Image showing a diagram illustrating the impact of the new fee structure for Continuation Applications and Terminal Disclaimers proposed by the USPTO on patent filing strategies.

Terminal Disclaimerの新費用が継続出願戦略に与える影響: 米国特許庁が提案する大幅な料金改定の考察その2

米国特許商標庁(USPTO)は最近、2025年度の特許出願費用の改定案を発表し、そこでの特定の費用に関する大幅な値上げと料金体制は大きな話題になっています。すでに、今回提案された費用案の全容を含めた複数の記事を書いていますが、今回は、継続出願とTDに関する新しい費用体系に関する考察を行います。というのも今回提案された費用案は、出願人の戦略に大きな影響を与える可能性があり、特に、継続出願とTDに関する新しい費用体系への対応には、既存の継続出願戦略を抜本的に見直す必要があるからです。

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2025年度USPTO特許料金改定の波紋: 知財プロフェッショナルが知るべき変更点と対策

USPTOが提案した2025年度の特許料金改定は、特許戦略に重大な影響を及ぼす可能性があります。特に継続出願、Terminal Disclaimer、IDSなどに対する新しい料金体系は、出願のタイミングやボリュームによって大幅な費用増加をもたらします。本記事では、料金改定の詳細を解説し、知的財産専門家や企業が取るべき対策を提案します。出願タイミングの最適化、関連出願の同時提出、審査中の出願の再評価など、戦略的な適応が求められます。USPTOの意図を理解し、自社に合った効果的な特許出願戦略を立てることが、変化する法規制の中で競争力を維持するカギとなるでしょう。…

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RCE手数料の値上げが特許戦略に与える影響: 米国特許庁が提案する大幅な料金改定の考察その1

2025年度の特許関連手数料の改定案の中から継続審査請求 (RCE) の手数料に焦点を当てて、特許出願人や企業の知的財産戦略に与える影響に関して考察してみました。本記事では、RCE手数料の意図的な値上げの詳細と、その背景にあるUSPTOの目的を解説します。さらに、改定案が特許戦略に与える影響を、審判請求や継続出願との比較、権利化までの期間と費用の観点から分析し、企業や発明者が取るべき対応策を提言します。USPTOの料金改定を契機に、特許戦略の抜本的な見直しが求められる中、本記事は、効率的な権利化プロセスの構築、戦略的な手続きの活用、代理人との協働によるコスト管理など、実践的な情報を提供します。…

継続出願とTerminal Disclaimerの関係性

継続出願(Continuation Application)は、親出願の利益を引き継ぎつつ、クレームの補正や追加を行うために利用される出願形態です。しかし、継続出願には自明型二重特許(Obviousness-type Double Patenting, ODP)の問題が付きまといます。ODPは、先行する特許や出願と実質的に同一の発明に対して、特許期間を不当に延長することを防ぐための規定です。

継続出願でODPの問題が発生した場合、出願人はTerminal Disclaimer(TD)を提出することで、この問題を解決できます。TDは、継続出願の特許期間を先行する特許や出願の満了日に合わせることで、特許期間の不当な延長を防ぐ役割を果たします。つまり、継続出願を行う際には、TDの提出が必要不可欠な手続きとなっています。

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Terminal Disclaimerの新費用について

現行の費用体系

現在、TDの提出には一律170ドルの費用がかかります。この費用は、TDを提出するタイミングに関係なく、一律に適用されています。つまり、出願人は、審査の早い段階でTDを提出しても、最終段階で提出しても、同じ費用を払います。

提案されている新しい費用体系

USPTOは、TDの提出時期に応じて段階的な費用体系を導入することを提案しています。提案されている新しい費用体系は以下の通りです:

  1. 最初のオフィスアクションの前にTDを提出した場合:200ドル
  2. 最終オフィスアクションの前にTDを提出した場合:500ドル
  3. 最終オフィスアクションまたは特許査定の後にTDを提出した場合:800ドル
  4. 審判請求の通知後にTDを提出した場合:1,100ドル
  5. 特許付与後にTDを提出した場合:1,400ドル

この新しい費用体系では、TDの提出が遅れれば遅れるほど、費用が高くなります。また、通常の場合、スタートアップや中小企業に対しては、条件を満たすのであれば、Small entityやmicro entityステータスによる割引が適用されます(通常はそれぞれ60%と80%の割引)。しかし、TDの費用に関してはそのような割引はないので、注意が必要です。

USPTOの意図と期待される効果

USPTOがこの新しい費用体系を提案した主な目的は、出願人にTDの早期提出を促すことです。早期のTD提出を奨励することで、以下のような効果が期待されています:

  • 審査官の負担軽減:TDが早期に提出されれば、審査官はODPの問題について検討する必要がなくなり、審査の効率が上がります。
  • 特許存続期間の明確化:TDが早期に提出されることで、特許の存続期間がより早い段階で確定します。これは、公衆にとって、特許の存続期間をより明確に把握できるというメリットがあります。
  • 出願人のコスト意識の向上:段階的な費用体系の導入により、出願人はTDの提出時期を戦略的に検討するようになります。これにより、出願人のコスト意識が高まり、不必要な費用の発生を防ぐことが期待できます。

USPTOは、この新しい費用体系により、審査の効率化、特許存続期間の明確化、出願人のコスト意識の向上を図ろうとしています。

継続出願の新たな費用について

提案されている継続出願時の追加費用

USPTOは、継続出願(分割出願、継続部分出願も含む)に関しても新たな費用体系を提案しています。提案内容は、継続出願の時期に応じて追加の手数料を課すというものです。具体的には、以下のような費用が提案されています:

  1. 最先の優先日から5年を超えて8年以内に継続出願を行った場合:2,200ドルの追加費用
  2. 最先の優先日から8年を超えて継続出願を行った場合:3,500ドルの追加費用

これらの追加費用は、通常の出願手数料に上乗せされます。つまり、継続出願が遅れれば遅れるほど、出願人の負担が大きくなる仕組みです。ただし、スタートアップや中小企業に対しては、条件を満たすのであれば、Small entityやmicro entityステータスによる割引がこの追加費用にも適用される(それぞれ60%と80%の割引)ため、追加費用の負担はある程度軽減されます。しかし、すでに述べたようにTDにはそのような割引がないので、スタートアップや中小企業であってもTDを提出する可能性の高い継続出願を行う場合、注意が必要です。

USPTOの狙いと想定される影響

USPTOがこの新たな費用体系を提案した背景には、以下のような狙いがあると考えられます:

  • 早期の権利化の促進:追加費用を課すことで、出願人に早期の権利化を促します。これにより、技術の公開や活用が促進され、イノベーションの速度が上がることが期待されます。
  • 審査負担の軽減:継続出願が減れば、審査官の負担が軽減されます。これにより、審査の質の向上や、審査期間の短縮につながる可能性があります。
  • 特許の質の向上:早期の権利化を促すことで、出願人は発明をより深く吟味するようになります。これにより、特許の質の向上が期待できます。
  • 特許制度の健全性の維持:継続出願の濫用を防ぐことで、特許制度の健全性を維持することができます。

ただし、この新たな費用体系は、出願人に大きな影響を与える可能性があります。追加費用の負担が大きすぎると、これらの企業が継続出願を断念せざるを得なくなる可能性があります。また、複雑な技術分野では、継続出願が必要不可欠な場合もあります。

このように、この新たな費用体系が導入された場合、出願人は継続出願の是非について、より戦略的に検討する必要が出てくるでしょう。

新費用体系が出願戦略に与える影響

特許ポートフォリオを形成する上で、継続出願は重要な役割を担ってきました。しかし、今後は一番古い親出願から時間が大きく経過した継続出願(分割出願、継続部分出願も含む)には多くの追加費用が発生することになり、継続出願がやりづらい環境になります。さらに、継続出願の後に、審査官がODPの懸念をOAで示した場合、TDの提出が必要になってくるので、その時点で少なくとも$500の追加費用がかかることになります。

このように、いままで当たり前に行われていた継続出願戦略は、新費用体系ではよりコストの高い手続になってしまうことが懸念されています。そのため、以下のような事柄を考慮し、新しい出願戦略を考えていく必要があります。

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Terminal Disclaimerのタイミングの重要性

USPTOの提案する新費用体系では、TDの提出時期が費用に大きく影響します。出願人は、早期提出による費用削減と、後期提出によるクレーム補正の柔軟性のトレードオフを考慮し、最適なTD提出時期を決定する必要があります。早期提出の是非を判断する上で以下のような点を考慮するべきでしょう:

  • クレーム補正の可能性:クレームがすでに定まっており、大幅な補正の必要性が低い場合は、早期提出が有利です。
  • 技術分野の特性:技術の進歩が速い分野では、クレームの補正の柔軟性を維持するために、早期提出を避ける方が賢明な場合があります。
  • 予算の制約:予算に制約がある場合は、早期提出により費用を抑えることも考えられます。

出願人は、これらの要因を総合的に判断し、最適なTD提出時期を決定する必要があります。

継続出願を避ける戦略の検討

継続出願の費用が増加することで、出願人は継続出願を避ける戦略を検討する可能性があります。例えば、継続出願するのではなく、出願の時点で共通の明細書を持つ複数の出願を行うことで、1件当りのクレームをより狭くし、細分化することで、継続出願の必要性を減らすことができます。また、分割出願や新規出願を活用することで、継続出願を回避することも可能です。ただし、これらの戦略はケースバイケースで検討する必要があります。

費用対効果を考慮した出願戦略の立案

USPTOの新費用体系は、出願人に費用対効果を考慮した出願戦略の立案を求めています。出願人は、以下の点を考慮し、最適な戦略を立てる必要があります:

  1. 発明の重要性:発明の商業的価値や競争上の重要性を評価し、出願に投資する価値を判断します。重要なものは複数の出願を検討し、同時に行うのか、あえて継続出願等の仕組みを使って審査の動向を伺うのかという判断をします。また、発明が単発なものでそれほど需要なものでない場合、クレームする発明を絞り、コンパクトでシンプルな出願で早期権利化を目指すという戦略もあり得るでしょう。
  2. 市場の動向:関連する市場の動向を分析し、特許保護の必要性を判断します。もし市場が急速に成長している場合、あえて継続出願等の仕組みを使い審査を長期化させ、市場の変化を見ながら価値が高い特許を権利化するという手段も有効でしょう。

出願人は、これらの要因を総合的に判断し、長期的な視点から最適な出願戦略を立案する必要があります。場合によっては、外部の専門家の助言を求めることも有益です。

Micro/Small Entityへの影響

また注意したいのが提案されたTDに関する費用体系では、Micro EntityやSmall Entityに対する割引が適用されないことです。このため、限られた資金で知財戦略を実行しなければならないスタートアップや中小企業にとっても、出願戦略、特に継続出願に関する戦略は見直さなければ行けないでしょう。

RCEの代替として継続出願を使うか?

USPTOの料金案では、Request for Continued Examination(RCE)の費用も増加することが示唆されています。このため、出願人はRCEの代替として継続出願を使うことを検討するかもしれませんが、継続出願に関しても費用増加と費用形態が変わり、TDのタイムングも考慮した費用計算をしないといけないよで、費用の見積もりと見通しがより複雑になってきます。そのため、出願人は、RCEと(TDの費用も含めた)継続出願のコストと効果を比較し、最適な選択をする必要があります。

以上のように、USPTOの提案する新費用体系は、出願人の戦略に大きな影響を与える可能性があります。出願人は、これらの変更を念頭に置き、柔軟かつ戦略的に出願戦略を立てる必要があるでしょう。また、今回注目した継続出願における戦略だけでなく、他の戦略に関しても考察しているので、以下の関連記事も参照してみてください。

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まとめ

USPTO提案の継続出願とTerminal Disclaimerに関する新費用体系は、出願人の知財戦略に大きな影響を与える可能性があります。出願人は、TDのタイミングや継続出願の是非を慎重に検討し、費用対効果を考慮した出願戦略を立案する必要があります。特に、限られた資金で知財戦略を実行するスタートアップや中小企業にとっては、この新費用体系がより大きな影響を与える可能性があるため、柔軟かつ戦略的なアプローチが求められます。出願人は、発明の重要性や市場の動向を見極めながら、最適な出願戦略を立案し、必要に応じて専門家の助言を求めることが重要です。この新費用体系に適応し、特許保護の最適化と費用管理のバランスを取ることが、今後の知財戦略の鍵となるでしょう。

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