OLCでもレポートしたIntelの8500件にも及ぶワイヤレス関連特許はモデムビジネス買い取りという形でAppleに引き継がれることになりました。今回は、このAppleによるIntelモデムビジネスの買収を分析していきたいと思います。
AppleがIntelのモデムビジネス買い取り
予想されていたように7月24日のアナウンスメントでAppleがIntelのsmartphone modem businessの大部分を買収したと発表しました。この取引で、AppleはIntelに$1Bを支払うことになります。また、Intelの従業員約2200名と、関連機材やリースもアップルが引き継ぐことになりました。
この一連の流れを振り返って
Intelがオークションを発表してから買収発表までは1ヶ月ほど。その期間で買収に関連するDue diligenceはもちろん、8500件にも及ぶ特許を調べるのは不可能です。ということは、AppleはIntelのモデム部門の買収や特許取得を前々から検討していて、実際にIntelと交渉を行っていたと予想されます。
では、なぜAppleと交渉中だというのにも関わらずIntelは特許の公開オークションという形をとったのでしょうか?
理由としては2つ考えられます。
考えられる理由その1:投資家へのアピール
Qualcommに勝てず不調なモデムチップビジネスを売りに出すとなると買える企業が限られてきてしまいます。その中で売却の際に最大限の金額で売って投資家へアピールすることが大切になってきます。その一環として、特許の公開オークションというのはなるべく高く資産を売却するというIntelの意思を明確に示すアクションとして行ったと考えられます。
考えられる理由その2:Appleへの牽制
もう一つ考えられる理由は交渉戦略です。Appleは交渉が難しい相手としてよく知られています。上でも示したとおり、Intelのモデム事業を買い取れる会社はそうそう多くありません。その中で、Intelの足下を見られ、交渉が難航していたのかもしれません。
そこで、公開オークションという形を取ることで、Intelのワイヤレス関連特許がQualcommに渡る可能性を示すことができます。AppleはQualcommとのライセンスがこじれ訴訟にまで発展したので、AppleとQualcommの仲はよくありません。なので、QualcommがIntelのワイヤレス関連特許を取得することは、Appleとしてはなんとしても避けたいところ。
Intelは今回の取引で、$1Bの現金を手にすることになります。それを他のビジネスに投資できるのはIntelにとってとてもいいことです。また、それ以外にも2200人にも及ぶ従業員やその他の機械やリースもAppleが引き継ぐので多くの経費を節約することができます。この経費節約は$1B以上にIntelにとってうれしいことかもしれません。
一方のAppleもIntelのモデム事業を買収することによって、将来的に自社で5Gなどの通信モデムチップを生産できるようになる見通しができます。そうすることで、Qualcommへの依存を解消できる兆しが見えてきます。この買収でAppleが自社でモデムチップを次世代iPhoneなどの自社製品に搭載できれば、$1Bといった大きな出費もそれ以上の価値をもたらしてくれることでしょう。
これからの知財における取引のカギは、特許プラスアルファという考えのもと、いかに付加価値をつけたパッケージディールを提案できるかにかかってくると思われます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Joff Wild. IAM (元記事を見る)