ロシアによる非友好国を対象にした知財制裁

ジェトロも日本語で情報発信していますが、ロシアが友好的でないと考える国の特許権者は、その特許の強制実施権に対していかなる補償も受けられなくなるという法令を発表しました。今回はこの概要とロシアで特許権を持つ日本企業ができそうな対応策をまとめました。

ロシアによる政令の中身

この政令(ロシア語からの翻訳)には次のように書かれています。

「ロシアの法人や自然人に対して非友好的な行為を行った外国に関連する特許権者(その特許権者がそれらの国の市民権を有している場合、その登録地、先取的な事業活動の地、または活動から得られる先取的な利益の地がそれらの国である場合を含む)に関して、対価の額は、発明使用権を行使した者の実際の収益の0%とする。」(JETROの記事で示されていた日本語訳)

英語訳

“With respect to patent holders associated with foreign states who commit unfriendly actions against Russian legal entities and individuals (including if such patent holders have the citizenship of these states, the place of their registration, the place of preferential conduct of their economic activities or the place of preferential extraction of profits from their activities are these states), the amount of compensation is 0 percent of the actual revenue of the person who has exercised the right to use an invention, utility model or industrial design without the consent of the patent holder, from the production and sale of goods, performance of works and provision of services for the production, performance and provision of which the corresponding invention, utility model or industrial design is used.” (underlining added)

ロシア語の政令の原本はこちら

非友好国のリスト(ロシア語)はこちら

政令による影響

この政令の結果、実質、非友好国の企業や組織が持つロシアの特許を侵害するような活動をしてもそれが合法化され、通常のcomposary licenseであっても払われるような対価すら権利者には入ってこない形になります。

そのため、米国、カナダ、英国、日本、欧州連合などの影響国のロシア特許権者は、当面の間、ロシアで特許権を行使することはできないと考えた方がよいでしょう。しかし、現時点では、影響を受ける国はロシアの特許権者に向けて自国の特許法の相互改正を行っていないため、これらの影響を受ける国の当事者は、ロシアの特許権者が影響を受ける国でその権利を完全に行使できるものとして活動を継続する必要があります。

被害を受けた外国権利者はどのように対応すればよいのか?

現在のところ、強制実施権の支払いは不透明ですが、影響を受けた国のロシア特許の所有者は、通常補償を受けることができる商業活動を文書化することをお勧めします。ロシアと影響国の間の通商が再開された場合、ロシア特許の外国人所有者は、ロシアが遡及的な強制実施権の支払いを許可することを期待して、そうした商業活動を証明する文書をすぐに入手できるようにしておく必要があるでしょう。

さらに、特許出願人は、ロシアで特許権を追求することが、不確実性や潜在的な損失費用に見合うかどうか、慎重に検討する必要があります。このようなリスクを考えると、特許権者は、中国、インド、中東諸国など、ロシア近郊の他の国や、制裁中でもロシア人がビジネスを続けることができる国での特許出願を検討した方がよいかもしれません。この出願戦略は、ロシアで製造され、ロシアから輸出される特許製品に対して、ある程度の保護を提供することができます。

また、ロシア特許の所有権を、影響を受ける国の出身でない信頼できる代理人に譲渡することを検討するという方法も考えられます。そうすれば、この代理人によって、係属中のロシア特許出願の審査や、付与された特許の執行が可能になるかもしれません。

ロシア以外の国の特許出願人は、ロシアで係属中の特許出願が特許として認可されず、永久に放棄される可能性にも備える必要があります。というのも、特許庁への費用の支払いが難しく、現時点では、米国内の弁護士がクライアントのために、ロシア以外の特許出願人がロシア国内で通常の特許出願実務を行うのに十分な方法で文書や支払いをやり取りすることは事実上不可能になっています。

通常の国際関係が再開されるまで、世界中の特許出願人は、ロシアの特許権に影響を与える行為に注意し、それに応じて計画を立てる必要があるでしょう。

ジェトロによる日本語の情報はこちらから

参考記事:Russia Suspends Compulsory License Payments for Some Non-Russians

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