Exergen Corp. v. Kaz USA, Inc., Nos. 2016-2315, 2016-2341 (March 8, 2018)において、CAFCは、特許法101の特許適格性(Patent eligibility)に関わる問題を認めず、特許は有効だという判決を下しました。しかし、その判断理由には、納得のいかない点もあり、異 議を唱えた少数派の Judge Hughes の意見を中心に現在の CAFC における特許適格性 (Patent eligibility)の判断における問題点を解説してみました。
訴訟背景:
前頭部の皮膚と大気の温度から体内温度を検知する方法クレームが今回この案件で対象
になりました。
この対象クレームは自然界の法則(a natural law)を用いた検知方法だと断定されまし たが、地裁における特定のクレームに書かれている事柄は、ルーチンではなく、よく理 解されていたり、標準的なものではないという判断は、事実に基いて行われた判断であ り、CAFC で事実に関する認定を行う場合、地裁の判決を尊重した上で(“must be given clear error deference.”)行わないといけないとした。
deference:CAFC に上訴された問題でも、法律に基づいた問題は地裁での判断を 尊重しない de novo review が行われるが、事実に基づいた問題の場合は、地裁で の判断を尊重した上で、CAFC における審査が行われるという違いがある。de novo review は地裁の判決が覆りやすいが、clear error deference などの事実に基 づいた地裁の判決は、CAFC における審査の基準の違いにより、覆りにくい。
地裁の判決を尊重した結果、CAFC の多数派 (Moore, Bryson 判事)は、地裁における特許 適格性(Patent eligibility)有りという判決を支持。
しかし、少数派である Hughes 判事は、多数派の判決に対して強く反発。そのような地 裁の判決を尊重する基準における審査でも、地裁は特許適格性において明らかに間違い を犯していると指摘しました。Hughes 判事は、対象クレームはただ単に自然法則を数 式にしたものがベースになっていて何も発明として特徴付けるようなものは書かれてい ないと結論付けました。また、地裁はクレームに書かれている手法が標準的な方法では ないということは決めておらず、「日常的に使われていない」(“were routinely used”)という間違った基準で事柄を判断してしまったので、そのような判決は正しく ないと反論。
教訓:
この Exergen 事件は、特許適格性(Patent eligibility)の問題を解決するために、標準で はない(unconventional)または、習慣的ではない(non-routine)という事実的な問題 に注目しました。このことは、§ 101 に関する質問に対して、より多くの事実的な分 析(fact-based analysis )が行われることを意味しています。今回の事件で、CAFC は陪 審員によって§ 101 に関わる事実認定を行わなければならないとは言わなかったもの の、それを示唆するような判決でした。今後、もし§ 101 に関わる問題は陪審員によって決めなければならないとなれば、特許侵害の被告が特許適格性(Patent eligibility) による特許無効を証明するのはより難しくなるでしょう。
ポイント:
この記事は、特許適格性という問題が法律的な問題という位置づけよりも、より事実に 基づいた問題という位置づけに変わりつつあることを警告している記事です。事実認定 に重きを置かれると、事実認定を行う陪審員が重要な鍵になりますが、地裁の場合、特 許は有効だという仮定があることや、そもそもの特許適格性(Patent eligibility)という コンセプトが一般の人には十分理解できない可能性があります。そうなってくると、特 許を無効にしたい被告側が特許適格性(Patent eligibility)を証明するのが難しくなって きます。また、事実認定において主な特許適格性の分析が行われる場合、CAFC に上訴 しても地裁の決定を尊重した上で審議を行うので、判決が覆りにくいということになっ てしまいます。特許適格性という問題がどう扱われるべきかはまたはっきりしていない ので、判例などを通じて、傾向を把握しておく必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Steven M. Auvil and Bryan Schwartz. Squire Patton Boggs https://www.iptechblog.com/2018/03/exergen-corp-v-kaz-usa-represents-another-in-a-recent- string-of-recent-setbacks-for-patent-infringement-defendants-on-eligibility-challenges/#page=1