知財の売買やライセンスの取引の際に、契約において買い手やライセンシーが売り手やライセンサーから対象となっている知財は第三者の知財権を侵害したり、悪用するものではないというRepresentations and Warrantiesを要求してくることがあります。
Representations and Warrantiesとは、英文契約書によく使われ、日本語では表明保証と訳される場合が多いそうです。この表明保証というのは,契約当事者がある内容が真実であることを表明し保証するという場面で使用されます。知財の場合、上記のように売り手やライセンサー側からの対象になっている知財に対する表明とその保証に使われる場合があります。
Representations and Warrantiesは文言によって、当事者間のリスクが大きく変わるため、交渉の際に特に長い時間をかけて話し合われる点でもあります。というのも、売り手やライセンサーはRepresentations and Warrantiesを限定的なものにして責任を最小限にするようにしたく、逆に、買い手やライセンシーはRepresentations and Warrantiesをなるべく広く定義し、第三者による知財のクレームがあった際の「保険」にしたいと考えるからです。
しかし、知財の場合、無数の特許、商標、企業機密などがあるため、売り手やライセンサーが対象となっている知財は第三者の知財権を侵害したり、悪用するものではないと言い切るのが現状難しい状況にあります。しかし、Representations and Warrantiesの項目がある契約がほとんどなので、知財の場合、Representations and Warrantiesを当事者の「知識」に限定する文言が多く使われます。
具体的には、以下のような文言が使われます。
The company owns or possesses sufficient legal rights to all company intellectual property necessary for its business as now conducted and as currently proposed to be conducted without any violation or infringement of the rights of others, provided however that the foregoing representation is made to the company’s knowledge with respect to third-party patents, patent applications, trademarks, trademark applications, service marks, or service mark applications.
このように「knowledge 」に限定する場合、「knowledge 」の範囲がどこまで及ぶのかを明確にしておくことをおすすめします。例えば、「knowledge 」を実際に売り手やライセンサーが知っていることがら(actual knowledge)に限定することもできれば、constructive knowledge(知っておくべき情報)も含むことができます。通常の「knowledge 」の定義にはこのactual knowledgeとconstructive knowledgeを両方含むことが多いですが、後の解釈の違いを避けるためにも定義を明確にすることをおすすめします。
実際に交渉する場合、お互いのパワーバランスや契約のタイプ、金額等で状況は変わってきますが、特に自社が売り手やライセンサーの場合、Representations and Warrantiesに「知識」に限定する文言を使うことでリスクを下げることができるのでせひ検討してみてください。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Rahul Kapoor and Shokoh H. Yaghoubi . Morgan Lewis & Bockius LLP(元記事を見る)