IPライセンス監査のすすめ

ライセンス契約を結ぶためには多くのリソース、時間とお金を使う必要がありますが、契約を結んだ後のケアーはどうしていますか?ここでは監査を行うことでロイヤルティー収入の安定化を提案します。

いつライセンス監査をおこなうべきか?

注目すべきイベントとしては以下のようなことが考えられます:

  • 予期していた金額、または、市場の売り上げトレンドから予想される金額よりもロイヤルティーが少なかった場合
  • ロイヤルティーレポートの計算にミスがあった場合
  • ライセンシーの在庫管理が滞っていると知った場合
  • ロイヤルティーを報告する担当が変わった場合

上記のようなことが起こった時はライセンス監査を行ういいタイミングです。

また、イベントが起こらなくとも、ライセンス締結から早い段階で監査を行うのも効果的です。このような監査を行うことで、細かな点まで見ているということと、規約に則った方法で正確にレポートさせるというライセンサーの意思を示すことができます。

ロイヤルティーは正確に報告されない

2018年のあるレポートによると、ライセンシーの実に86%が正確にロイヤルティーを報告していないということです。つまり、ほとんどのライセンシーはロイヤルティーを実際にあるべき金額よりも低くレポートしていることになります。その率も20%以上になる場合もあり、簡単に見逃せるものではありません。

しかし、上記のようにライセンス締結から早い段階で監査を行えば、相手のロイヤルティーレポートの義務意識が高まり、取りこぼしも少なくなるでしょう。

監査前提の規約

監査を行うにあたって、ライセンス契約時の規約も大切になります。例えば、監査費用の支払い責任がどちらにあるのか、監査後の対応、正確なロイヤルティーがレポートされていなかったときの代償など監査を前提にした規約を含めておくことが重要です。

また、監査の際に無駄な争いを避けるためにも、ロイヤルティー計算に関わる用語などは明確に定義し、あやふやな部分をなくしておくことも大切です。さらに、ロイヤルティーの計算例を提示したり、監査の際にどのような資料が求められるかなどを示すのも有効です。

まとめ

ライセンス契約はアフターケアが大切です。特に、戦略的に監査をすることでロイヤルティーの取り損ないを防ぐことができます。そのためにも、監査を前提としたライセンス契約を考えておく必要があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Jill N. Link, Pharm.D. McKee Voorhees & Sease PLC (元記事を見る

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