Incorporation by Reference を使う際に、参考文献の全体を含みたいのであれば、はっき りとした、幅の広い、はっきりとした宣言が大切です。他に余分な限定的と捉えられる ような表現は避けるべきでしょう。
CAFC は、Paice LLC v. Ford Motor Co., Nos. 2017-1387, 1388, 1390, 1457, 1458 (February 1, 2018) のおいて、5つの PTAB における IPR に関する共通の Incorporation by Reference に 関する問題を解決しました。この再審理で、CAFC は、PTAB が Incorporation by Reference の表現を必要以上に限定的に解釈し、その結果、クレームの一部が written description 違反で無効となった判決には、誤りがあったと判決し、PTAB での判決を覆 しました。
問題になった特許は、CIP(Continuation-in-parts、一部継続出願)であって、さらに関 連する先行例文権の有効日が、CIP の出願日の前だったが、親出願の出願日の後だった ので、問題になった CIP のクレームが新しく CIP で追加された開示に関するものなの か、それとも親出願ですでに開示されているものなのかが問題になった。親出願で開示 されていれば、そのクレームの有効日は親出願の出願日なので、文献は先行例ではなく なるが、CIP で追加された内容に関するものであれば、クレームの有効日は CIP の出願 日となり、文献が先行例となるという状況でした。
その問題になった CIP で使われていた Incorporation by Reference の表現は以下の通りで す。
This application discloses a number of improvements over and enhancements to the hybrid vehicles disclosed in the inventor’s U.S. Pat. No. 5,343,970 (the “’970 patent”) [Severinsky], which is incorporated herein by this reference. Where differences are not mentioned, it is to be understood that the specifics of the vehicle design shown in the ’970 patent are applicable to the vehicles shown herein as well.
PTAB は、2番目の文を引用が限定されるものだと解釈し、参考文献と明細書の開示に おいて大差がない部分のみ含まれると理解したので、参考文献と明細書に間に違いがあ る部分は含まないと判断しました。
しかし、CAFC は PTAB の解釈に異議を唱え、最初の1文において、幅の広い、はっき りとした宣言により参考文献がすべて引用されていると解釈するべきと判断。2番めの 文は、CIP における発明は引用文献の一部にしか関わることではないという意味なの で、2番目の文で引用が限定されるものではないと判断しました。
また、CAFC は、2番目の文を狭く解釈しても、最初の1文において、すでに幅の広 い、はっきりとした宣言により参考文献がすべて引用されているので、2番目の文によ って引用が限定されるべきではないとしました。
結果的には、はっきりとした、幅の広い、はっきりとした宣言があれば、Incorporation by Reference で参考文献の全体を引用できるという判決でしたが、このような問題を事 前に回避するためにも、Incorporation by Reference を使う際は、はっきりとした、幅の 広い、はっきりとした宣言をし、かつ、他に余分な限定的と捉えられるような表現は避 けるべきでしょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Matthew W. Johnson. Jones Day http://www.ptablitigationblog.com/incorporation-by-reference-users-beware/#page=1