2022年1月8日より、すべての商標電子出願(TEAS)およびTEASi出願人は、USPTOアカウントにログインする際に身分証明書の確認作業を開始することができるようになりました。ID確認は2022年4月9日までに完了する必要があり、それ以降、ID確認が完了していない者はTEASおよびTEASiからロックアウトされます。これも数ある特許庁による商標出願への取締強化の取り組みの1つです。
本人確認で不正な商標出願を減らす
ID認証の目的は、USPTO.govアカウントの所有者が、実際にそのアカウントに登録されている人物であることを確認することです。USPTOは最近、外国法人からの不正な商標登録の大量流入に悩まされています。USPTOは、ID確認プログラムにより、不正な出願の数を減らすことを目的としていると主張しています。
なお、スポンサーの下で出願するユーザーは、ID確認を受ける必要はありません。外国のUSPTO.gov出願人(米国政府発行の身分証明書を持たない者)は、検証ウィザードで自動的に身分証明書の検証を受けることができず、代わりに、身分証明書の検証を受けるために、ウェブ会議のライブ「レフリー」に転送されることになります。
USPTO.govのアカウント所有者は、身分証明書を確認する必要はありませんが、代理人なしの所有者(以前は弁護士がついていたとしても)を含め、出願を希望するアカウント所有者は、政府発行の身分証明書を使用してアカウントを確認する必要があります。USPTOアカウント名は、アカウント確認に使用した政府発行のIDの名前と一致しなければならず、特定の状況(政府公認の名前変更など)を除いて変更することはできません。
USPTOは、サードパーティの身元確認プロバイダ(”Id.me”)を利用して、ウィザードを使用してオンラインで身元確認を行っています。前面カメラとインターネットアクセスのあるデバイスが必要です。検証ウィザードは、社会保障番号、前面カメラによる自撮り、政府発行のIDの写真の提出を求める。その後、ソフトウェアがソフト的な信用チェックを行い、ユーザーを確認します。
ウィザードによる本人確認に失敗した場合、ユーザーはライブの「レフェリー」に転送され、本人確認のためのウェブ会議に参加することになります。
オンラインによる本人確認ができない方、またはオンラインによる本人確認を希望されない方は、公証人による紙面での本人確認手続きを使うことになります。
日本からの出願は代理人経由なのでID確認プログラムをする必要はなし
日本を含むアメリカ以外の国からアメリカの特許庁に商標出願をする場合、アメリカの代理人が必要になっているため、日本の出願人がID確認プログラムで本人確認をする必要はないと思われます。
しかし、仕事を依頼している現地のアメリカ代理人はID確認プログラムを使って本人確認をする必要があるので、一度手続きを行ったか確認してみるといいでしょう。
そのときに、USPTOが発行しているガイドラインを添付するといいでしょう。
この規制強化には伏線があった?
実際、どのような経緯で今回のID確認プログラムが行われたのかはわかりませんが、以前紹介した記事「詐欺的な商標出願を支援した弁護士が特許庁から制裁を受ける」において、中国の出願人のために大量の出願を行った米国の弁護士に処罰がくだされたことを報告しました。
この件では、弁護士のアカウントの又貸しが行われていたようなので、そのような行為を未然に防ぐための今回の処置なのかもしれません。
いずれにしろ、アメリカにおける商標出願・登録更新に関しては、より厳しいルールや規制が適用されてくると思われるので、思わぬ手続きの遅れや費用の増加を防ぎ、スムーズな権利化・登録更新を行うためにも、信頼できる経験豊富な商標に詳しい現地代理人を雇うことをおすすめします。
参考文献:USPTO to Begin New ID Verification Program for Trademark Filers in January 2022