2025年度USPTO特許料金改定の波紋: 知財プロフェッショナルが知るべき変更点と対策 - Image with no text, informational content about USPTO patent fee revision for 2025 and its impact on patent strategy.

2025年度USPTO特許料金改定の波紋: 知財プロフェッショナルが知るべき変更点と対策

変更:新料金に変わると予想される日にちが間違っていたので修正し、日程が変わる可能性があることを説明する文を追記しました。5/3/2024

アメリカ合衆国特許商標庁(USPTO)が最近提案した2025年度の特許料金の変更案は、特許戦略において重大な影響を及ぼす可能性があります。特に、「特定の変更」として料金体系が大きく変更される継続出願やTerminal Disclaimer、IDSに対する新しい料金体系は、単なる値上げにとどまらず、特定の条件下で大きな費用負担を迫られます。そのため今から料金変更案の概要を知り、その対策を検討することが重要になっています。

「もしも今回提案された新しい料金体系が導入された場合、あなたの企業はどのような対応策を考えますか?」 この問いかけは、2024年10月以降も米国内で特許を出願する計画を持つすべての企業にとって、ただの仮想シナリオではなく、今から対策を考えておくべきものとなるかもしれません。新しい料金体系が実施された際には、現在審査中の特許出願案件の管理や、新たな出願の戦略に大きな変更を迫られることになるからです。

このブログ記事では、USPTOの提案する料金改定の詳細を解説し、それによって生じる課題とその対策について、具体的な戦略を提供します。知的財産専門家や企業が、より効果的な特許出願戦略を立てるために必要な情報を得ることができるよう、支援します。

この変更を理解し、適切に対応することが、企業の技術革新と市場競争力を保持するためには不可欠です。

USPTOの特許料金体系変更についての詳細説明

この料金改定案は、2024年10月1日から始まる2025会計年度に有効になる予定です。ただし、正確な施行日は、パブリックコメント期間中に寄せられた意見や、USPTOが意見を検討し対応するのに要する時間により異なる可能性があります。

対象となる「特定の変更」を除いた全体的な金額の増加は5%にとどまっていますが、注目すべきは、この「特定の変更」にあります。これらの特定の変更は、継続出願やTerminal disclaimer、IDS、AFCP、REC、追加クレームなど、特許手続きにおいて重要な費用であり、今後のアメリカにおける出願戦略を大きく変える可能性のある費用変更です。以下、注目すべき具体的な費用の詳細を分類して説明します。

継続出願について

料金構造: 継続出願、分割出願、継続部分出願には新たな段階的料金が設定されています。Earliest Benefit Dateから5年を超えて出願された場合は2,200ドル、8年を超えると3,500ドルの追加料金が課されます。

Earliest Benefit Date (EBD)とは

Earliest Benefit Date (EBD)とは、継続出願、分割出願、継続部分出願において優先権を主張する際に基準となる最初の出願の出願日です。高額な追加費用が発生する5年や8年という年数はこのEBDと新規に出願される継続出願、分割出願、または、継続部分出願の間の日数によって計算されます。

EBDは “patent term filing date” と同定義のもので、特許の期間を計算する際に用いられている出願日と同じです。

優先権に関する詳細はMPEP 210および211を、また、”patent term filing date”についてはMPEP 804 I.B.1(a)を、最後に、特許期間に関する詳細はMPEP 2701を参照してください。

考えられる影響: 継続出願を親出願の権利化のタイミングでおこなったり、審査を継続させるために何回もシリーズで継続出願を続ける(例:親出願→継続出願1→継続出願2と続けること)と必然的にEarliest Benefit Dateからの日数が増え、追加料金が発生する継続出願が増えることが予想されます。つまり、今までは特許ポートフォリオを作る上で当たり前だった上記のような戦略を継続すると、今まで以上に多くの追加費用がかかるようになります。

Terminal Disclaimersについて

料金詳細:
最初のOA前に提出された場合:200ドル
最終OAまたは許可前に提出された場合:500ドル
最終OAまたは許可後に提出された場合:800ドル
審判請求(notice of appeal)後に提出された場合:1,100ドル
既に特許が付与されたケースまたは再発行手続きで提出された場合:1,400ドル

考えられる影響: Terminal Disclaimerは通常、許容される主題が存在するまで(すなわち、Non-FinalまたはFinal Office Actionの後)提出されないため、実務上、大きな値上げになります。また、上記のような継続出願プラクティスにおいてもTerminal Disclaimerは頻繁に使用されるので、継続出願を継続して行う場合は、Terminal Disclaimerの必要性の判断とそのタイミングも考慮する必要があります。

IDSについて

料金構造: 情報開示陳述書(IDS)に関しては、参照数に基づいた段階的な料金が設定されます。50件を超える参照の場合は200ドル、100件を超える場合は500ドル、200件を超える場合は800ドルが課されます。

考えられる影響: 37 C.F.R. § 1.56に基づき、出願人は特許性に重要な累積しない情報をすべて開示する義務があります。しかし、今回示された累積課徴金を回避するために出願人がIDSから意図的に文献を省略し、それらの文献が重要であると判断された場合、訴訟中に不正行為(inequitable conduct )として訴えられるリスクがあります。そのため、このリスクとIDSで提出する文献数のバランスをより厳格的に評価していく必要があります。

AFCPについて

料金詳細: After Final Consideration Pilot(AFCP)2.0プログラムへの参加には新たに500ドルの料金が設定されています。これまでこのプログラムは無料でした。
考えられる影響: 有料になってもAFCPが却下される可能性があるので、早期のインタビューリクエストが増加するか、AFCPが適切であってもRCEを活用するケースが増えることが考えられます。

RCEについて

料金増加: Request for Continued Examination(RCE)の料金は、二回目以降のRCEで25%から80%の間で増加します。これはより効率的な出願プロセスを促進するための措置です。

考えられる影響: RCEをより高額にすることで、USPTOは出願人がより効率的に出願を行い、複数回の審査を回避することを奨励しています。しかし、効率化の手段の1つであるAFCPを使うと、追加で$500の費用がかかることになります。

追加クレーム

料金増加: 追加クレームに関する料金も見直され、大規模事業体で独立クレームが3つを超える場合は各追加クレームにつき600ドル、20クレームを超える場合は各追加クレームにつき200ドルが課されます。

考えられる影響: この変更は、出願人がより簡潔でより少ないクレーム数の特許出願を行うことを後押しするものです。この変更は、すでに紹介した継続出願やRCEの手数料の引き上げと相まって、USPTOが出願人に出願を集中的かつコンパクトに保つようインセンティブを与えることで、特許審査プロセスを合理化しようとしていることがわかります。

その他の費用

IPRおよびPGR手続き: Inter Partes Review(IPR)およびPost-Grant Review(PGR)手続きの費用は25%増しとなります。
特許期間調整(PTA)再考要求: 特許期間調整の再考要求に対する料金は43%増の300ドルになります。
特許期間延長申請料: FDAの審査が関与する製品に基づく特許期間延長申請料は468%増の6,700ドルになります。

その他、ここではカバーしきれない追加費用や料金の値上げがあります。その詳細は、USPTOが発表した2025年度の特許料金変更案の原本を参照してください。

このように、今回の料金変更案には単なる値上げにとどまらず、提出するタイミングやそのボリュームによって、費用が大きく異なる特定の項目が多数存在します。これらの特定の変更には、USPTOによる明確な意思が込められており、より特許審査プロセスを合理化させていく姿勢がわかります。

これらの料金変更は、USPTOの2025会計年度の始まりである2024年10月1日に実施される予定です。そのため、それまでに今から各企業はこれらの変更を踏まえ、特許戦略の再評価が必要となるでしょう。

特許料金変更はまだ「提案」段階

このように2025年度の料金変更の詳細が発表されましたが、まだ「提案」の段階であり、このすべての変更が確定したわけではありません。現在、USPTOは公開意見を募集しており、2024年6月3日までに意見を提出することが可能です。このプロセスを通じて、出願者やその代理人は料金改定に対する懸念や提案を直接伝えることができ、将来的な料金設定に影響を与える可能性があります。

ここでのステークホルダーからの意見によっては、今回提案された費用の概要が変更される可能性もあるので、そのことを踏まえて対策を行う必要があります。

特許料金変更に伴う対応策

提案された新しい料金体系がそのまま採用されることを過程した場合、この多岐に渡る変更に対応するために、知的財産専門家や企業が採るべき戦略をいくつか提案します。これらの戦略は、費用の増加を最小限に抑えつつ、効率的な特許出願と管理を実現するためのものです。

  1. 出願タイミングの最適化: 新しい料金体系では、特許出願のタイミングが費用に大きな影響を与えます。継続出願に関する追加料金を避けるためには、EBDから5年以内に出願することが重要です。したがって、継続出願を判断するスケジュールを見直し、必要に応じて調整することが推奨されます。
  2. 関連出願の同時提出の検討: 複数の関連する発明がある場合、それらを継続出願として段階的に出願するのではなく、同時に複数の出願を行うことが有効です。これにより、後に継続出願をする必要性が低下し、年数経過による追加料金やTerminal Disclaimerの提出頻度を抑えることができ、結果として、各出願が追加料金の対象となるリスクを減らすことができます。
  3. 審査中の出願に対する戦略の再評価: 今回の料金変更は来年10月に適用される予定です。そのため、現在審査中の出願ですでに継続出願を必要とするものがあれば、今のうちに継続出願をする選択も考えられます。特に、EBDの計算をして、すでにEBDから8年以上経過している場合は、それらの案件に関する継続出願の判断を優先するべきでしょう。
  4. 料金変更される前の駆け込み出願: 今回の料金変更は来年10月に適用される予定なので、それまでに出願することで、回避できる費用は多数あります。しかし、特許明細書の作成には時間がかかるため、今から現在進んでいる出願予定案件を再評価し、アメリカで駆け込み出願をするべき案件を特定し、優先的に準備を進めるべきでしょう。
  5. 現地代理人との連携: アメリカにおける現地代理人と密接に連携して、最新の料金体系に基づく出願戦略の変更を検討するべきでしょう。現地代理人から戦略的なアドバイスを受けるのも重要ですが、出願人による出願ポリシーを示したり、今後の出願やOAにおける具体的な指示の方法や意思伝達も重要になってきます。今まで以上に現地代理人と密接に連携することによって、適切な時期と方法で特許出願を行い、追加料金の発生を防ぐことが求められます。

これらの戦略を適切に実行することで、新しい料金体系による影響を最小限に抑え、効果的な特許ポートフォリオを形成・維持することが可能です。特許出願の計画と管理においては、変更された環境下における柔軟な対応が求められます。

自社に合ったアメリカ特許出願戦略を考える上での注意点

注意点その1:料金体系の変更は意図的に行われている

今回の料金体系は、必要な経費に対する対価の正当評価と審査の合理化という明確な意図があります。

アメリカにおける特許の維持費は発行日から3年、7年、11年の3回あります。しかし、特許の有効期限は原則出願から20年なので、EBDから5年後以降、そして8年後以降に出願される継続出願は、権利化されてもその継続特許の有効期限は親出願の出願日から計算されるため、2回目の7年目、3回目の11年目における維持費を支払わないで権利が消滅することがあります。

例えば、EBDから5年後以降、そして8年後以降の継続出願に請求される追加費用に関しては、現状では、出願時に支払う出願手数料、調査手数料、審査手数料だけでは、特許出願を発行までの特許庁における実費をカバーできていません。そして、EBDから5年または8年後に出願された継続出願は、少なくとも1回、場合によっては2回の維持費用が回収できないため、総合的に見て、必要経費の回収ができていません。その一部回収できていない経費を補うための追加費用と、USPTOは説明しています。

そして、審査効率の観点からも、一人の審査官が関連する出願を同時に複数審査する方が、長期間のギャップを経て関連する出願を審査するよりも効率的なのは明白だと思います。

このような費用回収と合理性に関する方針は今年に始まったことではなく、トレンドとしてここ数年明確な傾向です。この大きな流れとUSPTOの意図的な料金体系の見直しを意識しつつ、長期的な視点でアメリカにおける特許出願の方針を決定していく必要があります。

注意点その2:前払いして節約するか、後払いにして追加費用を払うか

今回の料金体系における大きな変更の主な点は、特定のアクションに関する時間軸における差別化です。出願する内容をシンプルにして、なるべくOA回数を増やさず、権利化すれば、特許庁費用の増加は微々たるものです。しかし、複数のクレームタイプに分かれる大量のクレームを含む出願だったり、複数回のOAの後AFCPを使う場面になったり、RCEを複数回行う状況に陥ったり、親出願の審査終了直前に継続出願を行うなどの、煩雑で出願から多くの時間が経過した後の手続きを行う場合、今後多くの追加費用を払うことになります。つまり、「前払いして節約するか、後払いにして追加費用を払うか」という話になるのですが、特許出願の場合、どちらの方が正しいかは一概には言えません。

例えば、後の継続出願における追加費用を回避するために、関連する3つの特許出願を同時に行うことにします。しかし、後の審査において、その3つすべての権利化を不可能にする先行文献が見つかったとします。そうなると、3つすべての出願を諦めないといけません。

しかし、もし関連する3つの特許出願に共通の明細書が使われていて、1つ目の特徴に関してクレームされているものを先行して出願していれば、同じ先行文献が見つかったとしても、後に計画していた2つの継続出願を諦めればいいだけです。

この例のような場合、「前払い」を選択したのですが、審査の結果「後払い」よりも余分に費用がかかってしまうという状況に陥ってしまいました。当然、その反対も十分考えられるわけで、個々の案件で最適解が変わるもので、その最適解が出願時には不明確な状態で判断をしなければなりません。

このように、今回の料金変更は、すべての出願人に、「出願費用を前払いして節約するか、後払いにして追加費用を払うか」という2択の選択肢を提示していますが、その選択に明確な答えがあるわけではなく、各案件ごとに個別に判断することが求められています。

問題点その3:審査の長期化やPCTによる「遅延」の再考察

また、手続きの遅れによって発生する継続出願の追加費用等には、別の落とし穴もあります。それは、特許庁における審査の長期化とPCT出願によるアメリカでの審査遅延の問題です。

2024年の3月時点での公式統計データによると、1回目のOAまでの平均期間は20.2ヶ月です。これは全技術分野における平均なので、特定の技術分野では更に長い期間1回目のOAが出るまで待つ可能性があります。さらに、費用変更前の駆け込み需要によっては、この期間が(一時的に)長期化することが予想されます。

さらに、クレームが複数の実施形態に関わる場合、最初のOAは限定要求(restriction requirement)のみで、その結果、本質的なOAが発行されるのに出願から2年以上の時間がかかる可能性があります。

このようにアメリカにおける特許審査が長期化する要素は多数あり、中には自社ではコントロールできないところで遅延が発生するので、複数の拒絶、複数のRCE、さらには特許審判委員会への審判請求などがあると、EBDから5年または8年後に継続出願をするということは、それほど稀ではないのかもしれません。

さらに、PCT出願の場合、EBDはPCT出願の出願日となる可能性があり、米国で特許出願が行われ審査が開始される30ヶ月前、つまり2年半も前になる可能性があります。そこからアメリカでの審査が始まると、PCT出願に対する許可通知が発行される段階ですでにEBDから5年が経っている可能性が高く、そこから継続出願をすると追加費用が取られてしまいます。

まとめ

本記事では、USPTOによって提案された料金体系の変更について詳しく解説しました。この改定は、USPTOにおける審査の合理化と経済的持続可能性を確保するために設計されています。

重要な変更点:
新しい料金体系は、特に後発の継続出願や特許庁における特許審査を長期化させる要因に新たな追加料金が導入されているため、複数の発明を含む複雑な特許出願の権利化コストが大幅に増加する可能性があります。
これらの変更に効果的に対応するためには、出願のタイミングの最適化、関連出願の同時提出の検討、および時間経過で発生する追加費用イベントを追跡できる特許管理戦略の再評価が必要です。

継続的な情報収集と専門的な助言の重要性:
今回の費用変更はまだ提案の状況であり、今後さらに変更される可能性があります。そのため、費用変更に適応するためには継続的な情報収集が不可欠です。また、現地代理人からの助言を受け、自社の出願スタイルと戦略に合った、適切な戦略を立てることができます。

USPTOの提案する料金体系の変更に対して積極的に対応することで、追加料金の発生を回避し、企業の知的財産を戦略的に管理することが可能です。これからも変化する法規制の動向に注目し、適切な対策を講じていくことが重要です。

今後の情報のアップデートと知識の共有

この記事がアメリカにおける特許出願における新しい課題と機会についての洞察を提供したことを願っています。これらのトピックに関する最新の情報については、以下のアクションをお勧めします。

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特許出願プロセスにおける最新の変更に備えることは、企業の知的財産を保護し、競争力を維持するために重要です。情報を収集し、適切な行動をとることで、これらの変化に効果的に対応していけるでしょう。

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