特許契約が譲渡(”assignment”)であり、単なるライセンスでないことを示すのは意外に難しいようです。今回、Lone Star Silicon Innovations v Nanya Tech. Corp. (Fed. Cir., 2018-1581)において、CAFCは単なる形式や単語の使用だけで、自動的に契約が特許譲渡契約として扱われないことを示しました。
上記の判例で、Lone StarとAMDの間で取り交わされた特許契約では、訴訟を起こす権利を得るために必要な「ほぼすべての権利」(“all substantial rights”)がAMDからLone Starへと移行されていなかったとし、CAFCはLone StarがNanyaに対して特許訴訟を起こす権利を単独で保有していなかったとしました。
事実背景
Lone Starは、問題になった特許契約において、Lone StarはNanyaをAMDの特許侵害で訴えられる権利を得ていたと主張。実際に、契約書には限定された会社を特許侵害で訴える権利を含む“all right, title and interest”がAMDからLone Starへ移ったことが明記されていました。
しかし、CAFCは、契約書にはLone Starが侵害を訴えられる企業が限定されていること、また、Lone StarはAMDの了解なしに契約上移行した権利の売却をすることができないことを指摘し、特許訴訟を起こす権利を得るのに必要な「ほぼすべての権利」(“all substantial rights”)をLone StarはAMDから得ていなかったとしました。
この結果、Lone StarはNanyaを単独で訴えることができず、NanyaをAMDの特許で訴えるにはAMDも訴訟に加わる必要があるとしました。
教訓
特許購入する際の契約条項を確認することが必要です。契約のタイトルが譲渡(”assignment”)となっていて、すべての権利を移行するものであっても、移行された権利に対して条件や制限がかけられている場合、特許の譲渡ではなく、単なるライセンスとして扱われ、単独で他社を特許侵害で訴えることができない場合も出てきます。単なる単語や形式ではなく、契約内容全体を考慮して権利行使できる権利が移行したかを判断されるので、特許購入の際の文言は慎重に検討する必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:PCK IP professional (元記事を見る)
2件のフィードバック
当たり前なようでも実際に判決で示されると驚きますね。
本件では「契約書にはLone Starが侵害を訴えられる企業が限定されている」にも関わらず、それ以外の会社を訴えようとしたもの。そもそもこの点が一番の疑問です。当初から無理目の訴訟だったといえるのではないでしょうか。
判例の中身を読んでみるとそうではないようです。
問題となったAMDとLone Starの間の特許契約では侵害を訴えられる企業が限定されていますが、今回訴えたNanyaはその訴えられる企業に含まれています。
”Lone Star sued [Nanya], who are all listed as Unlicensed Third Party Entities in the transfer agreement”
つまり、CAFCが言っていることは、このような限定的な訴える権利が与えられているだけでは、たとえ契約上許可されている企業に対してでも特許訴訟は行えないということになります。
Lone Starは、契約書で限定されている企業以外への訴訟を起こす権利(やAMDの承認プロセスなど)は今回の訴訟には関係ないと主張していますが、その主張はCAFCでは認められませんでした。
参考までに判例のリンクを張っておきます。