IBMはとてつもない特許数を保持していることで有名ですが、そのような豊富な資産の活用の一環として特許の売却も積極的に行っています。今まではサービスや製品を提供している運営会社(operating company)にのみ売却を行っていましたが、最新の取引ではどうやら売却先はNPEのようです。
IBMの特許ポートフォリオは米国特許だけで6万件以上
IBMは長年USPTOの特許取得ランキングで1位を取っていることもあり、膨大な特許資産を保有しています。最新の情報によると、IBMの特許ポートフォリオは米国特許だけでも6万件以上を保有しているとのことです。
このように膨大な特許資産が1つの会社に集中していることから、様々なビジネス分野においてIBMのポートフォリオに関心が向けられています。
今までは運営会社(operating company)にのみ売却
しかし、これだけ膨大な特許を保持するのは大変で維持費も多くかかります。そのため、IBMは積極的に自社の特許を売却していて、今年では大きなポートフォリオをsoftware business Pure Storage, IT services company HCL Technologies やe-commerce firm Wayfairなどに売却しています。
過去の売却例を見ても、今までIBMはサービスや製品を提供している運営会社(operating company)にのみ売却を行っていました。運営会社は、訴訟を未然に予防するためにIBMの特許を購入していたようですが、今回は運営会社に買い手が見つからなかったのか、通常の運営会社ではない組織への特許売却がありました。
始めてNPEに特許を売却か?
USPTOのassignment records (here and here)によると、IBMは500件以上の特許を2つの取引において Daedalus Groupというところに売却しました。 Daedalus Groupに関する情報は限定的ですが、どうやら知財の収益化に長けた人物にリンクしている組織のようです。
Daedalus GroupがIBMの特許を使い積極的にライセンスキャンペーンを行うのであれば、今までのIBMの特許売却戦略に大きな変化があったことになります。
今回入手したassignment recordsによると、Daedalus Groupは今IBMの特許を取得するにあたって$9Mを支払ったとのことです。これにはアメリカの特許に加え、ヨーロッパやアジアの特許権も含まれます。
IBMから売却する特許は負担が大きい?
IBMは積極的に自社の特許をライセンスしたり売却したりしているので、IBMから取得する特許には多くの負担(encumbrances)があることが予想されます。負担(encumbrances)の具体的な内容は明確にはわかりませんが、一般的な例としては、Field of useが制限されていたり、特許の権利行使をできない企業がリスト化されていたりする場合があります。
IBMのRed Hat売却で複雑化?
今回のIBMの動きにはRed Hatの買収が関連しているのかもしれません。Red HatはDefensive aggregatorであるLicense on Transfer Network (LOT)のメンバーです。IBMはRed Hatの買収の際に、LOTなどを通して今後もOpen sourceが自由に使えるように努力していくという声明を発表しましたが、継続して特許資産の収益化は続けると明言しています。
しかし、LOTへ加入するとLOTから様々な制約が課され、ライセンスや売却の際にこれまでよりも多くの負担(encumbrances)を強いられると思われるので、今後のIBMの特許資産価値は減少すると考えられます。
また、LOTへIBMが加入するとなると、価値の減少だけでなく、ライセンスや売却自体も難しくなってきます。
まとめ
今回の Daedalus Groupへの特許資産の売却は、このような状況の中、IBMの知財収益化戦略に大きな変化があったことを示すサインなのかもしれません。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Richard Lloyd. IAM (元記事を見る)