HUAWEI問題などを発端に、アメリカ政府は中国を知財問題で取り上げていますが、会見によると国防省の知財に関する認識の甘さ、特にデータの所有権問題が大きな課題のようです。これは国防省だけの問題でなく、大企業でも十分起こりうる問題です。
国防省とコントラクターのジレンマ
国防省はコントラクターに外注して国の防衛に必要な設備を整えていますが、国防省とコントラクターの間では長年、知財、特にデータに関する問題が存在しています。
国防省としては、軍事設備の維持、修復、改善する際に提供元のコントラクターだけに依存したくないので、納品される製品やサービスに関するノウハウやソースコードなどを含む情報もほしい。
しかし、コントラクターとしては国防省にそのような技術情報を教えてしまうと国防省経由で競合他社に自社の技術が流出してしまう可能性があるので、そのようなことは避けたいと考えます。
このように両者の利害が平行線をたどってしまう現状は、軍事設備の維持に長期的な影響を与え、テクノロジー企業が国防省と取引をすることを難しくしている一因になっています。
商用技術の応用が増加
1950年から70年代における軍事設備の開発の大部分は政府契約の下で行われたので、開発に関するデータの所有権は国防省にありました。しかし、近年ではすでに商用化されている技術の応用で軍事設備を開発することが増え、特にテクノロジーやソフトウェアの分野では商用の軍事活用が顕著です。
研究開発活動が低下
国防省内における研究開発が年々低下していっていることが特許分析でわかりました。元記事のグラフを参照すると、特許数と出願数が年々下がってきていることがわかります。
また、特許の中身を分析し、R&Dランドスケープを見てみるとトレンドラインがないことから、 国防省内 でイノベーションが重視されていないことがわかります。
このような結果から、空軍、海軍、陸軍が別々に研究開発を進めるよりも共同で行った方が効率がいいのでは?という指摘もあります。
既存の知財プログラムでは役不足
国防省における知財の認識が甘いため、長期的に軍事設備を維持するために必要なデータにアクセスできなかったり、コントラクターとの交渉においてデータの権利に関する話し合いが早い段階からできていないなどのさまざまな問題が指摘されています。
このような知財の認識の低さから、国防省はコントラクトを獲得した企業の独占を許してしまい、軍事設備の維持に多くのコストがかかってしまっている状態です。
知財プログラムを一新できる人材が必要
既存の知財プログラムでは長期的に軍事設備の維持が難しくなってきているので、必要なデータにアクセスできるような契約を勝ち取れる知財プロフェッショナルが求められています。
企業でも同じようなことになりえる
今回のような問題はアメリカ国防省に限ったことではありません。イノベーションを怠って知財を長年軽視してしまった大企業にも起こりうる問題です。
知財の問題の解決には時間がかかりますが、現状ではダメだと認識したならば、改革が必要です。それは国防省であっても、企業でも同じです。改革には改革を推し進められる人材が必要なので、そのような人材を取り込めるような環境作りが大切になってきます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Bridget Diakun. IAM (元記事を見る)