2020年の自動車とモビリティ技術の知財問題

ネットワークに接続された自動車をよく見てみると実に幅広い技術が使われていることがわかります。この技術の幅に、自動車部品の供給チェーンの複雑さが加わると、とても複雑な知的財産とライセンス問題が懸念されます。このような問題は、自動車業界のエコシステムには今までなかった問題です。しかし、2020年以降、この自動車とモビリティ技術の知財問題は重要な役割を担っていくことが推測されます。

SEPの問題

自動化された自動車やネットワークに接続された自動車の分野において、知的財産の問題は今後大きな問題になります。特に、企画必須特許(tandard essential patents (SEPs))の取り扱いは重要になってきます。

ワイヤレス特許の権利者は、既存の市場だった通信市場から、自動車産業へのライセンス事業拡大を狙っています。このようなライセンス活動から、SEPに関する競争、契約、憲法に関わる問題が浮かび上がってきました。

SEPはアメリカ国内の様々な機関や国際的な機関において多種多様な扱いをされてきました。このような背景からか、OLCでも前回お伝えした、USPTO、DoJ、NISTによる共同発表があり、SEPの取り扱いに関するポリシーを示しました。

しかし、自動車業界におけるSEPの課題は多くあります。例えば、以下のようなものがあります:

  • SEP権利者は、自動車サプライチェーンのどのレベル(最終製品を作るメーカーにライセンス、または、部品メーカーにライセンスなど異なるレイヤー)においてSEPをライセンスするかを自由に決められるのか?または、SEP権利者は、サプライチェーンのレベルに関わらず、ライセンスの申し出があれば、ライセンスをしなければいけないのか?
  • SEP権利者はユーザーをベースにしたライセンスを行い、SEPの最終使用製品によって異なるレートを採用してもいいのか(SEPをによってカバーされている技術が同じであっっても)?それとも、SEPでカバーされた技術はどのような独立した製品であっても同じ役割を担っているので、製品に関わらず一定のレートを採用しなければいけないのか?
  • FRANDにおけるロイヤリティレートは、法律の問題として扱われるのか(略式裁判が可能)それとも憲法上、陪審員によって決めなければいけないものなのか(公判まで訴訟が長引く、陪審員という不確定要素)?
  • 独禁法による差し止めはFRANDレートの判断における救済として適切なものなのか?

まとめ

このような問題は今後も注意深く監視していく必要があります。現在のランドスケープを理解しつつ、時の流れを敏感に感じ、今後どのように変わっていくかを注意深く見守る必要があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Brent A. Hawkins. Morgan Lewis & Bockius LLP (元記事を見る

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