知財のライセンスは効率よく技術を活用でき、新しい製品やサービスを安く提供できるメリットがあるためライセンシーにも消費者にもいい面があります。知財ライセンスにはこのような競争を促す効果もありますが、契約の条件次第では、競争を低下させる原因にもなりかねません。
アメリカの取締機関の考え方
DOJやFTCなどの省庁や裁判所は、競合他社へのライセンス拒否自体が独占禁止法に違反するという立場は取っていませんが、知財権を保有している組織が自動的に独禁法の適用を逃れられる訳ではないので、ライセンスにおける行動が非競争的な効果をおよぼさないように気をつけることが必要です。
DOJとFTCが2017年に発行したガイドラインを見ると、当局がライセンス契約を評価する際に、効果を基準にしたフレームワークを採用することが明記されています。このフレームワークは、ライセンスが実際の競争に対する影響(または起こるであろう影響)を重視する考え方です。
ライセンスは競争を活性化させるものだという見方がされているので、ほとんどのライセンス契約の規制事項は’per se‘ rule(証拠がなくても一方的に非競争的なものだと扱う考え方)ではなく、’rule of reason’(問題視されている行動の効果が非競争的なものなのか、競争的なものなのかのバランスを見極める)が採用されます。
このガイドライン改正で最も注目するべきだと思われる点は、Leegin Creative Leather Products v. PSKS における最高裁判決を反映し、再販売の際の最小価格を設定すること自体は違法ではなく、’rule of reason’を用いて分析した後に判断されるべきとしました。
また、2017年のガイドラインは、独禁法の’safety zone’の条件に対しても明確化しています。そこには、特殊な例外を除き、当局は、ライセンス契約が(1)表現上非競争的なものではない(例えば、price-fixingや生産上限などの制約はアウト)(2)ライセンサーとライセンシーの関連する市場のシェアーが合わせて20%以下)の場合、ライセンス契約の制限条約を問題視しないとしました。
他にも考慮する点はある
‘safety zone’の条件を満たしていれば独禁法違反は問題視しなくてもいいかもしれませんが、知財のライセンスの場合、消尽(patent exhaustion)などの他の特別ルールを考慮する必要性があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Garrard R. Beeney and Renata B. Hesse. Sullivan & Cromwell LLP(元記事を見る)