国をまたぐジョイント・ベンチャーをする際の契約で気をつけるポイント

国際化の流れから海外の企業とジョイント・ベンチャー(合弁会社)を立ち上げることがあるでしょう。しかし、そのような外国企業とのやりとりにおいて、重要な機密情報、共同研究の成果、知的財産権(IP)、起こりうるさまざまな紛争とその解決に関して、契約書で言及しているでしょうか?国際的な紛争になると弁護士費用だけでも膨大になる可能性があるので、事前に契約において当事者同士でルールづくりをしておくことが法的なリスクの軽減に繋がります。

国が異なる企業との合弁会社設立まで(とその後)の流れと契約での縛り

外国に拠点を置く企業と秘密保持契約(NDA)を締結し、その外国企業と重要な機密情報を交換し、最終的には共同研究、知的財産権(IP)、および関連投資からの利益を得るために合弁会社を設立したとします。

そのような状況で、自社の開示情報を保護し、紛争の発生を防ぐために、各契約書においてどのようなことに気をつけていますか?

例えば、NDAは、情報交換にとどまらず、ジョイント・ベンチャーも考慮されたものでしょうか?万一、紛争が発生した場合、NDAは、あなたの会社、その開示された機密情報、および関連する知的財産を保護しますか?その契約は、米国法および外国法の両方において、必要な保護を提供するものでしょうか?

これら外国の企業とのベンチャーは特殊です。なぜなら、当事者は通常、ベンチャーという組織を形成する前から情報を共有し、その後、ベンチャーが設立されたら、そこでさらなる情報を共有し続けるからです。また、一方の当事者が「機密情報」として提供した内容と似たものをすでに他方の当事者は「独自プロジェクト」として単独で進めているような場合もあります。

このように合弁会社が形成される前から情報が共有され、合弁会社形成後も同じように(またはそれ以上の)情報が共有されるという契約を行うにおける商業的関係の「ハイブリッド」な性質から、このような活動に用いられる契約をハイブリッド契約(hybrid agreements )と呼ぶところもあります。

ハイブリッド契約で考慮するべき点

秘密保持契約、「ハイブリッドジョイント・ベンチャー」(hybrid joint venture)契約、および関連する国際的な知的財産紛争解決問題に関して考慮すべき事項です。

秘密保持契約(NDA)について

  • 秘密保持契約書の作成プロセスにおいて、様々な法律、裁判地、紛争解決戦略のリスクと利点を比較検討する。
  • 弁護士費用や管轄法を利用した準拠法に関する条項など、紛争が発生した場合に有利な結果をもたらす契約上の紛争解決条項やその他の条項を作成する。
  • 両当事者の情報開示の追跡、記録、隔離、保護など、積極的かつ継続的な情報交換に関連するリスクを管理するためのベストプラクティスを特定する。
  • 除外や例外が開示に及ぼす影響について検討する(パブリックドメインの除外など)。
  • 米国特許庁だけでなく、欧州連合 (EU) や他の国でも戦略的に特許出願を行う。 

ジョイントベンチャー契約について

  • 所有権やライセンスに関する商業的な問題を各当事者が解決するのに役立つ「クリアパス」IP問題を予期しておく。
  • メンバー/マネージャーや役員/ディレクターの協力を促し、事業計画や成果物の実施を促進する条項を盛り込む。
  • 取締役会や経営陣の行き詰まり、知的財産の所有権や機密保持の問題、金銭的な争いの解決を促す紛争解決条項の交渉と草案作成。
  • 外国及び米国における税制上の優遇構造及び関連する事業契約条項の検討をする。

複数当事者、複数管轄のIP紛争について

  • 紛争シナリオを慎重に検討することなく、やみくもに紛争解決条項を盛り込まないこと。
  • また、分割条項(split clauses)が米国での差止請求を可能にしたり、 適用される外国法の下で執行可能であると思い込まないようにする。
  • 紛争を効率的に解決し、コストを削減するために、NDAまたはジョイントベンチャー契約のいずれかに含まれる適切に作成された紛争解決手続を利用する。
  • 企業秘密、社外秘情報(proprietary information)、研究開発成果などが含まれる場合、知的財産の性質と機密性を考慮する。
  • 技術的な背景やIP紛争解決の経験を持つ国際法廷が、紛争解決のために有益かどうかを判断する。
  • 特許にのみ関連する紛争を他のタイプのIP紛争から分離するかどうかを検討する。
  • 紛争を解決するために、どのような規則や手続きを実施するかを決定する。

各方面でアドバイスをしてくれる学際的な法律チームを持つべき

  • 知的財産と機密情報の交換に焦点を当てた米国と外国の商業的関係に対処し、効率的に管理する契約の草案と交渉。
  • 多国籍、複数当事者関係における知的財産紛争解決プロセス全体を通じて、法務チームを管理する (これには、外国の弁護士を雇う際に生じる特別な問題も含まれる)。
  • 予算策定、コスト管理、主要社員および取締役会への簡潔で効率的な情報提示。 

契約は複雑化していく

今回のように国をまたいだ合弁会社の設立には国内で完結するものに比べビジネスチャンスが大きいかもしれませんが、その反面、潜在的な法的・知財的なリスクも増えることになります。それは関わる契約が更に複雑になることを示しているので、1人の弁護士だけで対応できる範囲を超えてきます。

また、いくら事前に自社にとって「完璧」な契約書の草案があったとしても、実際の交渉の際に、相手方が納得するようなものでなければ合意に至りません。通常のジョイントベンチャー契約の場合、規約に関して細かな交渉をするのが一般的なので、どこまで相手に歩み寄れるか?その際の法的リスクはどう変わるのか?を素早く判断して交渉をスムーズに進めるためにも、日頃から上記で示されたような事柄に関して勉強するようにしておくといいでしょう。

参考記事:Hybrid Joint Ventures: What They Are & How They Work

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

time-delay-clock
特許出願
野口 剛史

国際特許出願の審査期間を早めるかもしれない共同検索試験プログラムが拡大

2022年3月29日、USPTOは連邦官報に公告し、拡大共同検索試験(Expanded CSP: Collaborative Search Pilot)プログラムへの参加を容易にすることを発表しました。具体的には、USPTOはカウンターパートである日本特許庁(JPO)および韓国知的財産庁(KIPO)と協力し、両パートナーIPオフィスへの個別の請願書(petition)ではなく、どちらか一方のパートナー特許庁のみに提出する必要のある統合請願書(combined petition)を作成しました。拡大されたCSPの恩恵を受けようとする出願人は、USPTO、KIPOおよびJPOのいずれかまたは両方に未審査の対応する出願があることが必要です。

Read More »