規格必須特許(standard essential patents (SEP))はより重要性を増して、今後普及する5G、IoT、AIなどの分野では特に重要なものです。そのため主要各国でもそれぞれの方針があり、ライセンスをおこなう際は注意が必要です。
統一の動き
The United States Department of Justice (DOJ), the European Commission (EC), the High People’s Court of Guangdong, People’s Republic of China と日本特許庁は、規格必須特許のライセンスに関してガイドラインを示しています。まだそれらのガイドラインで異なる点もありますが、多くのSPEやFRAND (fair, reasonable, and non-discriminatory rate) という基準に関する問題について統一の動きがあります。
アメリカの傾向
バランスをとり、差止命令へのハードルを低くする。2013年のDOJの表明では、SEPライセンスが原因で特許侵害に発展した場合、差止命令をすることに難色を示していました。しかし、その表明は2019年末に取り下げられ、近日中にDOJによるSEPライセンスに対する新たな表明が予定されています。
正式な表明はまだですが、2018年にDOJから発せられた情報を整理すると、ライセンシーとライセンサーの両者の利益を考え、バランスをとりつつ、DOJは差止命令に対する条件を緩和するような表明をするのではないかと考えられています。
差止命令のハードルを低くすることは、アメリカ政府による近年のアメリカ知的財産の不正使用に対する取り締まり強化にも合致します。
しかし、このようにライセンシー側に有利な方針をとると、アメリカでライセンスが受けられないため、一部のメーカーがアメリカにおいて商品を販売できない(一般に特許Hold outと呼ばれている)という状況も懸念されます。
このようにSEPライセンスの分野でバランスを取るのはむずかしいですが、DOJは各規格決定団体により明確なFRAND条件を求めていくかもしてません。また、DOJは規格決定のプロセスにおける大手メーカーによる共謀も懸念しています。
まとめ
規格必須特許のライセンス世界情勢は統一の方向に向かっていますが、まだ主要国の間でも違いがあります。アメリカの場合、知財不正使用の取り締まりを差止命令などで強化したい一方、特許Hold outを回避するために、ライセンシーとライセンサーの間のバランスをとることを最重要課題としているようです。
元記事にはアメリカの傾向の他、ヨーロッパ、中国、日本のSEPライセンスに関する傾向が説明されています。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Doris Johnson Hines and Ming-Tao Yang. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP(元記事を見る)