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アメリカ知財とAI知財に関する記事

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2025年5月13日からUSPTOの特許発行期間が約3週間から約1週間へと大幅に短縮されることで、特許実務に重大な影響が生じます。この変更は権利者にとって早期の法的保護というメリットをもたらす一方、継続出願戦略やIDS提出などの実務フローの見直しを迫るものです。特に継続出願の共同係属性要件への対応や、QUPIDSプログラムの活用機会減少といった課題に対し、特許発行手数料支払前の継続出願提出や、ポートフォリオ全体の定期的監視体制の構築など、早急な対応策の実施が求められています。USPTOのデジタル化推進による近代化施策は特許システムの効率化を象徴するものであり、日本企業と特許実務家はこの新しい現実に適応するための戦略的アプローチを確立する必要があります。
CAFCによる2025年3月のRegeneron v. Mylan事件判決は、バイオ医薬品特許実務に大きな影響を与えています。CAFCは「別個に列挙された要素は発明の別個の構成要素である」というBecton原則を適用し、Regeneron社の特許クレームにおける「VEGF阻害剤」と「バッファー」が別個の構成要素であると判断しました。特許侵害を主張されたAmgen社は、アフリバーセプト自体にバッファリング能力を持たせることで別個のバッファー成分を不要にする革新的な製剤設計により非侵害の判断を勝ち取りました。本記事では、この判決が示す内在的証拠の優位性、製剤クレームの解釈、そして特許出願戦略への実務的影響を詳細に解説し、特に成分の多機能性を明示的に記載することの重要性や、将来の設計回避を予測した防御的クレーム戦略の必要性など、バイオ医薬品特許の権利行使成功のための具体的な教訓を提供します。
CAFCが2025年1月に下したNovartis v. Torrent Pharma判決では、「発明時に未知だった後発技術は明細書記載要件の判断に影響しない」という原則が明確に示され、発明後に発見された複合体形成という現象が明細書に記載されていなくても特許は有効であると判断されました。注目すべきは、CAFCが「クレームされたものは何か」と「クレームされたものは明細書に記載されているか」という二段階の分析を明確に区別し、侵害判断と特許性判断の混同を厳しく批判した点です。Amgen v. Sanofi判決やIn re Hogan判決の先例を引用しながら、バルサルタンとサクビトリルという二つの有効成分の「組み合わせ」を保護するNovartisの特許が実施可能要件と非自明性も満たすと結論づけたこの判決は、クレーム範囲の解釈と明細書記載要件の関係について特許実務家に重要な指針を提供しています。
2025年4月8日のCAFC判決 Azurity v. Alkem事件は、特許審査過程での「consisting of」移行句と明示的なディスクレイマーにより、プロピレングリコールを含むジェネリック医薬品が特許非侵害と認定された重要判例です。本件は医薬品特許実務において、審査過程での出願人の陳述が後の権利行使を決定的に制限することを強調し、特許権者に対して審査中の主張の慎重な検討、適切な移行句の選択、不必要に広範なディスクレイマーの回避を警告するとともに、ジェネリックメーカーには先発医薬品の特許審査経過を詳細に調査する重要性を示す、特許実務家必読の判例分析です。
CAFCがImmunoGen v. Stewart事件で示した「未知の問題に対する解決策」の自明性判断基準は、医薬品用量特許の実務を根本から変える可能性があります。CAFCは発明時点で認識されていなかった問題(眼毒性)を解決する方法でも、当業者が別の理由で同じ解決策に到達する動機があれば自明と判断される可能性を示し、用量レジメン特許の有効性ハードルを大幅に引き上げました。「クレームの客観的範囲」を重視し発明者の主観的動機を重視しないこの判断は、バイオシミラーや後発医薬品開発者に有利に働く一方、製薬企業は二次特許戦略の見直しと、単なる用量最適化を超える真に革新的な投与方法の開発が求められることになるでしょう。
USPTOが2025年4月17日からデザイン特許の早期審査制度を停止することを発表しました。この重大な変更は、早期審査申請の560%増加とマイクロエンティティ資格の不正利用という二つの課題に対応するものです。本記事では、この停止措置の法的根拠や37 CFR 1.183に基づく「異常な状況」としての判断、そして日本企業を含む特許出願人への実務的影響を詳しく解説します。特に注目すべきは、年間36,000時間の審査時間節約による全体的な審査期間短縮の可能性と、出願人が検討すべき代替戦略です。また、同時に発表された特許発行プロセスの短縮化についても触れ、変化する知的財産環境への適応策を提案しています。
USPTOの特許詐欺対策ワーキンググループが米国特許制度を守るため活発に活動し、すでに3,900件以上の偽造署名の特定や180万ドル以上の未払い手数料を回収するなど顕著な成果を上げています。本記事では、署名偽造、不正なマイクロエンティティ認証、無認可代理行為など増加する詐欺行為の実態と対策を解説するとともに、特許弁護士が知っておくべき法的義務やリスク管理戦略を詳述。USPTOの具体的な懲戒事例(In re Yang、In re Yuなど)を通じて実務家の責任を明確にし、クライアント教育や疑わしい活動の早期報告など実践的な防止策を提示することで、特許システムの信頼性を維持し、真のイノベーションを保護するための知識を提供します
米国第5巡回区控訴裁判所の2025年DeWolff, Boberg & Associates v. Pethick判決は、営業秘密訴訟において原告が勝訴するための2つの基本的要件—「営業秘密の具体的特定」と「使用の具体的証明」の重要性を明確に示しました。本件では、コンサルティング会社DB&Aが「過度に広範」なデータベース情報を営業秘密と主張し、元従業員による使用の具体的証拠を提示できなかったことで敗訴しています。この判決は、日本企業がアメリカで営業秘密訴訟を検討する際の重要なガイドラインとなり、①営業秘密の明確な特定と文書化、②合理的な秘密管理措置の実施、③営業秘密アクセスの監視記録、④退職者からの情報返却・削除の確保といった、訴訟前からの適切な営業秘密保護戦略の重要性を強調しています。知財担当者は「単に機密情報を持っていた」という漠然とした主張ではなく、具体的な証拠に基づいた営業秘密保護体制の構築が不可欠です。
CAFCが2025年4月9日に下したHeritageのiVoterGuide商標に関する先例的判断は、「高度に記述的」な商標の二次的意味立証の高いハードルを明確にしました。この判決では、APRが混同のおそれを事実上認めたにもかかわらず、Heritageの商標自体が保護可能でないとして異議申立てが棄却され、記述的商標の権利者は自己の商標の保護可能性を事前に十分評価すべきという重要な教訓を示しています。商標の「i」プレフィックスのようなインターネット関連表現の記述的性質、コモン・ロー商標権の限界、5年以上の使用だけでは不十分な識別性獲得の立証基準など、企業のブランド戦略において記述的商標を選択する際のリスクと対策、そして異議申立て戦略への実務的影響について詳細に解説しています。
2025年3月、米国D.C.巡回控訴裁判所はAI単独で作成された作品は著作権保護の対象外であると判断し、知的財産法における「人間の著作者性」の重要性を確立しました。本稿ではThaler v. Perlmutter事件の詳細分析を通じて、裁判所が著作権法の条文解釈から「著作者」は人間でなければならないと結論づけた法的根拠、AIを「従業員」とみなす「職務著作」の適用が否定された理由、そして特許分野における類似判断との整合性を解説します。さらに、AIと人間の協働による創作物の著作権保護の可能性や、AIを活用する知的財産戦略において実務家が留意すべき点も考察し、進化するAI時代における著作権法の境界線と今後の展望を明らかにします。
CAFCのMerck v. Aurobindo事件判決は再発行特許のPTE(特許存続期間延長)計算方法について重要な指針を示しました。裁判所は、再発行特許のPTEは元の特許の発行日を基準にすべきと判断し、製薬企業の特許戦略に大きな影響を与えています。この判決により、特許権者は規制審査による遅延で失った時間を最大5年間回復できる権利を維持しながら、特許再発行によりOrange Book記載適格性を強化することが可能になりました。ただし、この適用は元の特許と同じクレームを維持している場合に限定され、クレームの取消しや修正がPTE計算に与える影響についても考慮が必要です。Hatch-Waxman法の目的を尊重したこの判断は、製薬特許戦略の新たな可能性を開くと同時に、再発行特許を検討する際の重要な注意点も提供しています。
CAFCが2025年4月4日に下したAms-Osram USA Inc. v. Renesas Electronics America, Inc.事件判決は、営業秘密保護に関する重要な法的基準を確立しました。本判決は、リバースエンジニアリングによる営業秘密のアクセス可能性は「実際に行われた時点」ではなく「理論的に可能となった時点」が基準であるという画期的な解釈を示すとともに、「ヘッドスタート期間」内に獲得された設計採用から生じる売上全体が損害賠償の対象になるという重要な判断を下しました。さらに、営業秘密不正使用と秘密保持契約違反に基づく複数の損害賠償請求を同時に認め、不当利得返還と懲罰的損害賠償、そして契約違反に対する合理的ロイヤリティという複合的な損害賠償の枠組みを示した本判決は、17年に及ぶ訴訟の節目であり、企業の営業秘密保護戦略と損害賠償請求の最適化に重要な示唆を与えています。