツールを選び、使 うことは、企業機密の取り扱いをより効率的なものにします。次回、企業機密に関する 取り組みを行う際は、法律の観点による取り組みだけではなく、企業機密の運用を助け るツールも考慮してみたらどうでしょうか? まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Jonathan Chisholm. Iron Mountain https://infogoto.com/the-secret-to-protecting-trade-secrets-isnt-really-a-secret-2/

IPR 手続きにおいて口頭弁論で新しい証拠は提示できない

経緯: PTAB は、Dell の申し出によって Acceleron の特許に対して IPR の手続きをはじめまし た。手続きが進み、口頭弁論で、Dell が先行例の開示に関してそれまでに開示していな い全く新しい主張を展開。Acceleron は、Dell のそのような主張は、時期を得ていない (not timely)と反論しましたが、PTAB は Acceleron の反論を却下。さらに、PTAB は Dell のその新しい主張に同意し、Acceleron のクレームに新規性がないと判断し、クレ ームの1つを無効にしました。 1回目の上訴で、CAFC は、PTAB は全ての利害関係のある当事者に事実と主張を提出・ 考慮する機会を与え、また、全ての正しい事実を明らかにするために、当事者の反論と その証拠を提出するチャンスを与えなければいけないとし、案件を PTAB に差し戻しし ました。差し戻しで、PTAB は Dell の新しい主張を考慮せず、前回無効になったクレー ムは有効と判断され、その判断を不服とした Dell が上訴しました。 CAFC は PTAB における判決を支持。差し戻しにおいて、PTAB に Dell の新しい主張と Acceleron の反論を考慮するように命令したのではなく、Dell の新しい主張は、そもそ も時期を得ていなかった(not timely)ので、主張自体が認められないとしました。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Baraa Kahf and Ari Feinstein. […]

最高裁への特許法関連の Certiorari Petitions の一覧がわかるサイト

WilmerHale 法律事務所のサイトには、特許法に関わる最高裁への Certiorari Petitions の 一覧が掲載してあります。最高裁は上訴されても、その案件を最高裁で再審理するか否 かを自ら判断するので、Certiorari Petitions が全て許可されるわけではありません。その ため、WilmerHale 法律事務所では、Certiorari Petitions を保留中(pending)、許可 (granted)、却下(denied)の3つに分かれています。 各カテゴリーでは、案件名、Certiorari Petition で挙げられた問題のリスト、Certiorari Petition が提出された日にちが書かれており、CAFC における口頭弁論の記録や判決への リンクが置かれています。 最高裁へ Certiorari Petitions が出される多くの場合、法律が曖昧だったり、法律の適用 や法律時代に矛盾・対立がある場合が多いです。あと最近では、Oil States 事件のよう に、特許法関連ではめずらしいアメリカ憲法に関わる問題定義もあります。最高裁に挙 げられる問題は、アメリカ特許業界の抱えている法律的な問題を見える化しているとも 考えることができるので、一度どのような問題が今、アメリカの知財業界で話題になっ ているのかを知るツールとしても使えるのではないかと思います。 このような最新の話題を知っていると、今度アメリカの特許弁護士と会う時にネタにな ったり、自分をスマートに見せれるかもしれませんね。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Joseph J. Mueller, Thomas G. Saunders and Leslie Pearlson. Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr LLP https://www.wilmerhale.com/intellectual_property/patents/#!6

最も広い合理的な解釈(broadest reasonable interpretation)の範囲

クレーム用語の最も広い合理的な解釈において、明細書とは矛盾する、または、用語の意味がわからなくなってしまう解釈は、クレーム用語の最も広い合理的な解釈の範囲を超えている。 最も広い合理的な解釈(broadest reasonable interpretation。略して、BRI)- 米国 特許庁で用いられるクレーム解釈に対する基本的な考え方。 クレームに使われ ている用語を,明細書に基き当業者が理解するであろう最も広い合理的な解釈 (broadest reasonable interpretation)で理解する。クレーム用語は,発明時(つ まり、特許出願の有効出願日)に、当業者が明細書に基いて最も広い合理的な解 釈(broadest reasonable interpretation)をした場合を想定して解釈される。Philips 基準とは違い、明細書からクレームへ限定事項を読み込むことはしない。 Manual of Patent Examining Procedure(MPEP)§ 2111 (https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2111.html) 経緯: Fairchild Semiconductor が Power Integrations に関する特許の再審査(reexamination)を 特許庁に求めました。この特許は訴訟でも権利行使されており、electromagnetic interference (‘EMI’) noise を低下される技術に関するものです。並行して行われてい る地裁訴訟では、陪審員は先行例に対して特許は有効と判断し、CAFC もその判断に合 意。再審査でも、地裁で争われた先行例が問題になっていて、1回目に CAFC に上訴ら れた際に、CAFC は PTAB に対し、用語“coupled”の解釈が広すぎると指摘。CAFC は PTAB に、地裁で使われたより狭い解釈を考慮して、再審査するように命じました。し かし、2回目の再審査でも PTAB は用語“coupled”を広く定義、CAFC に同じ問題で2 回上訴されるという珍しい事件になりました。 CAFC はこの2回目の上訴で、PTAB の解釈は、不当に広く、明細書の開示に関する考察 […]

Incorporation by Reference を使う際の注意点

Incorporation by Reference を使う際に、参考文献の全体を含みたいのであれば、はっき りとした、幅の広い、はっきりとした宣言が大切です。他に余分な限定的と捉えられる ような表現は避けるべきでしょう。 CAFC は、Paice LLC v. Ford Motor Co., Nos. 2017-1387, 1388, 1390, 1457, 1458 (February 1, 2018) のおいて、5つの PTAB における IPR に関する共通の Incorporation by Reference に 関する問題を解決しました。この再審理で、CAFC は、PTAB が Incorporation by Reference の表現を必要以上に限定的に解釈し、その結果、クレームの一部が written description 違反で無効となった判決には、誤りがあったと判決し、PTAB での判決を覆 しました。 問題になった特許は、CIP(Continuation-in-parts、一部継続出願)であって、さらに関 連する先行例文権の有効日が、CIP の出願日の前だったが、親出願の出願日の後だった ので、問題になった CIP のクレームが新しく CIP で追加された開示に関するものなの か、それとも親出願ですでに開示されているものなのかが問題になった。親出願で開示 されていれば、そのクレームの有効日は親出願の出願日なので、文献は先行例ではなく なるが、CIP で追加された内容に関するものであれば、クレームの有効日は […]

PTAB における手続きは、既存の出願ファミリーに影響を及ぼす可能性がある

37 C.F.R. 42.73(d)(3)(i)の下、PTAB でキャンセルになったクレームや最終的に拒絶された クレームがあった場合、特許権者は USPTO に対して PTAB で主張した補正とは矛盾する 行動を取ることを禁止されています。この禁止を、Patent owner estoppel と呼びます。 この禁止は、PTAB でキャンセルになったクレームや最終的に拒絶されたクレームと差 異ない出願中のクレームや特許案件にも影響するので、PTAB で敗訴するということ は、関連する出願(例えば、continuations, reexamination, and reissue)が権利化できな くなる可能性があります。 このようなリスクがあるため、継続出願(continuation applications)を使って特許ポー タルサイトを作っていく手法から、分割出願(divisional applications)を使う方法に切り 替えることをおすすめします。分割出願(divisional applications)の利点は、35 U.S.C. § 121 による safe harbor ルールが適用され、他の関連する出願のクレームと差別化が仮定 されることです。関連特許が例え PTAB でキャンセルされても、違いが保証されている ので、Patent owner estoppel の影響を心配する必要はありません。また、safe harbor ル ールによって、クレームは、自動的に二重特許拒絶(double patenting rejections)から 守られるので、terminal disclaimer を提出する必要もありません。 しかし、問題もあります。継続出願と異なり、分割出願は、出願人の都合で出願するこ とはできません。何故かと言うと、分割出願は、審査官による限定要求(restriction requirement)の対応としてでしか出願することができないからです。 PTAB における手続きが人気を増す中、出願中も […]

知的財産の所有者は誰か?気をつけたい3つのシチュエーション

知的財産がビジネスの中心を担っている企業の場合、投資家や買収を考えている企業は、投資先・買収先がビジネスに関わる全ての知財を自社で保有しているかどうか把握している必要があります。というのも、ライセンスを受けている場合よりも、自社で必要な知財を保有している方が、ほとんどの場合において、都合がいいからです。 しかし、会社のライフサイクルにおいて、会社の知的財産に対する所有権がはっきりしない場合があります。今回は、特に知的財産権の所有権に関して気をつけたい3つのシチュエーションを紹介します。 シチュエーション1:会社創設 多くの場合、会社を創設する前に、創業者のメンバーが知的財産で保護できる技術をすでに開発している場合があります。そのような知財がある場合、会社がその知財を所有するには、創業者から会社にその知財の所有権を譲渡する必要があります。この譲渡手続きは、会社創設の際に一緒に行われ、創業者の株への支払い等で対価を支払うというかたちが一般的です。各創業者が、会社創設以前に開発したもの全ての権利を会社に譲渡することは大切で、関連書類に各創業者が署名をしていることを確認することは重要です。 また、もし創業者の誰かが以前の雇用主と問題があるか、会社創設の時点で確認する必要があります。 シチュエーション2:従業員とコントラクターの新人研修 アメリカでは、従業員の開発したものに対する著作権は、work for hire doctrine という 考え方から、雇用の目的の範囲内であれば、会社に著作権の所有権があると主張できま すが、発明のような、特許で保護されるべき知的財産には、work for hire doctrine が適 用されません。また、work for hire doctrine は、アメリカ国外ではアメリカと異なる扱 いを受ける可能性があるので、注意が必要です。 さらに、コントラクターを雇う際、知的財産の譲渡に関して特に契約等で取り決めがない場合、コントラクターが契約に基いて開発したものについての権利を所有します。この考え方は、コントラクターが個人でも、企業でも違いはありません。 つまり、従業員の新人研修の際に、会社は従業員が適切な知財譲渡契約に署名していることを確認すること、また、コンサルタントやコントラクターとの仕事初めに、彼らとの契約に知的財産の譲渡に関する条文が含まれていることを確認することが大切です。また、必要であれば、その契約が関わる国において有効であることをチェックします。 シチュエーション3:商業的な関係 仕入先などの第三者が会社のために開発をおこなったり、逆に会社が顧客などの第三者のために開発をおこなうことがあります。例えそのような開発に支払いが生じていたとしても、その開発で発生した知財の権利には何も影響はありません。上記のコントラクターとの契約の一般原理がここでも当てはまります。契約で取り決めがない限り、開発を行なった当事者が、開発に伴う知的財産の所有権を持ちます。つまり、会社が開発者を雇っても、開発者が開発に伴う知的財産を会社に譲渡しなければ、開発に伴う知的財産は実際に開発を行なった開発者のものになります。また同じく、会社が第三者のために開発を行なったとしても、譲渡の義務が契約書にかかれていなければ、会社が発明に伴う知的財産を所有します。 特に顧客のために行なった開発では立場が難しくなりますが、そのような場合は、共同 保有(joint ownership)したり、専用実施権 (exclusive licenses)を認めるのもありだと 思います。しかし、基本的には、会社として、会社のコアビジネスに関わる開発は制限 なく自由に使えるのが望ましいです。 このような知財の所有権に関して曖昧ではないことは、投資家や買収を考えている会社 からの diligence リクエストに答える上で大切なポイントになってきます。このような 知財の所有権に関する問題が起こる前に、契約や企業研修等で事前に対策を講じるのこ とが一番いいと思います。 まとめ作成者:野口剛史 元記事著者:Victoria Lee. DLA Piper https://www.remarksblog.com/2018/03/who-owns-your-ip/#page=1

3倍賠償の実例:Genes Industry Inc v. Custom Blinds and Components Inc.

2018年2月、 the District Court for Central District of California の Judge Andrew Guilford が、陪審員が出した賠償金額$1 Million に3倍賠償を適用し、被告 Custom Blinds and Components Inc. (“CBC”)に対して$3 Million の支払いを命令。更に、Judge Guilford は、 弁護士費用$400,000 と判決前の金利$166,299 を CBC に追加請求。3年に及ぶ地裁にお ける特許訴訟が終わりました。 この訴訟は、Genes Industry Inc. (“Genes”) が CBC を特許侵害で訴えたことで始まりま した。特許は、cord tilter という窓のブラインダーの部品に関わるもので、CBC による 侵害品の販売の売上は、$13 million で、利益は$2.6 million でした。 陪審員は、証拠から被告 CBC は特許制度を軽視していたことが明らかになったため、 CBC の侵害は故意であると断定。地裁は、特許権者 Genes が要求していた故意侵害によ […]

特許適格性(Patent eligibility)チャレンジが難しくなっている

Exergen Corp. v. Kaz USA, Inc., Nos. 2016-2315, 2016-2341 (March 8, 2018)において、CAFCは、特許法101の特許適格性(Patent eligibility)に関わる問題を認めず、特許は有効だという判決を下しました。しかし、その判断理由には、納得のいかない点もあり、異 議を唱えた少数派の Judge Hughes の意見を中心に現在の CAFC における特許適格性 (Patent eligibility)の判断における問題点を解説してみました。 訴訟背景: 前頭部の皮膚と大気の温度から体内温度を検知する方法クレームが今回この案件で対象 になりました。 この対象クレームは自然界の法則(a natural law)を用いた検知方法だと断定されまし たが、地裁における特定のクレームに書かれている事柄は、ルーチンではなく、よく理 解されていたり、標準的なものではないという判断は、事実に基いて行われた判断であ り、CAFC で事実に関する認定を行う場合、地裁の判決を尊重した上で(“must be given clear error deference.”)行わないといけないとした。 deference:CAFC に上訴された問題でも、法律に基づいた問題は地裁での判断を 尊重しない de novo review が行われるが、事実に基づいた問題の場合は、地裁で の判断を尊重した上で、CAFC における審査が行われるという違いがある。de novo review は地裁の判決が覆りやすいが、clear error deference などの事実に基 づいた地裁の判決は、CAFC における審査の基準の違いにより、覆りにくい。 地裁の判決を尊重した結果、CAFC の多数派 […]