世界12カ国の仲裁(Arbitration)についてまとめた資料を見つけたのでシェアーします。130ページにも及ぶ膨大な資料ですが、今回はアメリカの仲裁についてのポイントを簡単にまとめました。
背景
産業革命以降、訴訟に比べて早く、安く、敵対性が低いため、仲裁は注目を集めていった。その後、連邦法( Federal Arbitration Act or FAA)で仲裁に関する法整備が始まる。
仲裁組織
仲裁に関する組織はいくつかあるが、最も有名なのが the American Arbitration Association (AAA)。仲裁が明記されている契約の多くにAAAのルールが採用されている。
仲裁契約
基本、民間の契約における問題はなんでも仲裁することができる。仲裁の権利行使範囲、適用される法律、仲裁の場などは、契約に明記されている内容が尊重される。仲裁は原則非公開だが、契約内容等によっては証拠や賠償などは自動的に機密扱いさないかもしれないので、事前に当事者や仲裁人と協議する必要がある。
仲裁人の選択は契約内で決められている方法が優先されるが、そのようなものがない場合、採用されているAAAなどの仲裁組織のルールに従うことになる。また、仲裁人が仲裁できる内容も事前に契約で決めることができる。
仲裁方法
仲裁のプロセスは契約書で決められている内容が優先されるが、明確なプロセスが明記されていない場合、採用されているAAAなどの仲裁組織のルールに従うことになる。証拠や証言についても同じ。特に証拠については、裁判所で採用される証拠法に準ずる必要はない。
場合によっては、仲裁人の裁量でDiscoveryに似た情報開示が求められる場合もある。
賠償は約内で明記されているものに限られる。しかし、賠償に関する記載がない場合、仲裁人に裁量権がある。
裁判所との関連
一方が仲裁を拒否するなどした場合、仲裁の有効性や妥当性に関して裁判所が介入する場合がある。
また、仲裁で決まったことに関して裁判所に上訴することはむずがしい。
費用
これも契約書に書かれていることが優先される。基本、当事者で折半だが、賠償金には金利なども含むことができる。弁護士費用の負担も契約書や適用される法律で認められていれば可能。
まとめ
契約時に訴訟ではなく仲裁を採用するケースが増えてきています。アメリカにおける仲裁は、訴訟よりもいい面がたくさんありますが、契約時の取り決めで当事者にかなりの裁量が与えられているので、契約問題の解決に仲裁が採用される場合、契約書における仲裁に関するルールを十分考慮する必要があります。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Glenn R. Legge and Jeanie Tate Goodwin Holman Fenwick Willan LLP. (元記事を見る)