2020年が幕を上げましたが、去年の特許市場で大きなニュースを振り返ってみたいと思います。判例などの振り返りもいくつかありましたが、これは市場という面白い観点で見ているので、今回簡単に紹介します。
Top10は多かったので、個人的に興味のあったものを6つ取り上げました。OLCでもいくつか取り上げたものがあるので、関連記事はリンクを張っておきます。
1. IntelのオークションからAppleの買収へ
2011年のNortel特許以降、最大規模の特許オークションがIntelから発表されました。8000件にもなるスマートフォンモデムビジネスに関連する特許です。しかし、オークションの発表がなされてまもなく、AppleがIntelのスマートフォンチップビジネスを買収。
しかし、Appleが取らなかった400件ほどの特許はIntelが2020年にオークションにかけるとのことです。
OLCの関連記事:AppleのIntelモデムビジネス買い取りは両社にとってWin-Win
2. QualcommがAppleと和解、しかしFTCに訴えられる
QualcommとAppleの和解は5GスマホをQualcommのチップなしで提供することが非常に難しい現状を表しています。しかし、その後すぐに、FTCがQualcommを訴え、Qualcommのビジネスモデルである“no license no chips policy”を強く批判しました。現在このFTC案件は上訴中ですが、高裁で是正されれば、Qualcommのビジネスに大きな打撃を与える可能性があります。
OLCの関連記事:AppleとQualcommが和解、新しい契約を結ぶ, FTC v. Qualcommの後のSEP特許ライセンス
3. アメリカ政府によるHuaweiへの規制
アメリカと中国の間の貿易戦争が活発になっていった1年、アメリカ政府によるHuaweiへの規制も大きくなり、マスメディアでも取り上げられるような規模のものになりました。
OLCの関連記事:アメリカ政府がHuaweiを企業機密搾取で告発
4. Microsoft IPのリストラと新しいリーダーシップ
MicrosoftのIPに対する優先度が刻々と変わっている今日、主にライセンス部門の24人のスタッフがリストラされ、IPのトップであったErich Andersen氏もMicrosoftを去ることがわかりました。Erich Andersen氏は5年IPのトップを勤め、MicrosoftのIP戦略が大きく変わる時期をサポートしてきました。特に大きな変化としては、MicrosoftのCloud技術への集中とOpen sourceを積極的に取り組む姿勢です。
5. 米国NPEが中国で権利行使、Xiaomiとのディールを成立
アメリカのNPEである Advanced Codec Technologiesが中国でスマートフォンなどを作っているXiaomiとグローバルライセンスを結びました。これは中国で権利行使をした後に起こったものです。
今まではアメリカのNPEが中国の大企業を相手に中国で特許訴訟をしてもいい結果が得られないのでは?という巷の予想を覆した結果になりました。また、アメリカに比べ、中国での特許訴訟には費用がそれほどかからないので、Xiaomiは分が悪いと判断したのか、和解に踏み切ります。
この成功をみて、他のNPEも今後中国で特許の権利行使をするのでは?という予想がなされています。
6. DeloitteがIPコンサル会社を買収
Big 4と呼ばれている四大会計事務所の1つのDeloitteがUKにあるClearview IPというコンサル会社を買収。Deloitteが知的財産のアドバイザリーグループの強化に力を注いでいます。このことにより、他のBig 4も後を追って同じようにIP部門を強化していくのでは?という予想がなされています。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Richard Lloyd and Joff Wild. IAM (元記事を見る)