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弁護士は裁判所に提出する準備書面作成にAIを使うべきか?

AIは弁護士業務の効率を高め、生産性を上げるツールとなる可能性もありますが、正しい知識と理解の元で使わないと、弁護士としての信用やキャリアに関わる問題に発展する可能性もあります。すべての人が使うべきとはいかないまでも、「責任を持って」AIを活用できるのであれば、十分な恩恵を受けることができるでしょう。

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AIの利点とそのリスクについては、これまで何度も述べてきました。特に最近、ニューヨークの連邦判事が、AIを使って不正確な準備書面を作成した2人の弁護士に制裁を科したことで、AIには複雑な問題がつきもので、弁護士の代わりにはならないということを、痛感させられました。

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さらに、テキサス州の判事は最近、AIによって作成された提出書類のいかなる部分も、人間によって正確性がチェックされていることを証明するよう、出廷するすべての弁護士に義務付ける「人工知能の作成に関する証明書」指令を出しました。

このような状況下で、改めて、弁護士が裁判所に提出する準備書面を作成するにあたり、AIを利用するべきかを考えてみました。

弁護士がChatGPTで準備書面を作成するもAIが間違える

2023年6月、ニューヨークの連邦判事は、ChatGPTを使って準備書面を作成した2人の弁護士を制裁しました。

なぜか?それはChatGPTが間違ったから

具体的には、弁護士たちは存在しない判例を(おそらく判例の存在を確認せずに)引用した準備書面を提出してしまいました。これは、AIの「幻覚」(“hallucinations”と呼ばれるプログラムが無意味または不正確な情報を生成する現象)のリスクを示す好例です。

相手方弁護士が引用された判例の出自に疑問を呈したところ、裁判長は弁護士に判例のコピーを提出するよう指示。その結果、問題の判例は実在しないことが明らかになりました。

その後、AIによって準備書面を作成した2人の弁護士は、不誠実な行動をとり、裁判所に誤解を招く発言をしたと判断され、5,000ドルの罰金という制裁を受けました。

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また、テキサス州の(一部の)法廷では、人間のレビューなしにAIを利用した準備書面を提出することはできません。というのも、米連邦地裁のブラントリー・スター判事は、弁護士に対し、提出書類の作成にAIを使用しているかどうか、使用している場合はその提出書類が正確かどうかを人間が確認したかどうかを証明するよう求める指示を出しました。

スター判事のこの指令は、テキサス州で同様の証明書を要求するいくつかの常置命令 (standing orders) に影響を与えたようで、公表時点で、テキサス州裁判所のローカルルール、書式、常置命令のページで「人工知能」を検索すると、4つの常置命令がヒットするという状況でした。

法律事務所における新技術の導入方法

裁判所による命令と弁護士の職務

AIが法律業界を大きく変える可能性を秘めていることは明らかですが、新技術を採用するにあたっては、弁護士が依頼者、相手方弁護士、裁判所に対する義務を見失わないようにすることも不可欠です。

スター判事の指示は、弁護士が裁判所とのやりとりにおいて誠実に行動するという本質的な責任に触れています。その責任は、法廷での弁護士の発言にとどまらず、提出書類、提出物、準備書面の正確さにも及びます。

そして、テキサス州では他の裁判官もこれに追随しており、AIが法律業界に広く受け入れられるようになるにつれて、このような指令が全国で数多く見られるようになるでしょう。

「責任を持って」AIを活用できるのであれば、活用すべき

このように裁判所によるAI活用に関する規制が始まっていますが、弁護士はAIを使って準備書面を書くべきなのでしょうか?

「責任を持って」AIを使えるのであれば、AIを用いて準備書面を書くことはいいことだと思います。

AIは弁護士の仕事のやり方を劇的に変える可能性を秘めており、AIを活用してアイデアを生み出したり、準備書面のドラフトに活用するすることは、AIが弁護士の仕事を容易にするのに役立つ方法の1つに過ぎません。

しかし、AIが完璧ではないことを忘れてはいけません。上記で見てきたように、AIは物事を間違えることがあります。AIを使って準備書面を作成する場合、AIのプロンプトから生成された成果物は、裁判所に提出できる完璧な書類ではなく、非常にラフなドラフトだと考えてください。 

AIを使った準備書面作成のポイント

AIが生成した準備書面が正確かどうかを確認するためのポイントには、以下のようなものがあります:

  • AIには、データ・プライバシーや守秘義務、偏見、その他の倫理的配慮など、法律事務所がAIを使用する前に考慮すべき多くの課題があることに留意すること。
  • 業務に使用する前に、AIツールの能力とその限界についてよく理解しておくこと。一部のAIプラットフォームには、情報の更新日があることを覚えておいてください。例えば、ChatGPTは現在のところ考慮されている情報は2021年9月までであり、法律におけるより最近の動向には精通していない可能性があります。そのため、ChatGPTは、ウェブベースの他のAIツールに比べ、有用性が限定的である可能性があります。
  • AIが提示する主張や指摘は慎重に検討するべきであり、額面通りに受け取らないようにすること。弁護士にはクライアントと裁判所に対する義務があり、AIが提案したものであっても最終的には弁護士本人の責任で主張が法律と論理において健全であることを保証しなければなりません。また、AIが提案しないものであっても、クライアントの裁判に役立つ可能性のある主張を見逃していないことを確認することを忘れないでください。
  • AIが引用した事例を徹底的に調査すること。これがニューヨークで悲劇をもたらした原因でした。一次ソースの確認を徹底することで、引用された判例が実際に存在することを確認し、判例に関連する指摘が正確であることを確認し、AIが主要な(または最も説得力のある)権威を提供していることを確認するため、また、他の判例を見逃していないことを確認するため、独自に調査を行うことが必要です。
  • さらに、AIを使用して準備書面を作成するか、または法律業務を支援するかにかかわらず、AIに対する裁判所のスタンス(例えば、提出書類にAIの使用に関する証明書を添付する必要があるかどうか)をよく理解しておく必要があります。

準備書面作成にAIを使用する場合の結論

結局のところ、AIを使用する最善の方法は、AIに何ができるかを理解し、その限界を認識することです。AIは法律上の議論のニュアンスを完全に理解しているわけではありません。(場合によっては、最新の法律や判例にアクセスすることすらできません。しかし、ドラフトを作成したり、限定的な判例調査のサポートを提供することはできます。

また、準備書面作成プロセスを効率化するオプションは他にもあります。例えば、準備書面テンプレートや文書自動化ツールを使用することで、生成AIに依存しなくても、貴重な時間を節約しながら洗練された準備書面を作成することもできます。

AIがどの

ような機能を持つのか、また、倫理的・専門的リスクに留意しながらAIをどのように活用すればよいのかについては、日々学び、実際にAIツールを使って体験しながら経験値を貯めていくことも必要です。

参考記事:Should Lawyers Use AI for Briefs? – IR Global 

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