Open Sourceの脅威にIBM, Microsoft, the Linux Foundation とOINが共同戦線

2019年11月19日、the Open Invention Network (OIN)は、IBM, Microsoft, the Linux Foundation と共同で、Unified Patentsの new open source zoneの創設メンバーに加わることになったと発表しました。この動きによりLinuxコミュニティーは直面するNPEによる脅威と運営会社による知財リスクの軽減に向けて大きく前進した形になります。

OINとは?

OINは2005年に設立され、Linux kernelのOpen sourceに対する脅威を未然に防ぐために率先して特許の買収などを行い、 defensive aggregatorのリーダーの1つとして活躍してきました。

UnifiedはIPRを持っても多用する組織の1つで、今回OINがUnifiedに加盟したことにより、OINが防衛一方の組織から変わりつつあるのではないか?という憶測が出ています。

10月にMicrosoftがOINに加入。それまでLinuxにとって最大の脅威として見られていたMicrosoftのOIN加入により、OINの目的であるLinux kernelを特許リスクから守るための戦略が大きく変わりました。

このような業界の変化に伴い、OINはMicrosoftなどの運営会社による知財リスクよりも、NPEなどによる権利行使への対策へ戦略をシフトしてきたようです。

Unifiedとのタイアップ

Unifiedは特定のセクター(Unifiedではzoneと言っている)における質が低いが業界に脅威をもたらすとされる特許に対して積極的にIPRを行っています。OINはこのUnifiedの実績とプロフェッショナリズムを評価し、今回のUnified Patentsの 新しいopen source zoneの創設メンバーとして加わることになりました。

このOINの動きは、IBMとMicrosoftにも大きな意味をもたらします。今回まで、両社ともUnifiedの他のzoneには加盟していませんでした。しかし、IBMはopen source リーダーであるRed Hatを今年の夏に買収しました。この買収により、OINの創立メンバーでもあるRed HatをIBMが買収したことで、IBMもRed HatとOINを通してUnified Patentsの 新しいopen source zoneの創設メンバーとして加わりました。Microsoftにとっては、今後もOpen sourceの世界をサポートしていく企業としての意思表示ができました。

NPEがOpen sourceコミュニティーのリスクなのか?

しかし、本当にNPEがOpen sourceコミュニティーにとって大きなリスクになっているのでしょうか?データを見る限り、NPEによるopen sourceプロジェクト関連の訴訟は増えていますが、自動車、モバイル、小売りなどのUnifiedの他のzoneと比較するとその脅威はまだ小さいです。

まとめ

Linuxにとって最大の脅威として見られていたMicrosoftのOIN加入やIBMのRed Hat買収により、Open sourceコミュニティーに大きな変革がもたらされています。そのような業界の変化から、OINのようなdefensive aggregatorも戦略を変えつつあります。

Open sourceコミュニティーにとってNPEがどれほどの脅威なのかは疑問が残りますが、OINがUnified Patentsの 新しいopen source zoneの創設メンバーとして加わることは今後のOpen sourceコミュニティーにとって大きな変化をもたらすことでしょう。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Richard Lloyd. IAM (元記事を見る

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

speech-presentation
再審査
野口 剛史

裁判官直伝の実務アドバイス(書類作成編)

日本の知財訴訟担当者が実際にアメリカの IPR で提出するBriefやMotionを書くことはありませんが、アメリカの弁護士が作成した書類をレビューすることは多々あると思います。そのようなときに自社に対して有利に進むよう、実際に PTAB において判決を下す行政判事の立場になってレビューし、現地の担当弁護士にフィードバックをすることが大切になってきます。

Read More »
graph-chart
訴訟
野口 剛史

合理的なロイヤルティ損害賠償を評価する際の売上予測と「訴訟リスク倍率」の活用は合法

アメリカにおける賠償金は高額になる傾向がありますが、今回、特許権者の損害賠償専門家が合理的なロイヤルティ損害賠償額を決定する際に、売上予測および「訴訟リスク倍率」を使用 することを支持する判決が下りました。これによりさらなる賠償金の増額が懸念されます。

Read More »