自動車業界にとっては悩みの種:第5巡回控訴裁が Avanci SEPプールに反トラスト法上の問題はなしと判決

トヨタやホンダがワイヤレス技術で特許出願を強化しているのは、AvanciのようなSEPの特許プールへの対抗策なのかもしれません。しかし、アメリカの裁判所ではSEP所有者有利の判決が続いており、自動車関連企業にはSEP/FRANDにおける知財のライセンスが大きな課題になっているようです。

独禁法の適用なしの事実は変わらないが、その判決理由が変わったことは異例

Avanciのパテントプールは、第5巡回区での勝訴を維持したが、異例なことに、同地裁は前回の意見を取り消し、新たな意見を発表しました。新しい意見は、Continental社がシャーマン法(反トラスト法)に基づく請求を行っていないとする連邦地裁の判決を支持し、本件を棄却するものです。取り消された前回の判決は、Continental社は標準設定団体契約の第三受益者ではないため、請求を追求する立場を欠いているという判断でした。今回の判決は、実装希望者(Continental社)と標準必須特許(SEP)保有者の間で長年続いてきた紛争の完全な解決には至りませんが、SEP/FRANDの文脈で独占禁止法を適用することを否定する意見となっています。

SEPライセンス対象会社のサプライチェーン上の限定に対してFRAND違反および反トラスト違反を主張

2019年5月、Continentals社は、AvanciおよびAvanciに2G、3G、4G携帯電話規格に不可欠なSEPのライセンス独占権を付与していた多数の事業者に対して訴訟を提起しました。訴訟の詳しい経緯に関しては、今年3月のOLC記事を参照。Continental社は、AvanciがContinental社がOEM(相手先ブランド製造会社/自動車メーカー)に販売するテレマティクスコントロールユニット(TCU)の製造に必要と考えられているSEPのライセンスを付与しないことに基づき、FRAND違反および反トラスト違反を主張しました。Avanciは、契約上、サプライチェーンのより下流であるOEMにのみにライセンスするよう制限されていると主張しました。

2020年9月、Barbara Lynn主席判事(N.D. Tex.)は、Continental社の反トラスト法違反の請求を棄却し、Avanciの申し立てを認め、反トラスト法の請求を棄却した後、「原告の残りの宣言的判決、契約違反、約束禁反言、不正競争の請求に対する補充的管轄権を行使しない」ことを明らかにしました。連邦地裁は、Continental社は現在もTCUを製造・販売することができ、侵害を訴えられておらず、サプライチェーンのより下流であるOEMはライセンスを取得することができたため、独禁法上の損害を受けたと主張することができなかったと判断しました。Continental社はこの判決を不服として、第5巡回区に控訴しました。

2022年2月28日、第5巡回控訴裁は今回取り消された最初の判決を出し、連邦地裁の判決を取り消し、Continental社の主張を全て棄却するよう指示して、本件を差し戻しました。

続く2022年4月13日、Continental社は大法廷(en banc)による再審理を申請し、第5巡回控訴裁の意見が「規格必須特許権者が、製品が規格を実装する企業にライセンスを与えるという約束を回避する道を開く」いままでの通例ではない新しいルールを作り、ひいては「特許権者が、法律を遵守し事業を行うために必要なライセンスを取得できる企業とできない企業を選べるようにし、特定の企業を市場から完全に追い出す可能性がある」、と主張しました。(申請書の中身はこちら) 同裁判所は、この申請に関する多くのアミカスブリーフを受け取り、2022年6月13日、1文の意見を発表し、先の判決を撤回しました。

その後に出された第5巡回控訴裁の修正意見は、3ページの簡潔なもので、Continental社がシャーマン法第1条及び第2条に基づく請求を述べなかったとする連邦地裁の理屈を採用するものでした。

圧勝ではなくなったもののSEP権利者有利の判決であることは変わらず

撤回された最初の判決は、OLCの記事でもわかるように、SEPの許諾が必須な規格を実装する側である実装者(implementer)の立場を非常に弱いものにする内容でした。そのため、専門家の中にはその判決を非難する声も多く、それが多くのアミカスブリーフにつながったのだと思います。

その影響からか、第5巡回控訴裁は異例の判決文の撤回を行い、より保守的で地裁における判決に沿った内容の新しい判決理由を示しました。これによりSEP権利者と実装者のパワーバランスの大きな偏りは避けられたののの、今回の判決はSEP権利者有利であることは変わりません。

SEPとFRANDに関する米国の裁判所の心象を見極めるのは難しいですが、「ホールドアップ」と呼ばれるSEP所有者側が実装者を選ぶような行為と、「ホールドアウト」と呼ばれる実装者を除外するような行為とを比較した場合、実装者を選ぶ「ホールドアップ」のような行為について、裁判所は温厚な態度を取っていると言えるかもしれません。

参考文献:5th Circuit Confirms Avanci SEP Pool is Safe: No Antitrust Issue with Avanci’s Pool

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