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アメリカ知財とAI知財に関する記事

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2025年6月CAFCが下したFraunhofer v. Sirius XM判決により衡平法上の禁反言抗弁の立証基準が大幅に厳格化されています。本判決により、「単なるビジネス上の実用主義では信頼要件を満たさない」という明確な指針が明確に示され、被疑侵害者は特許権者の行為を実際に「考慮」し、その考慮が意思決定に「影響」を与えたことの具体的立証が必要となり、従来の状況証拠による立証戦略では不十分となりました。SCA Hygiene判決でラッチーズ抗弁が制限された現在、この禁反言抗弁は被疑侵害者にとって数少ない有効な防御手段の一つですが、本判決の厳格な基準により、企業の意思決定過程の詳細な文書化と証人の戦略的準備が成否を左右する決定的要素となっています。特許権者側にとっても、長期間の沈黙が誤解を招く行為と認定されるリスクが明確化され、早期の権利行使と明確なコミュニケーション戦略の重要性が飛躍的に高まりました。
2025年5月、第9巡回区控訴裁判所は映画『60セカンズ』の名車「Eleanor」について画期的な判決を下しました。自動車がキャラクターとして著作権保護を受けるには、単なる名前の付与や映画登場だけでは不十分で、人間的特徴(anthropomorphic characteristics)、一貫した識別可能性、独特性という3つの厳格な要件をすべて満たす必要があります。本判決は、バットモービルが保護を受けた理由とEleanorが保護を拒否された決定的な違いを明確にし、AI時代のキャラクター著作権戦略に重要な指針を提供しています。和解契約解釈における「文言の明確性優先」原則や宣言的救済の戦略的活用法など、知的財産実務家が今すぐ知るべき実践的教訓も詳しく解説します。
2025年5月、第2巡回区控訴裁判所はRomanova v. Amilus Inc.判決で、フェアユース抗弁における変革的使用の概念を根本的に見直し、単なる文脈の変更や「異なるメッセージ」の主張だけでは変革的使用として認められないという厳格な基準を確立しました。本判例は、最高裁Campbell v. Acuff-Rose MusicおよびAndy Warhol Foundation v. Goldsmith判決の正当化要件をさらに明確化し、商業的使用における著作権侵害の立証基準を強化する重要な先例となっています。地方裁判所による職権でのフェアユース抗弁提起という手続的問題も含め、知的財産実務において権利者・利用者双方の戦略見直しを迫る包括的な影響を与える判決として、知財弁護士が知っておくべき最新動向の核心を詳細に解説します。
2025年5月、CAFCはCRISPR特許紛争において画期的な判決を下し、「発明者が発明の機能を確信する必要はない」という発明概念の新基準を確立しました。The Regents of the University of California v. Broad Institute, Inc.事件で、裁判所はPTABが概念と実施化の法的基準を混同したとして部分的に破棄差戻しを命じ、研究過程での不確実性表明が概念の有効性を損なわないことを明確化。この判決により、バイオテクノロジー分野の特許実務における発明記録の文書化戦略が根本的に変わり、通常技術レベルでの実施可能性こそが重要な判断基準となることが示されました。特許弁護士にとって、概念証明と実施化証明の明確な区別、第三者成功例の戦略的活用法、そして不確実性の高い技術分野での最適な特許戦略を理解することは必須となります。
米国著作権小額請求委員会(CCB)が写真家Martin McNeilに$2,850の損害賠償を認めた画期的な判決は、小規模著作権侵害への新たな対応策として注目を集めています。ソーシャルメディアでの写真無断使用に対し、CCBは「フェアユース」の抗弁を退け、通常ライセンス料の約3倍の賠償を認定しました。2022年に業務を開始したCCBは、訴訟費用の高さから諦めざるを得なかった小規模侵害に対する効果的な救済手段を提供します。申立て費用わずか$100で最大$30,000までの請求が可能なこの制度は、著作権者に新たな選択肢をもたらすと同時に、知財プロフェッショナルにもクライアントへの総合的IP戦略提案の機会を広げています。本記事では、McNeil事件の詳細分析を通じて、CCBの審理プロセスや損害賠償算定方法、そして日本を含む他国への影響まで解説します。
2025年5月23日、CAFCがSigray v. Carl Zeiss事件で示した内在的開示と暗黙的クレーム解釈の新基準は、特許実務に新たな気づきを与えてくれました。本判決により、PTABが「十分」という表現でクレーム範囲を実質的に狭めた場合は暗黙的クレーム解釈に該当する可能性があり、物理的に必然的な微小効果(1.001倍の投影拡大等)でもクレーム数値範囲に含まれれば内在的開示が成立することがあります。この画期的判断は、IPR戦略、先行技術調査、クレーム起草実務の根本的見直しを迫り、特に「1~10倍」等の数値範囲クレームにおいて検出困難なレベルの効果でも無効根拠となり得る新たなリスクを生み出しています。AI・ナノテク分野を含む先端技術の特許実務者にとって、物理法則に基づく専門家証言の重要性増大と、下限値設定の戦略的検討が急務となる重要判例です。
CAFCがIngenico v. IOENGINE事件で下した画期的判決により、IPR禁反言(IPR estoppel)の範囲が明確になりました。本判決は、IPRで提起できない「システム先行技術」に基づく無効主張は禁反言の対象外であると明確に示し、特許訴訟戦略に大きな影響を与えています。CAFCは「根拠」と「先行技術」を区別し、IPR請求人が地方裁判所でシステム先行技術に基づく「第二の機会」を得られることを認めました。さらに、IPRで使用した(または使用し得た)特許文献や印刷刊行物を、システム先行技術の存在や機能を証明するための証拠として地方裁判所で使用できることも明確になりました。本稿では、この判決の背景、法的分析、そして特許実務への影響を詳細に解説し、IPR戦略を再考する必要がある特許権者と被疑侵害者双方にとっての実務的示唆を提供します。
2025年5月19日、USPTO Stewart代理局長によるEcto World 先例決定は、IPR申立てにおける § 325(d) 条項の適用基準を明確化し、特許弁護士の実務戦略に重大な影響をもたらしました。この画期的な決定により、申立人は単なる無効性の主張だけでなく、IDS上の先行技術を使用する場合には審査官の具体的誤りをBecton Dickinson 要因(c)、(e)、(f)を参照して明示的に特定・説明する義務を負うことになりました。一方で、1,000件超の大量IDS提出時には「典型的なIDSの40倍以上」という新基準の下で審査の実質性に疑問を提起する論証の道筋も開かれ、従来の「トリュフハンティング」的アプローチは完全に否定されました。この決定は、IPR申立書の構成から審査段階でのIDS戦略まで、特許実務全般の抜本的見直しを求めており、2025年3月26日導入の新ブリーフィング手続きと合わせて、今後のIPR成功率に決定的な影響を与える重要な転換点となっています。
米国著作権局が設立した著作権クレーム委員会(CCB)は、30,000ドル以下の著作権紛争を低コストで解決する画期的な制度ですが、運用開始から3年で様々な課題が浮き彫りになっています。申立の約38.5%が審査段階で却下され、被申立人のオプトアウト率は約43%、最終決定の約60%がデフォルト(不参加)によるものという現状は、知財プロフェッショナルがクライアントにアドバイスする上で重要な考慮点です。本稿では、CCBの基本構造から申立審査プロセスの複雑さ、送達の困難さといった主要課題、そしてCCBと連邦裁判所の選択基準や効果的な代理方法まで、日本企業の知財戦略に役立つ実務的ポイントを解説。今後の制度改善の可能性や著作権管理情報(CMI)関連請求の管轄拡大など、CCBの展望についても詳しく考察します。
米国第9巡回区控訴裁判所はAirDoctor, LLC v. Xiamen Qichuang Trade Co., Ltd.事件において、訴状に損害賠償の具体的金額を記載していなくても欠席判決での損害賠償請求を認める画期的判決を下しました。連邦民事訴訟規則54(c)の「訴状で請求された金額を超えてはならない」という規定について、「立証により決定される金額」という表現は金額ゼロではなく、後の段階での立証を予定していると解釈され、知的財産実務を大きく変えました。本判決により、原告は訴訟初期段階で損害額を特定できない場合でも柔軟な請求が可能になる一方、被告は欠席判決のリスクが増大します。Henry v. Sneiders判決を先例とし、第7巡回区判例とも整合性を持つこの判断は、商標権だけでなく特許・著作権訴訟にも適用され、訴状作成の戦略的選択肢を広げる重要な転換点となっています。
米国著作権局が2025年5月に発表した「生成AI学習」報告書は、AIモデル訓練における著作権問題を詳細に分析しています。この報告書は、AIトレーニングが常にフェアユースに該当するという主張を否定し、ケースバイケースでの評価を強調しています。特に注目すべきは、変形的利用の限界、違法入手コンテンツの使用がフェアユースに不利に働く点、そして市場希薄化の懸念です。報告書は第4要素(市場への影響)を最重要と位置づけ、ライセンスフレームワークの開発を強く推奨しています。本稿では、フェアユース4要素の詳細な分析と、AI開発企業、知的財産権者、法務担当者それぞれへの実務的影響を解説し、特許実務者がクライアントへの助言に活用できる重要ポイントを提供します。
中国国有企業による経済スパイ事件で第9巡回区控訴裁判所が下した画期的判決は、国際知的財産保護に新たな指針を示しました。U.S. v. Pangang Group Co., Ltd. 事件で裁判所は、国有企業が単に政府所有というだけでは主権免除(sovereign immunity)を主張できず、「国家機関に匹敵する機能を行使」していることが必要と判断。DuPont社の二酸化チタン製造技術を盗み出そうとした商業的スパイ行為は、たとえ中国の国家政策に貢献するものでも政府機能とは認められないとの判断は、営業秘密保護の実効性を高める重要な先例となります。本稿では、連邦コモンローに基づく主権免除の判断基準、商業的活動と政府機能の区別、そして国際的な知的財産戦略への影響を詳細に解説します。