37 C.F.R. 42.73(d)(3)(i)の下、PTAB でキャンセルになったクレームや最終的に拒絶された クレームがあった場合、特許権者は USPTO に対して PTAB で主張した補正とは矛盾する 行動を取ることを禁止されています。この禁止を、Patent owner estoppel と呼びます。
この禁止は、PTAB でキャンセルになったクレームや最終的に拒絶されたクレームと差 異ない出願中のクレームや特許案件にも影響するので、PTAB で敗訴するということ は、関連する出願(例えば、continuations, reexamination, and reissue)が権利化できな くなる可能性があります。
このようなリスクがあるため、継続出願(continuation applications)を使って特許ポー タルサイトを作っていく手法から、分割出願(divisional applications)を使う方法に切り 替えることをおすすめします。分割出願(divisional applications)の利点は、35 U.S.C. § 121 による safe harbor ルールが適用され、他の関連する出願のクレームと差別化が仮定 されることです。関連特許が例え PTAB でキャンセルされても、違いが保証されている ので、Patent owner estoppel の影響を心配する必要はありません。また、safe harbor ル ールによって、クレームは、自動的に二重特許拒絶(double patenting rejections)から 守られるので、terminal disclaimer を提出する必要もありません。
しかし、問題もあります。継続出願と異なり、分割出願は、出願人の都合で出願するこ とはできません。何故かと言うと、分割出願は、審査官による限定要求(restriction requirement)の対応としてでしか出願することができないからです。
PTAB における手続きが人気を増す中、出願中も Patent owner estoppel の問題を注意し なければなりません。特に、重要な特許ポートフォリオに対して、二重特許拒絶 (double patenting rejections)が起こらないようにしないといけません。審査官が二重特許拒絶(double patenting rejections)を出すということは、重複するクレームの間に 差異がないということなので、一方の区クレームが PTAB における特許無効審判にかか ると、他方のクレームが書かれている特許案件に対して Patent owner estoppel が適用さ れることが予想されます。
自明性二重特許拒絶(obviousness type double patenting rejections)を覆すためには、 terminal disclaimer を提出する方法がありますが、terminal disclaimer を使うか否かに関 しては後の Patent owner estoppel の可能性も考慮しなければいけません。
CAFC は SimpleAir Inc. v. Google Inc において、terminal disclaimer の使用自体が自動的に Patent owner estoppel を証明するわけではないが、terminal disclaimer の存在が、審査官 と出願人の観点から見て、継続出願のクレームと親出願のクレームの間で差異がなかっ たことを示唆するものであるとしました。
継続出願(continuation applications)を使って特許ポータルサイトを作っていく手法 は、PTAB における手続きが一般的になった今、危険な手法になってしまいました。 PTAB での敗訴がその1つの特許ではなく、Patent owner estoppel によって、ポータルサ イト全体に大きな影響を与えかねないからです。また、関連案件の二重特許拒絶を回避 するために常にクレームには注意を払い、可能であれば、分割出願を使って特許ポータ ルサイトを作っていく方が、AIA 以降の特許マネージメントに合っているのかもしれま せん。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Scott A. McKeown. Ropes & Gray LLP https://www.patentspostgrant.com/standard-patent-prosecution-practices-invite-collateral- ptab-damage/#page=1