ライセンス業務においても、知財運営に関する知識は必要です。今回は、
Licensing Executives Society (LES) 2019 Annual Meetingで話された特許ライセンスのための知財運営3つのポイントを紹介します。
1.確かなデータが鍵
自社知財に関するデータが間違っていたり、古かったりした場合、取引に大きな影響を及ぼしかねません。
カンファレンスで取り上げられた例では、ある会社が自社の特許の書誌情報 (bibliographic data)を数ヶ月ほど更新していませんでした。ちょうどそのときに、その会社はライセンス交渉をしていたのですが、ライセンス候補の対象になっていた自社特許の一部が権利満了、または、権利放棄されていたことを発見します。
このようにデータを更新しないことで費用を削減しようとすると、大切な交渉の際に、正確なデータが得られないので、最悪、今回の例のように、ライセンスしようとしていた特許がライセンスできなくなってしまうという事態にも陥りかねません。
2.手続きをしっかり把握する
些細なことであっても、出願や所有権の変遷(chain of title)に問題があるとライセンスの価値を低くしてしまうことがあります。例えば、年金の払い忘れで特許を復活しなければいけないようなことがあった場合、そのような事実があることを指摘されただけで、金額面で妥協しないといけないという局面も考えられます。
そのようなことがないよう、ライセンス候補の特許に関する手続きの履歴等は、きちんと整理し、どのような経緯で権利化に至ったのか、所有権の変遷は正しく行われているのか、また年金は期限内に支払われているのか等々をすべて把握しておく必要があります。
3.外部の協力が必要
外部弁護士や知財ベンダーの協力を得ることは今や必要不可欠です。上で紹介したような例は、回避可能な事例です。例えば、自社のデータを予め知財ベンダーの情報と照らし合わせたり、ライセンス交渉の前に、外部弁護士と協力して十分な調査をするなどすれば、ライセンス交渉の際に相手に指摘される前に、何らかの対策はとれるようになります。
例えば、IP Proficienciesというリソースを使って、自社の知財運営の状況と理想のギャップを知ることで、問題点を浮き彫りにし、外部弁護士と協力して、知財運営の改善に取り組むのも効果的でしょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Stephanie M. Sanders. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP (元記事を見る)