詐欺的な商標出願を支援した弁護士が特許庁から制裁を受ける

商標出願の急増とそれに伴う「疑わしい出願」の増加により商標審査の遅れが生じています。特許庁はこの事態を重く見ていて様々な取り組みを行っており、その一環として今回の不正摘発があったように思えます。現状を考えるとこれが氷山の一角と見ることもできるので、今後も似たようなケースで処罰される弁護士が増えるかもしれません。

商標出願の急増とそれ伴う「疑わしい出願」の増加

今年の夏に米国特許商標庁(USPTO)が報告したように、2020年後半以降、アメリカおよび外国の出願人からの商標出願が 前例のないレベルで急増しています。2020年12月だけでも、USPTOは9万2608件の商標出願を受理し、2019年12月と比較して172%の増加となっています。この異常な量の出願により、米国の新規商標出願の手続き審査に滞りや遅れが生じているだけでなく、「不正確なものから不正なものまで疑わしい出願」が顕著に増加して大きな問題になっています。

このような不正な商標出願は、商標登録の質と完全性に悪影響を及ぼし、実在するブランドと同一または類似した商標の不正な出願によってブロックされる可能性のある正当なブランド所有者に、法的および経済的に大きな影響を与えます。対策として、商標を保護・行使する法的義務に直面している正規ブランド所有者は、抗議文を提出したり、Trademark Trial & Appeal Board(TTAB)に異議申し立てや取消訴訟を提起したり、さらには連邦裁判所で訴訟を起こしたりしていますが、そのような違法な出願に異議を唱えざるのは簡単な作業ではありません。このような権利行使や防御行動は、USPTOの効率を悪化させ、ブランドオーナーに本来必要のないコストを負担させることになり、本来リソースをかけたい通常の商標問題から予算を減らす可能性があります。

取締の強化と偽装

USPTOは、2020年のTrademark Modernization Actの側面を含め、疑わしい出願や不正な出願を見直し、評価し、異議を唱え、対抗するための様々な戦略やツールを使いはじめました。また、2019年にUSPTOは、海外の商標出願人は米国の弁護士と一緒に出願することを義務付けるルールを実施

しかし、今度はこの米国弁護士の義務化に対応するため、多くの海外出願人(主に中国)が出願書に名前が記載された米国弁護士の名前、住所、弁護士資格を偽装するというケースが出てきました。また、やっかいなことにゲートキーパーのはずの米国弁護士が不適切な行動をとるケースも出てきます。

例えば、USPTOの調査によると、中国の出願人のために大量の商標出願を行っている特定の弁護士の一部が、クライアントの商標出願情報の真偽について適切な調査を行わずに中国から仕事を引き受けている可能性があることが明らかになりました。一例を上げると、USPTOが中国の出願人から提出された疑わしい出願書類を調査したところ、実際には存在しないか、在庫がない商品のeコマースリストを含む、加工された、または偽装された使用証明書が提出されていたことが明らかになりました。

不正に加担した弁護士への制裁

2021年9月、中国の出願人のために大量の出願を行った米国の弁護士に対するUSPTOの調査の結果、2つの制裁命令が出されました。1つ目は、インドにある集中型の「出願ゲートウェイ」プラットフォームの米国拠点のエージェントとして不正とみなされる数千件の出願を行っていた弁護士に対して出されたものです。この制裁措置には、12ヶ月の保護観察期間と、倫理および商標に関する授業の受講が義務付けられています。

もう1つの米国の弁護士に対する制裁は、中国の出願人のために署名した出願を適切に審査する十分な努力を怠ったと指摘されています。この弁護士は、商標出願に自分の署名が使われていることを知らなかったのではないかと言われています。

実務上の注意

USPTOは海外の出願人からの膨大な数の商標出願について調査を続けているため、追加の制裁措置が取られる可能性があります。クライアントを代表してUSPTOに出願する米国の弁護士は、クライアントやクライアントから提供された出願書類やそれに付随する出願書の情報を確認する必要があります。

このような自分の名義を代理人として使うための「必要最低限」を怠っていると、USPTOに「不適切な行為」としてみられ、処罰の対象になる可能性があります。

参考文献:US Lawyers Aiding Scam Trademark Applications May Face Sanctions

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