クレーム用語の最も広い合理的な解釈において、明細書とは矛盾する、または、用語の意味がわからなくなってしまう解釈は、クレーム用語の最も広い合理的な解釈の範囲を超えている。
最も広い合理的な解釈(broadest reasonable interpretation。略して、BRI)- 米国 特許庁で用いられるクレーム解釈に対する基本的な考え方。 クレームに使われ ている用語を,明細書に基き当業者が理解するであろう最も広い合理的な解釈 (broadest reasonable interpretation)で理解する。クレーム用語は,発明時(つ まり、特許出願の有効出願日)に、当業者が明細書に基いて最も広い合理的な解 釈(broadest reasonable interpretation)をした場合を想定して解釈される。Philips 基準とは違い、明細書からクレームへ限定事項を読み込むことはしない。 Manual of Patent Examining Procedure(MPEP)§ 2111 (https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2111.html)
経緯:
Fairchild Semiconductor が Power Integrations に関する特許の再審査(reexamination)を 特許庁に求めました。この特許は訴訟でも権利行使されており、electromagnetic interference (‘EMI’) noise を低下される技術に関するものです。並行して行われてい る地裁訴訟では、陪審員は先行例に対して特許は有効と判断し、CAFC もその判断に合 意。再審査でも、地裁で争われた先行例が問題になっていて、1回目に CAFC に上訴ら れた際に、CAFC は PTAB に対し、用語“coupled”の解釈が広すぎると指摘。CAFC は PTAB に、地裁で使われたより狭い解釈を考慮して、再審査するように命じました。し かし、2回目の再審査でも PTAB は用語“coupled”を広く定義、CAFC に同じ問題で2 回上訴されるという珍しい事件になりました。
CAFC はこの2回目の上訴で、PTAB の解釈は、不当に広く、明細書の開示に関する考察 を不適切に除外していると非難し、PTAB での判断を無効にしました。CAFC は、特許明 細書は、“coupled”された部品同士の特定の関係を開示しているが、PTAB はその関係 性を無視したと非難。そのことによって、“coupled”という用語を意味のないものに してしまったと結論付けました。また、PTAB の解釈は、クレームにおける用語の使わ れ方(coupled されたものが直接他の coupled された部分に作用する)とも矛盾してい ると指摘しました。
PTAB は2回も“coupled”という用語を再定義するチャンスが与えられたのに、正しく 解釈を行わなかったとして、CAFC は、地裁で用いられたより狭い解釈によって決まっ た定義を用いて、再度、PTAB において特許の再審査を命じました。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Baraa Kahf and Brandon G. Smith. Knobbe Martens https://www.knobbe.com/news/2018/03/re-power-integrations-inc