オラクルネットワークの発達によりスマートコントラクトの実用性が増して、弁護士を介さない自動化された契約が普及するか注目が集まっています。このような次世代の契約はハイブリッド・スマートコントラクトとよばれていて、開発が進んでいます。
ハイブリッド・スマートコントラクトとは?
スマートコントラクト(smart contract)とは、コードで書かれた自己施行型の契約で、ブロックチェーンによって実行されます。現状のスマートコントラクトは、お金の送受信や簡単な計算には優れていますが、チェーン外のデータにアクセスすることはできないし、複雑な計算をおこなったり、乱数を自ら生成することができない状態です。そのため、既存のスマートコントラクトが、従来の法的契約の代替手段として用いられることはありませんでした。
しかし、ブロックチェーンにオラクルネットワーク(Oracle networks)を導入することで、この問題の解決が期待されています。オラクルネットワークを使うと、スマートコントラクトに検証可能なランダム性、オフチェーンデータ、追加の計算資源を提供することができるようになります。
このようにオラクルネットワークを利用したスマートコントラクトをハイブリッド・スマートコントラクトと呼びます。
ハイブリッド・スマートコントラクトの使用例
ハイブリッド・スマートコントラクトがオラクルネットワークを通じてオフチェーンのデータにアクセスできるようになれば、従来のコントラクトに取って代わることができる可能性がでてきます。
例えば、異常気象の際に保険金を支払う保険の一種である天候保険は、一般的な契約でおこなわれています。しかし、オラクルネットワークが異常気象のデータを提供することができれば、一般的な契約ではなく、ハイブリッド・スマートコントラクトを使うことができます。実用化されれば、異常気象が起こった際に、自動的に契約が執行され、保険金が支払われることが可能になります。
ハイブリッド・スマートコントラクトの利点
従来の契約とは異なり、スマートコントラクトはブロックチェーンによって執行されるため、契約を執行するための外部のメカニズムが不要です。契約で問題が起きた時に訴訟を起こすコストがかからなくなるので、契約は安価なることが期待されます。
また、条件が満たされれば自動で契約が執行されるので、取引における「信用」にも大きな影響を及ぼすことが考えられます。
法律が異なる国際間の取引では、契約のコストが上がったり、契約違反による訴訟のリスクも高くなる傾向がありましたが、契約の文言の解釈問題がない点や、自動で執行されるという点から、国をまたいだ取引にハイブリッド・スマートコントラクトが使われることが期待されています。
通常の契約書では、不確実性というものが存在しますが、ハイブリッド・スマートコントラクトなら訴訟等で契約が無効になる心配もないので、契約の履行を確保できます。
また、今回のパンデミックの際に、アメリカでおこなわれた立ち退きの一時停止は、賃貸契約を事実上無効にしました。しかし、ハイブリッド・スマートコントラクトならこのような政府が介入して、契約を妨害するようなこともありません。