Blackberryは、モバイル技術をカバーする特許ポートフォリオを6億ドルで売却。実質NPEに売ったので、今後アップルのようなスマホメーカーをターゲットにした特許訴訟が増えそうです。スマホビジネスから完全撤退したBlackberryとしては理にかなった知財のマネタイズ方法だったと思います。
正式なプレスリリース
今週月曜日に発表されたプレスリリースによると、Blackberryは、特許売却契約に合意し、スマートフォン関連の特許資産を6億ドルでCatapult IP Innovations に引き渡したということです。
対象となった特許群は、モバイル機器、メッセージング、ワイヤレスネットワークのIPに関連するものです。契約の規約には特許のライセンスバックも含まれているとのことで、今回の売却がBlackBerry社の製品やサービスを利用している顧客に影響を与えることはないとのことです。
売却先はトロール?
プレスリリース内で、Catapult IP Innovationsは「BlackBerryの特許資産を取得するために設立された特別目的事業体」という説明がなされており、この会社は、4億5000万ドルの資金を調達していることから、今回得られた特許資産から利益を出すことが求められている会社です。つまり、Catapult IP Innovationsは、いわゆる「Non-practicing entity(NPE)」と呼ばれる、製品やサービスの販売で収益を上げず、資産保護で収益を上げる可能性が高い企業です。この種の企業は「パテントトロール」と呼ばれることも多いです。
Blackberryの特許を使った訴訟が増える?
過去のBlackberryの特許訴訟を見ると、例えば2018年3月にFacebook messengerを巡ってFacebookに対して法的措置を取るなど、過去にも他社を訴えるために利用されたことがあります。
さらにNPEの場合、Blackberryのようなモノやサービスを提供しているような事業体と異なり、カウンターで訴えた相手が特許の権利行使ができないため、Catapult IP Innovationsはより積極手にBlackberryの特許資産を有効活用するために、特許訴訟やライセンスキャンペーンを行っていくと思われます。
日本企業には真似できない?
時代が進むごとに、トレンドに取り残され既存事業がオワコン化して撤退を余儀なくされることは珍しいことではありません。それは日本企業でも起こることで、実際にそのようなことが起きた事例は数え切れません。
しかし、Blackberry社のように長年特定の業種で大手であり、特許も膨大に持っている日本の企業が主力事業だったビジネスから完全撤退するときに、関連する知財を「トロール」に売却することができるでしょうか?
倫理的な部分だったり、世論を気にして、そのようなオファーがあってもなかなか知財の売却に踏み切れないというところが多いと思います。
もしかしたら、競合他社が事業ごと買収するかもしれませんが、そのときに上記のような世間体から足元を見られてしまい、正しい知財の評価をしてもらえないかもしれません。
少し古いですが、2011年に倒産した無線機器メーカーのNortelの特許オークションでは対価として45億ドルが支払われました。市場の競争に負けた企業や事業の場合、ビジネスの資産価値はとても少なくなってしまいますが、知財は別です。事業がうまく行かなくても業界で「必須」とされている特許を持っていたり、他社にとってとても魅力的な特許ポートフォリオを抱えていることもあります。なので、事業撤退の時は、そのような付加価値の高い知財を特定し、なるべく高い評価をしてくれるところに売却することを検討するべきでしょう。たとえ買い手がパテント・トロールだったとしても、総合的に考えて会社、投資家、ステークホルダーのためにどのようなことをしたらいいのか、一度立ち止まって考えてもらえたらと思います。
参考文献:BlackBerry sells mobile patents to patent troll for $600M