セールスピッチをエンターテイメントに

特許の鉄人AI vs 弁理士など最近は知財のスキルを公の場で競って、それをエンターテイメントとして提供する企画が増えてきています。この傾向に乗っかって、今度はセールスピッチをエンターテイメントにするのはどうでしょう?

知財にはおもしろいコンテンツが必要

知財をより身近に感じてもらうことは、私たち知財プロフェッショナルとしての使命だと感じています。知財は計り知れない価値を見いだすものだと私は信じていますが、周りにいる多くの人々がその価値に気づかないのであれば、知財は宝の持ち腐れになってしまいます。

知財をあまり知らない人でも、知財を体験して、知財の価値や素晴らしさを知ってもらうためには、「おもしろい」コンテンツ作りが重要になってきます。

日本の知財業界が縮小傾向にあるなか、世間の人に知財をアピールすることは今まで以上に需要になってきています。そんな中、エンターテイメント性があるコンテンツを作ろうとしてできあがったのが、特許の鉄人やAI vs 弁理士などだと私は考えています。

OLCでもいくつかコンテンツビジネスのアイデア を紹介してきましたが、どれも比較的閉鎖的な知財業界をもっとオープンするために、「おもしろい」形で情報発信をしていったらどうだろうという考えのもと生まれたアイデアです。

技を見せるエンタメ

さて、特許の鉄人やAI vs 弁理士などのイベントは日本で開催しているので、残念ながらアメリカにいる私は観戦できませんでしたが、サイトを見るとどちらも「技」や知識を問うバトル形式になっています。

これはよくあるクイズ番組とか料理の鉄人形式なので簡単にイメージが付くと思います。「競争」してどちらが「勝ったか」というシンプルでわかりやすい形は、エンターテイメント用のコンテンツにするのに優れていると思います。

このような知財のエンタメ化は歓迎したいのですが、どちらも経験を積んだ職人の「技」(とAIの「技」)の戦いなので、今回、私はまた違った「商売」の技を競うエンタメを提案したいと思います。

セールスピッチを争う商いの技

専門知識や経験に裏付けられた実務力というのも大切ですが、仕事を取ってくる能力も同じように大切なスキルだと思います。実際、日本の知財市場が縮小していく中、新規の仕事を取ってこれる人材やスキルというのは、今後より重要になってくるのではないでしょうか?

しかし、実際のセールスピッチは企業と事務所の間でおこなわれるため、公にはならないし、いい点・悪い点のフィードバックや情報の共有なども事務所や企業をまたいでおこなわれません。

つまり、知財業界で大切なスキルであるはずの「商いの技」が業界内でさえも共有されていないという状態が現状です。

しかし、このような課題をクリアーして、更に、知財に詳しい人以外にも楽しんでもらうようにするために、セールスピッチを披露して、特許の鉄人やAI vs 弁理士などと同じようにエンタメ化するのはどうでしょうか?

見せ方はマネーの虎風?

エンタメ化していくためには見せ方も大切なのですが、今のところ、特許の鉄人やAI vs 弁理士と同じように競う要素はほしいですが、架空の交渉をリアルタイムでおこなってもらって、難しい質問にもうまく答えるみたいな、昔テレビでやっていたマネーの虎みたいなものがいいのかなと思っています。

例えば、大手日系企業が特許出願を代行してくれる事務所を探しているとします。そこが、RFPを求めて広く募集して、数件の特許事務所が入札し、選考を経て、3事務所ほど選ばれ、実際に大企業の知財部数人に対してセールスピッチをするというようなストーリーを作ります。そして、その架空のセールスピッチをリアルタイムで公の場でやってもらい、3チームほどで争い、あとで架空の大企業知財部員さんからの評価してもらうのはどうでしょう?

セールスピッチだけで勝ち負けを決めるのは難しいかと思いますが、エンタメなので、ピッチで重要なポイントをスコアー化して評価したり、そのスコアーに応じて優勝者を決めたりするのもいいのかなとも思っています。

例で挙げた企業も事務所も仮想のものですが、評価する側は実際に企業の知財部長を含む複数の社内知財経験者がいいですね。事務所も本物の事務所同士が対戦すると盛り上がると思います。現実感を出した方が盛り上がると思いますが、それには企業や事務所の協力が必要ですね。

スケール化と派生サービスの可能性

今回のセールスピッチ対決ですが、特許の鉄人やAI vs 弁理士よりもスケール化と派生サービスの可能性に優れていると思います。

例えば、特許の鉄人やAI vs 弁理士は、主催者側が問題を決めたり、お題を決めたりする必要があるので、どうしても開催まで時間がかかり、いい問題(や正しい答え)を作るのは大変です。

しかし、セールスピッチ対決は事務所側のチーム3つと企業側のパネル3人ほどがいて、ある程度のバックグラウンド情報を提供すればいいだけです。なので、主催者側の負担が少なくなります。主催者側の負担が軽減されれば、対決バトルの頻度も上げることができるので、スケール化しやすいコンテンツです。

また、頻繁にセールスピッチバトルを開催できれば、知財営業のノウハウが蓄積されていきます。そこで、主催者側は、それをうまくパッケージにして、本やセミナーなどにまとめることで、知財営業ノウハウを売ることもできると思います。

他には、同じようなコンセプトを他の士業とよばれる業種でおこなえば、収益の多角化ができます。すでに知財業界で実績があれば、他の弁護士業界や、会計士業界などでも受けいられやすいと思います。

まとめ

セールススキルを公の場で争い、エンターテイメントとして見せる考え方は、今後「おもしろい」コンテンツになる可能性を秘めていると思います。このセールスピッチバトルは、ハマれば画期的なコンテンツになる予感がします。

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

訴訟
野口 剛史

誘導侵害の証明に求められる高い基準

侵害の誘発(inducing infringement)の認定には、無謀や過失を上回る限定的な範囲の基準である「故意の盲目」(willful blindness)が必要です。これは誘発された行為が特許侵害に当たるという知識が必要であり、そのような侵害者の主観的な考えが裁判所で認定されない限り、誘導侵害の証明は難しいと考えられます。

Read More »
report-graph
特許出願
野口 剛史

発明者の文献を先行技術の例外にする102条(b)(1)(A)の実用例

原則、すでに公開された発明は特許にできませんが、アメリカには開示に関して1年間の猶予期間があります。そのため、もし仮に発明者が著者である刊行物が出願前に公開されたとしても、その文献を先行技術文献として取り扱わないようにすることができます。今回はその102条(b)(1)(A)における例外と、使われる宣誓書、そして、そこに書くべき内容を、よくある共同著者が発明者であるケースを用いて考えていきます。

Read More »