特許出願からのサービス展開

今回は、日本の知財関係業務の大部分を占める特許出願の業務からどのようにサービスを拡大していけるかを考えてみます。特許出願総数が減少為ていく中、多くの特許事務所の課題が脱出願業務依存だと思うので自分なりに展開して行きやすい事業内容を考えてみました。

内容としては、日本の出願業務の現状を自分なりに分析してから、出願業務から展開できるサービス候補の紹介という流れになっています。

では詳しく見ていきましょう。

日本の特許出願ビジネスは縮小傾向

出願件数は年々減っている

特許庁のデータを見ると2008年から2017年まで徐々に出願件数は下がっています。ものすごい勢いで出願数が伸びている中国安定して出願数が増加しているアメリカに比べて、日本で出願業務だけに依存することは長期的に考えてあまり好ましくありません。さらにデータは2014年までと古いですが、弁理士の数が増加しています。最近は社内の知財部員でも資格者が増えてきたので、ある一定数は社内の知財部員になったとしても、弁理士が増加しているにも関わらず、主な仕事になるはずの出願業務の仕事量が年々減っているという傾向にあります。つまり、単純な需要と供給で考えると、低迷していく需要(新規出願案件)に対して過剰な供給(弁理士の増加)がおこなわれているので、今までと同じ業務をやっていても以前よりも単価が安くなってしまう懸念があります。

Googleで簡単に検索したところ、明細書作成で請求できる金額の相場は10万から25万程度らしいです。ここから事務所の人経費や家賃、税金、その他もろもろを差し引いたら利益として事務所に残るお金はいくらぐらい何でしょうか。。。ちなみにアメリカで新規の明細書を作成したら最低でも$5000かかります。このデータも古いですが、平均は1件あたり$10,000ぐらいだと思います。アメリカの知財市場と日本の知財市場はまったく違うのでそもそも明細書作成費用だけを比較することにあまり意味はありませんが、1件あたりの利益や利益率を考えると、アメリカの市場ではまだ特許出願業務だけでも十分な収入が得られると思いますが、日本ではそれが難しいと言わざる終えません。

出願業務から展開できるサービス候補

出願業務の話はこれくらいにして、自然に展開できるサービス候補を考えてみました。今回考えた候補は大きく分けて2つです。まずは、社内の知財サポート系のサービスで、もう1つは知財から派生するサービスです。では、1つずつ見ていきましょう。

社内知財サービス

社内の知財をサポートするサービスは簡単に言うと社内の知財部が携わる業務をサポートする業務です。簡単に言うと、エンジニアや事業部に対する知財教育の教材開発やプレゼン、発明発掘の際のヒアリングへの参加、Patent Mapなどの見える化のサポートなどです。まだ会社が小規模で知財部の機能がままなっていないところには、このようなサービスはうれしいと思います。このような中小企業がクライアントのところは、出願業務だけにとどまらず、すでに社内知財サービスの一部をになっているところが多いと思います。まだやっていなくても、中小企業がクライアントの場合、意思決定する人(社長など)に直接連絡できるチャンネルをすでにもっていると思うので、その人に知財の必要性や具体的な社内での活動のあり方を説明することで、自然と社内の知財活動のサポートもできるようになってくるはずです。

あと、これは知り合いの特許事務所所長に聞いた話ですが、社内の知財業務をサポートするような仕事を任されるには、まず先行投資をおこなって積極的にクライアントの事業内容を知る必要があると言っていました。特に、年間数回おこなわれる大規模な社内のセールスミーティングやR&D会議に(無償で)参加して、クライアントの事業や技術について学んだり、実際に社内で働いている営業や開発担当の社員との交流を持つことが大切だと語ってくれました。確かに、すでに明細書作成を依頼している事務所の担当者が積極的に自社技術や自社の事業内容を学んでくれる姿勢を示せば、それを拒むクライアントはいないと思います。そして、実際にセールスミーティングやR&D会議に参加したら、クライアントの事業内容を知れるだけでなく、実際に発明する発明者にも会えたり、普段の窓口以外の知財関係者にも会える機会があります。また、会議自体はおこなわれることが決まっているので、窓口の知財職員の手間も事前に適切な許可を得るだけであまりかかりません。社内のカギとなる関係者とコネクションができればそれだけでも、明細書作成以外の社内の知財にかかわる様々な案件を依頼されるいいきっかけになると思います。

知財から派生するサービス

ここで言う派生サービスとは、通常の知財部ではなかなか手が回らない業務を代行したり、サポートするサービスです。具体的に言うと、企業機密の取り扱い、サイバーセキュリティ、Open Source Software管理などです。これらの問題はニュースなどに度々出てくるので、会社経営者や役員の間で話題に上るものの、実務レベルでの対策が難しいものです。また、ITや法務など事業部門がまたがる案件なので、知財に担当が振り分けられていない場合もあります。どんな形であれ、会社を経営する上でのリスクは認識されているものの、具体的な対策が取れていないものに対して具体的な提案ができるレベルのサービスを提供できれば新しい仕事のチャンスが生まれます。

この派生サービスのいい点は、必要性は認識しているものの、クライアントの社内リソースだけでは十分な対策が取れないということです。つまり、具体的な提案ができれば、比較的簡単にビジネスにつながりやすい点にあります。そして大きな会社であればあるほど、対策を取らないリスクは高くなっていくので、大手のクライアントがいる場合、この派生サービスに注目すると新たなビジネスチャンスが生まれます。

次にどうやって派生サービスに対する必要な知識やリソースを得るかですが、すでに過去に企業機密や、サイバーセキュリティ、Open Source Software管理の実績がある場合、それをアピールしてさらなる仕事につなげればいいと思いますが、全く実績がない場合、専門業者とパートナーシップを組むことが一番早いと思います。業者はパートナーシップを組むことで新しいクライアントの開拓ができ、事務所はクライアントに新しいサービスをすぐに展開できます。特定の業者と面識がなくても、業界別の会合とかは頻繁におこなわれているので、サイバーセキュリティのサービスを展開したいなら、サイバーセキュリティの大きなカンファレンスに参加してそこで業者の人と面識をもつのもいいと思います。

あと、クライアントのニーズを知るには、社内知財サービスでも紹介した社内のセールスミーティングやR&D会議に参加することをおすすめします。このような会議では会社としての課題も共有されるので、そこから潜在的な知財から派生するサービスを見いだすこともできるはずです。

まとめ

日本の特許出願業務が停滞していくなか、出願業務に依存しないビジネスモデルが必要になってきています。すでにあるクライアントとの関係を活かし新しいサービスを展開するにはどうしたらいいのか自分なりに考えてみました。今回紹介した社内知財サービスも知財から派生するサービスも十分現実可能なビジネスだと思います。どちらにしてもクライアントのニーズを知るのは大事なので、クライアントの事業をよく知るための「先行投資」が必要だと感じました。

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