PTOによるAntibodiesに関わるクレームのWritten Description条件

アメリカ特許庁は、Antibodiesに関わるクレームに対する35 USC § 112(a)下のWritten Description条件に関して審査官宛にメモを発行しました。このメモは2017年のCAFCにおけるAmgen v. Sanofiで問題になったAntibodiesに関わるクレームのWritten Descriptionがきっかけになっています。Amgenにおいて、CAFCは、35 USC § 112(a)下のWritten Description条件を満たすためには、Antibodyそのものの開示が必要としました。この判決は、MPEP 2163(II)(3)(a)に書かれている条件( “disclosure of an antigen fully characterized by its structure, formula, chemical name, physical properties, or deposit in a public depository provides an adequate written description of an antibody claimed by its binding affinity to that antigen, if generating the claimed antibody is so routine that possessing the [antigen] places the applicant in possession of an antibody” )(主に”newly characterized antigen test”と呼ばれています)と異なるものです。

CAFCは、newly characterized antigen testは、特許システムの根本の理論 quid pro quo(同等交換)に準じていないと非難しました。 このことを受け、メモでは、newly characterized antigen testの条件に満たすだけでは、Written Description条件を満たさないとしました。

しかし、メモではnewly characterized antigen test以外の内容については、既存のMPEP 2163は有効で、継続して従うことを審査官に指示し、このメモで開示された事柄は、今後MPEPにも反映されると書かれていました。

コメント:

Amgen 事件において、AntibodyとAntigenの関係が必ずしも1対1ではないと見直されたことを受けて、特許庁における出願レベルでもWritten Descriptionの条件が変更されました。このように、裁判での判例によってPTOでの判断基準が変わることはよくあります。有名なところでは、自明性に関するKSRや特許法101特許保護適格性 (Patent eligibility)に関わる変更などがあります。このように特許庁で判例が反映されるまで多少の時間がかかることが大半です。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Bernard P. Codd. McDermott Will & Emery

https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=403b7493-50af-4951-a7d4-fc20eba47d7a

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

election
訴訟
野口 剛史

バイデン大統領の下では、知財は改革されるよりも進化する可能性が高い

前回はバイデン政権下における特許庁や次の長官の話をしたので、今回は司法省や裁判所など政治的な観点から知財の動向を語る上では外せない行政や司法機関を見ていきましょう。例えば司法省の反トラスト部門はSEPに関わる重要な行政機関です。また、特許訴訟が行われる連邦裁判所の判事の任命権は大統領にあります。そこで今回は政治と知財の話パート2として、司法省や裁判所の話をします。

Read More »
訴訟
野口 剛史

デザイン特許の損害賠償の未来

2016年の Samsung Electronics Co. v. Apple, Inc.からデザイン特許が再注目されてきましたが、最高裁で提示されたテストの適用について、まだ明確な「ルール」はありません。今回は、現在控訴中のケースから予想されるデザイン特許の損害賠償の未来について考察します。

Read More »