「取り消し不能な」ライセンスは当事者同士の合意があれば終了させることができる

知財のライセンスにおいて「取り消し不能な」(irrevocable)ライセンスが結ばれることがあります。しかし、これはライセンサーの一方的な行為によってライセンスが「取り消し不能」であることを意味するもので、ライセンスの当事者(ライセンシーとライセンサー)同士の合意があれば終了できることがCAFCの判決により明確になりました。

判決:UNILOC 2017 LLC v. GOOGLE LLC

地裁ではライセンスは解約契約後も存在すると解釈された

Unilocは、Googleを特許侵害で訴え、Googleは、Unilocが収益分配契約の不履行に従って、主張された特許のライセンスとサブライセンスを与える権利をFortress Credit Co.に与えたため、立件できないとして棄却するよう訴えました。Unilocは、たとえFortressにそのようなライセンスを付与していたとしても、UnilocとFortressがGoogleに対する訴訟を開始する前に締結した解約契約(Termination Agreement)により、ライセンスは消滅していると主張しました。

連邦地裁は、「取り消し不能な」(irrevocable)ライセンスが付与され、それが解約契約後も存続しているため、Unilocの訴訟する権利(Standing)を奪うものだと判断し、Googleによる棄却の申し立てを認めました。

CAFCは地裁の判決を覆し、「取り消し不能な」ライセンスは当事者同士の合意で終了させることができるとした

連邦巡回控訴裁(CAFC)は、唯一の問題は、解約契約によってFortressのライセンスが排除されたかどうかであり、このライセンスが排除された場合、当事者(UnilocとGoogle)はUnilocがこの訴訟において訴訟する権利(Standing)を有することに同意している、と指摘しました。

この理解を前提に、CAFCは、解約契約の文言に着目し、同契約が、ライセンスとあらゆる権利を「終了するものとする」と記述することにより、Fortressのライセンスを終了させていると解釈しました。

その上で、CAFCは、連邦地裁がライセンス契約における「取り消し不能」の意味を誤解していたと指摘します。そもそもこの「取り消し不能な」(irrevocable)という用語は、ライセンサーの一方的な行為によってライセンスが「取り消し不能」であることを意味しますが、これは、今回の解約契約のような相互の合意によってライセンスを「取り消し不能」にするものではないと説明しました。

また、CAFCは、Fortressのライセンスは、その性質上、終了後も存続する他の権利と区別し、 解約契約における存続条項(survival provision)に含まれないという見解をしめしました。この判決をもって、CAFCは連邦地裁の判決を破棄し、連邦地裁に差し戻しました。

参考文献:Standing Cured by Revoking an “Irrevocable” License Prior to Commencing Suit

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