効率重視の知的財産デューデリジェンス

企業の買収時にはデューデリジェンスが欠かせません。デューデリジェンスでは企業の様々な面を評価・査定する必要がありますが、知的財産も重要な要素の一つです。今回は時間との戦いであるデューデリジェンスにおいて知財をどう効率的に調査・分析するべきかについて話していきます。

知的財産デューデリジェンス(due diligence)の最も重要な4つのレベルを基本的なものから複雑なものまで段階的にまとめました。

レベル1:所有権(ターゲットは知的財産を所有しているか、または使用する権利を持っているか)

レベル2:範囲(知的財産はターゲットのビジネスを実際にカバーしているか、競合他社とは異なる特徴を含めて十分にカバーしているか?)

レベル3:有効性(知的財産の出願は登録につながる可能性があるか。既存の特許が無効化されるリスクはあるか?)

レベル4:Freedom-to-Operate(FTO)の検討(第三者の知的財産を侵害しているとして訴えられることはないか?)

以下は、知財デューデリジェンスを開始する前に、社内の知財弁護士がクライアント(買い手や投資家)と相手側(ターゲット)に質問するべき質問です。これらの質問に対する回答は、特に時間がない場合や予算が限られている場合に、社内の知財部が知財デューデリジェンスで優先すべきことを理解し、適切に指示することを可能にします。

買い手や投資家に聞くべき重要な質問

どのような取引なのか? ベンチャーキャピタル投資の場合は、レベル1(所有権)で明らかになることが多く、新興企業の製品が開発サイクルの初期段階にある場合は、レベル4(FTO)をお勧めします。アセットディールの場合は、レベル1は非常に詳細な情報が必要で、レベル2(スコープ)とレベル3(有効性)も重要です。株式取引や合併の場合は、レベル2と3も同様に重要です。また、合併は新分野への進出を目的としていることが多いため、レベル4(FTO)が重要になることが多いです。

買い手(投資家)の戦略的目的や将来の計画は何か? いくつかの製品の販売が中止される場合は、関連するIPの調査を最小限に抑えることができます。他の製品が新たな市場への進出が予定されている場合は、レベル4が重要になるかもしれません。

ターゲットに聞くべき重要な質問

その企業は外国に知的財産を所有しているか? 重要な市場については、早期に外国の弁護士に相談すること(特に、米国と同等のものがない、または異なるルールを持つ独自の知的財産(例:著作者人格権、実用新案特許、医療処置やソフトウェアに関する特許の異なるルールについては、早期に外国の弁護士に相談すること)。

企業が長年にわたって提供してきた製品、サービス、知財はあるか? もしあれば、訴訟やその他の問題がすでに表面化している可能性が高いため、精査の必要性は低いと考えられます。

会社はすでに使用していない製品の知的財産を所有しているか? もしそうであれば、それらの資産のみを対象とした知的財産の調査は省略されるか、売却やライセンスのために評価されるかもしれません。

ターゲットは、競合他社が興味を持ちそうな知的財産を所有しているか? これは、その知的財産が優れた防御兵器であるかどうかを確認するために、その有効性と範囲を評価したり、ライセンスや売却の評価をすることを示唆しているかもしれません。

製品はどのように開発されたか(ソースは何か)? これにより、リスクの調査が必要な分野のロードマップが得られます。創業者や技術開発者との早い段階での会話から、競合他社、既に行われているFTOレビュー、競合他社から最近雇われたキーパーソン、使用したコンサルタントなどを明らかにすることができます。

解説

企業の買収する際、買収する企業を正しく査定することが大切です。そのプロセスは一般的にデューデリジェンスと呼ばれていますが、テクノロジー企業の買収の場合、その会社の知財もデューデリジェンスの最中に正しく評価・査定することが求められます。

しかし、デューデリジェンスには時間の制約があり、限られた時間の中で行う必要があります。知財の評価は多岐に渡り、所有権などの比較的データや契約書等が揃っていれば比較的確認が容易なものもありますが、特許クレームの範囲と製品の相互性、競合他社との比較、有効性、Freedom-to-Operate(FTO。侵害回避調査)などを各製品・技術ごとに行っていたら、時間がいくらあっても足りません。

そのため、買収形式や将来の計画、市場、知財、いままでの経緯などを考慮し、各案件ごとにどの知財デューデリジェンスを優先して行うか(同時に知財もデューデリジェンスを行わないか)を戦略的に判断する必要があります。

今回挙げられた質問は一般的なものにとどまりますが、このような質問を知財もデューデリジェンスの事前作業として関係者に行うことで、効率重視の知的財産デューデリジェンスができます。当然、特定のケースによってはより細かなヒヤリングをする必要も出てくると思いますが、ここで挙げられた質問をベースに、独自の知財デューデリジェンススキームを開発していくことをおすすめします。

企業買収をしない会社でも、今後はビジネスを成功に導くために、パートナーシップをもつことが多くなると思います。その際、パートナー候補の企業を見つけると思いますが、その際にもここで話されたテクニックは応用可能です。パートナーの知財を的確に見極めることで、さらに効果的なパートナーシップを実現できることでしょう。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Paul C. Haughey and Siegmar Pohl. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP(元記事を見る

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