和解契約の内容次第で侵害訴訟を起こせなくなる可能性も

今回紹介する判例では、特許訴訟で和解した企業の事業を買収することで、同じ特許権者による特許侵害訴訟が回避されました。これは和解契約で広範囲なライセンス付与が行われたことが原因です。この判例を教訓にし、和解契約のリリース条項や特許ライセンス範囲は必要最低限にとどめ、将来的な知財訴訟を難しくするような条項は最小限にとどめておくことをおすすめします。

判例:Oyster Optics, LLC v. Infinera Corp.

和解が成立した企業を買収したことで特許訴訟を回避

Oyster Optics社は、通信システムに関連する特許を権利行使するNPEで、当初、Oyster社はCoriant社を特許侵害で提訴し、後に和解しました。その後まもなく、同じくOyster社の被告であるInfinera社がCoriant社を買収します。

Infinera社は、Oyster社がCoriant社と結んだ和解契約のライセンスを理由に、Oyster社の請求を棄却するよう裁判所に求めました。この申し立ては、テキサス州東部地区によって認められ、連邦巡回控訴裁の判事によって支持されました。

和解契約で特許ライセンスの付与範囲が幅広く与えられていた

Oyster社がCoriant社と結んだ和解契約では、広範囲なライセンス供与が含まれていました。具体的には、1) “Affiliates,” という用語には、“any person now or in the future who has control of a party hereto”と書かれており、この和解契約締結後にCoriant社を買収したInfinera社もAffiliatesに含まれるような表現になっていました。

また、2) “Licensed Patents,” には、Coriantに対して権利行使された特許とInfineraに対して権利行使された特許の両方が含まれていました。

さらに、3) “Licensed Product” という用語には、 “products that were made, used, offered for sale…in the U.S. at any time, directly or indirectly, by or for or on behalf of any of the Coriant defendants, their affiliates, or respective predecessors”という表現が含まれており、時間軸におけるライセンス製品の制限はありませんでした。

買収元の企業の過去の製品も将来的な製品もライセンスの対象に

このような幅広いライセンス付与が与えられていたので、1)Infinera社はライセンスを受けているCoriant社のAffiliatesであり、2)ライセンスされた特許にはOyster社 vs. Infinera社で権利行使されている特許も含み、3)ライセンス製品には、過去・未来における制限はないという理由から、Infinera社がCoriant社を買収する前の製品(つまり、Oyster社 vs. Infinera社で争われていた特許訴訟の対象になっている製品)は和解契約に含まれると判断されました。また、同様の理由から、将来的な製品も同様にライセンスの対象になるという判断が下されます。

契約書の作成には最大の注意を

この判例は、契約書を作成する際に「注意」することを警告する一つの例です。

契約書作成時には重要でないと思われる言葉でも、状況が変われば劇的な影響を与えることがあります。今回のケースの場合、上記の定義を少し変更するだけで、結果に劇的な影響を与えたことでしょう。

さらに、訴訟紛争の和解契約書を作成するには、法的な知識だけでなく、市場のコンディションや関係性を理解し、和解契約の一部として与えられるライセンスがどのような影響を与えるかを理解する必要があります。

参考文献:”Stay vigilant: Broadly drafted settlement agreements can doom current and future infringement claims” by Jonathan G. Musch. Thompson Coburn LLP

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