メインのライセンスが解約されてもサブライセンスが生き残る可能性あり

メインのライセンスが解約された場合、サブライセンスも解約されるかという問題を解決するには、契約書の解釈をおこなう必要がある。

サブライセンスが維持されることに

Fraunhofer-Gesellschaft (“Fraunhofer”) という会社がWorldSpace に対して数件の特許に関するworldwide, exclusive, irrevocable license(メインライセンス)を提供していました。このライセンスにはサブライセンスする権利も含まれていました。そのライセンス取得後、WorldSpace はSirius XM Radio Inc. (“SXM”)にirrevocable sublicense(サブライセンス)をおこないます。

その後、WorldSpace は破産しメインライセンスを拒否、その結果、契約違反が起こり、ライセンス元のFraunhoferがライセンスを解約する権利を持ちますが、その時点で、Fraunhoferはメインライセンスもサブライセンスも解約しませんでした。破産裁判所では、FraunhoferとSXMの和解が成立し、サブライセンスが維持されることになりました。

特許訴訟

その6年後、FraunhoferはSXMがライセンスでカバーされている特許を侵害しているという旨のcease and desist letterを送ります。その1ヶ月後、Fraunhofer はWorldSpaceにメインライセンスは破産手続きの間に解約されているという旨のレターを送りました。

その後、FraunhoferはSXMに対して特許訴訟を起こします。訴訟に対する防御として、SXMはサブライセンスがあることを示し、早い段階でmotion to dismissが受け入れられ、訴訟を取りやめるべきと地裁は判断しました。その判決を不服に、FraunhoferはCAFCに上訴。

契約書の解釈をおこなう必要

CAFCは地裁が下した訴訟の取り下げを却下します。CAFCは、地裁はメインライセンスが実際に解約されているかをまず判断するべきだとし、そのような判断がなされないまま訴訟を取りやめるという判断をするのは適切ではないとしました。また、メインライセンスが解約されていると判断したのであれば、その解約にもかかわらずサブライセンスが有効であるかを判断するべきとしました。

CAFCは、ライセンスが解約された場合のサブライセンスの扱いについては、デフォルトのルールがないため、契約書の解釈をおこない、その解釈に基づいて判断しなければいけないとしました。

今回の案件において、メインライセンスの規約では、メインライセンスが解約された場合のサブライセンスの扱いが不明瞭なので、extrinsic evidenceを考慮する必要があるとしました。

このような判決を元に、CAFCは地裁における判決を破棄し、地裁に案件を差し戻しし、CAFCの判決に沿って、審議を進めることを命じました。

まとめ

ライセンスをおこなう際、サブライセンスは原則認めない方がいいでしょう。認めてしまうとライセンス先がサブライセンスをおこない、ライセンスの管理がしづらくなります。また、今回のように、メインライセンスが解約されているとしても、サブライセンスが生き残る可能性があります。

今回のケースを教訓にし、仮にサブライセンスを許す場合でも、メインライセンスが解約された場合、自動的にサブライセンスも解約されるなど、明確な文言を規約に含むことをおすすめします。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Brian M.Z. Reece, Christie Matthaei and Paul Stewart. Knobbe Martens(元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

特許出願
野口 剛史

2019年2月のIPRとCBM の統計データ

2月PTABは34件のIPRとCBMのFinal Written Decisions(最終判決)を下しました。この数字には、CAFCからの差し戻しも含みます。争われたクレームの内408 クレーム(66.89%)を取り消し、192 クレーム(31.48%)の取り消しを却下。特許権者が補正やdisclaimerを行い10 クレーム(1.64%)が生き残りました。いままでの争われたクレームの累計取り消し確立は、約75%です。

Read More »
display-with-code
契約
野口 剛史

ソフトウェアライセンス契約書における知的財産の取り扱いで大切な3つのポイント

米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、特許期間調整(patent term adjustment, PTA)に関する米国特許商標庁(PTO)の決定を支持し、出願人が許可通知後(notice of allowance)に補正書を提出し、補正書を取り下げるか提出を棄権すればより早く審査を完了できた場合、特許期間から日数を差し引くことが適切であると判断しました。

Read More »