メタバース事業を始めるさいの法的な注意点

メタバース・NFT関連の市場は急速に成長しており、その勢いに遅れないようスタートアップだけでなく、大企業も新規サービスを展開し始めているという状況です。ブームに乗ってビジネスチャンスをものにするのはいいのですが、メタバース・NFT関連のビジネスを行う場合、気をつけたい法的問題が数多く存在します。ここでは、メタバースの製作者が避けるべき4つの落とし穴を紹介します。

スマートコントラクトに依存しすぎない

スマートコントラクトやDappsなど、コードのみで表現されたプログラムに依存した当事者間の取引は、効率的である反面、不当な扱いを受けた場合に、当事者がほとんど救済されない可能性があります。

販売、サービス、知的財産権、議決権、その他の重要事項を規定する明確な条件をちゃんと古典的な契約で確立することは、費用のかかる紛争を回避し、権利を行使するための法的救済システムへのアクセスを容易にするのに役立ちます。

例えば、 non-fungible token(NFT)の販売に、NFTに関連する作品の著作権の譲渡が含まれるかどうかが不明確だと、誤解を招く恐れがあります。別の例として、仮想世界を開発・提供するようなサービスでは、法律で認められている場合、(一部の)サービスや機能を独自の裁量で変更または無効化できることを契約で明確にすることで、仮想世界の要素の変更に伴う責任を軽減することができます。

契約はまた、その用語において正確であるべきです。例えば、NFTという用語をトークン(ブロックチェーン上に保存された交換不可能なデータ単位)のみを意味するものとして使用する人もいれば、トークンとそれが関連付けられたデジタル著作物の両方を意味するものとして使用する人もいます。契約書では、この曖昧さを解消する必要があります。

しかし、古典的な契約だけに依存するのではなく、スマートコントラクトを併用することのメリットもあります。例えば、スマートコントラクトを使って、支払いが停止した場合、自動的にサブスクリプションサービスを停止するなど、書面による契約の条項を有効にするのに役立ちます。

とは言うものの、スマートコントラクトなどのコードで表現されたプログラムの活用は補佐的な部分でとどめておき、可能な限り明確で正確な契約書を作成することによって、法的なリスクを抑えるというアプローチが懸命でしょう。

確立された財産権制度をフルに利用する

特定の資産に関して何かを行う法的強制力のある権利を持つことは、財産の概念を生み出すものです。そうでなければ、特定の「財産」を「所有」することは、法的な意味において意味を持ちません。

デジタル著作物を作成する場合、製作者は貴重な著作権、デザイン、商標、契約、その他の所有権を所有し活用することができるかもしれません。しかし、そのような権利には、事前に政府機関への登録が必要だったり、これらの権利を完璧に保護するための措置を取る必要があります。また、著作物を収益化する際に、どのような知的財産権をライセンスまたは譲渡するのかに注意し、侵害行為には速やかに対処することも必要です。

もし第三者のクリエイターが作品を展示・販売できるような仮想世界を作る場合、そのような作品が他人の知的財産権を侵害した場合に備えて、自分自身を守るための利用規約をユーザーに課し、寄与責任(contributory liability)から自分自身を守るための追加的な手段を実行する必要があります。

例えば、米国デジタルミレニアム著作権法(DMCA)は、プロバイダがDMCAに準拠した通知と削除の手順を管理し、その他の所定の手順を踏む限り、第三者の著作権を侵害するユーザー生成コンテンツを受動的にホストするプロバイダに対するセーフハーバーを確立しています。また、米国の判例法では、マーケットプレイス運営者が商標権侵害の寄与責任を回避するためには、模倣品に対する反復侵害者ポリシーが必要である場合があることを示しています。

特定のコンテンツや活動を禁止する法律は遵守する

世界中の法律では、たとえオンラインで行われたとしても、禁止された活動に参加する人々に刑事責任や民事責任を課しています。わかりやすいが重要な例として、児童性的虐待資料(CSAM:child sexual abuse material )の作成と普及があります。仮想世界を運営し、自社のサービス上でCSAMを発見した場合、世界中で報告義務が発生する可能性があり、そのような素材へのアクセスを遮断する方法を用意しなければなりません。

もう一つの例として、自社が所有していない、または利用許可を得ていないブランド、音楽、ビデオ、その他のコンテンツに関連するNFTやその他の仮想資産を生成すると、重大な責任を負わされる可能性があることが挙げられます。米国におけるインタラクティブ・コンピュータ・サービス・プロバイダーは、第三者が排他的に作成または開発したコンテンツのホスティングおよびモデレートに関連する責任から一般に免除されていますが、この免除には、米国連邦法の違反やIP侵害に関するものを含め、重要な例外が存在します。したがって、たとえば、プラットフォームプロバイダーは、連邦刑事法に違反するユーザー生成コンテンツを故意に広めることによって刑事犯罪の遂行を教唆したという主張を退けるために、この免責に頼ることは危険でしょう。

したがって、仮想世界の製作者は、一般に、禁止された行為やコンテンツを迅速に制限し(さらには、オンチェーンデータの不変性を考慮すると、特定の技術的措置を必要とするかもしれません)、違反者のアカウントを終了させる権利と能力を保持するべきです。

プライバシーを考慮したビジネスを行う

モバイルや仮想現実(VR)、拡張現実(AR)のインターフェースは、広範囲にわたる個人データのオンライン収集と利用を可能にし、パブリックブロックチェーンは、インターネット接続があれば事実上誰でもアクセスできる分散台帳にデータを不滅的に記録します。

これらの技術を活用する仮想世界の製作者は、適用されるデータ・プライバシー、セキュリティ、および政府アクセスに関する法律に対処する方法で、当初からサービスを設計する必要があります。

仮想環境におけるユーザーの行動、行為、通信を追跡・記録することはできるかもしれません。また、好ましくないコンテンツや行為から保護するなどの正当な理由があるかもしれませんが、プライバシー侵害を最小限に抑えることを考え、その上で、システムを設計するような取り組みを行うべきかもしれません。

適用されるプライバシー法の下でユーザーが権利を行使し、自社が管理しているそのユーザーについての個人データのコピーを入手したり、そのデータを別のシステムに移植したり、仮想世界から個人データを削除したりするよう要請があった場合に、どのように対応できるようにしますか?

仮想世界で個人データがどのように処理されるかをユーザーが理解し、管理できるようにするために、どのような通知と同意の仕組みを導入すべきなのか?犯罪捜査に関連するデータの提出を要請または命令する法執行機関に対して、どのような支援が可能で、提供できるデータはどのようなものなのか?

EUと英国の一般データ保護規則(GDPR)およびISO 27701で体系化されている設計とデフォルトによるデータ保護の原則を順守するには、この種の質問を早い段階で考慮し、ユーザーのプライバシーを保護する機能を積極的に設計し、自社のサービスを提供するために必要な個人データのみを必要なだけ処理するようにする仕組みを構築することが大切です。

参考文献:Metaverse Creators: Beware these Potential Legal Pitfalls

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

訴訟
野口 剛史

Mayo判決後、診断方法特許の権利行使は困難を極める

最高裁で診断方法特許の特許性に言及したMayo v. Prometheus判決以降、アメリカにおける診断方法特許の権利行使は困難を極めています。 Athena Diagnostics, Inc. v. Mayo Collaborative Servs., LLCにおいて、CAFCは地裁の判決を是正し、権利行使されたクレームは不適格で無効としました。

Read More »
特許出願
野口 剛史

訴訟弁護士が特許を書くべき

特許は正確に書くのが難しい法律関係書類だとアメリカの最高裁が認めるほどのものですが、誰がそのような特許を書くべきかということに対してあまり関心が向けられていません。今回は訴訟を念頭に置くのであれば、特許は訴訟弁護士が書くべきだという主張を紹介します。

Read More »