知財は「守る」ものから「活用する」ものに変わってきています。その中で、中小企業が知財活用の一端である技術ライセンス事業を行うにはどのようなことをまず考えるべきなのでしょうか?今回は、数ある知財の中でも特許に注目していきます。
技術ライセンスの特徴
技術ライセンスは、知財や関連技術に対するコントロールを維持し、収入を得られる手段なので、既存の知財を活用し、商業化する上で有効な手段の1つです。典型的な技術ライセンスの背景には、他社の方が特許を商用するのによりよい施設を持っていたり、一般に普及させてその技術を「基準」にさせたりする理由があります。
また、最近のビジネストレンドを見ると、技術ライセンスの重要性は日に日に高まっています。例えば、自動運転などを見ると、様々な企業が提携し、共同して技術開発を行っています。その他の分野でも、他のシステムと連携し、他社のシステムと連動する製品やサービスが増えてきています。
そのような企業同士が協力して製品やサービスを今までよりも速いスピードで提供していく今日のビジネス環境において、技術ライセンスは重要な役割を果たします。
今後、技術ライセンス(提供する側も受ける側も両方)が増えることが予想されますが、特に中小企業による技術ライセンスは大きく後れを取っています。EUIPO の最近の調査によれば、中小企業の19%しか知財に関するライセンス契約を結んでおらず、そのなかでもたったの1/4が自社技術を提供するライセンスだったということでした。つまり、中小企業で技術ライセンスを提供している側にいる企業は極めて低いということになります。
中小企業が技術ライセンスを行う上で抱えている問題は、技術分野の特定、活用事例や市場、技術に関心のありそうなパートナー企業やライセンシー候補の特定です。
このような問題を解決するための手段は(1)調査・分析による正しいライセンス戦略の定義と、(2)その戦略に沿ったライセンス契約の作成と交渉にあります。
会社に合ったライセンス戦略の重要性
ライセンス戦略は必要不可欠です。ライセンスポリシーはライセンシーの達成したい目標やライセンスの意図によって異なります。短期間で最大の収入を得ることを目的にしている会社の先約と新しい市場に参入する計画や新しいパートナーと手を組む計画をもっている会社の戦略とでは、戦略自体に違いがあるでしょう。
何はともあれ、ライセンス戦略はビジネス全体とR&D戦略に同調する必要があります。もし会社が市場での「規格」として自社技術を広めたい場合、広くライセンスする必要がありますが、他社製品との差別化を狙うのであれば、ライセンス先は厳選するべきです。どのような戦略であるにしろ、ライセンス戦略が一人歩きするのではなく、全体的なビジネスやR&D戦略に干渉しないようにする必要があります。
ライセンス戦略が明確になった後、技術の有望性、応用性、特許の強さなどを検討していきます。
まとめ
他社製品やサービスへの対応が当たり前になって、顧客からも求められるようになっていく中、中小企業であっても技術ライセンスは重要な役割を担います。課題は多いですが、まずは会社に合ったライセンス戦略を考えてみてください。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Dr. Richard Brunner and Dr. Sevim Süzeroglu-Melchiors. Dennemeyer & Associates SA(元記事を見る)