USPTO長官にKathi Vidal氏が指名されたことを受けて、医薬品の価格設定におけるUSPTOの役割を見直そうとする行政府と立法府の両方からの要請に対するUSPTOの対応が注目されています。
行政による医薬品の価格への取り組み
今年初め、行政機関はCOVID-19ワクチンの知的財産権放棄を支持しましたが、それに続いて7月に出された大統領令では、FDAがジェネリック医薬品やバイオシミラー医薬品の競争の不当な遅延や、医薬品の価格設定への悪影響に関する懸念事項をUSPTOに明らかにするよう指示しています。9月10日にFDAがUSPTOに送付した書簡で指摘された懸念事項や協力の可能性については、9月9日と16日に上院司法省知的財産小委員会の主要メンバーと議会の超党派の署名者グループからそれぞれ送付された書簡で改めて指摘されました。
9月の書簡では、FDAはUSPTOとの協力関係の強化に関心を示し、FDAのデータベースやリソースをUSPTOの審査官が利用できるようにすることで、特許出願の審査や先行技術の特定を容易にすることに関心を示しています。9月9日の上院議員の手紙でも、省庁間の協力関係の強化が謳われていますが、その中で特に要請されていたのは、「特許出願人が行う矛盾した表現によって不適切な許可がなされることを減らすために、両省庁が協力すること」でした。このような矛盾は、現行の開示義務に違反し、不公正な行為により特許権の行使ができなくなる可能性があることは認められていますが、上院書簡ではさらに、このような虚偽の陳述は拒絶理由となるだけでなく、他の制裁理由にもなり得ることを示唆しています。
この矛盾の表現が問題になった場合の知財における問題は、先週紹介したBelcher Pharmaceuticals LLC v. Hospira Inc.事件で詳しく解説しているので、参照してみてください。
知財を用いた遅延行為への懸念とUSPTOへの協力要請
また、FDAは、ジェネリック医薬品やバイオシミラー医薬品の参入を遅らせるための特許の不正使用が、特許のエバーグリーン化、製品のホッピング、「特許の壁」を作るための継続的実施など、いくつかの既存の慣行から生じる可能性があることを懸念しています。
FDAは、USPTOに対し、IPR(Inter partes review)やPGR(Post grant review)などのPTAB手続に関する情報提供を別途求めていますが、9月16日付の議会書簡では、PTAB裁判と薬の価格の関係をより直接的に描いています。特に、IPRの申請が却下されるケースが増えていることから、特許の乱立やプロダクトホッピングに対抗するための重要なツールが無効になっていると懸念を示しています。
長官が任命されたことでUSPTOにおける取り組みも始まる?
USPTOは、この執行部と議会のコメントに対して、まだ何の回答もコメントも出していません。しかし、仮にUSPTOがFDAや議会の懸念に同意したとしても、新しい政策が具体的にどのように実施されるかはまだわかりません。例えば、USPTOとFDAの間の省庁間協力では、FDAの承認前の特定の手続きの機密性を考慮する必要があるかもしれません。継続出願の制限に関して、USPTOは2007年の最終規則で継続出願の制限を試みましたが、特に出願人は権利として2つの継続出願に制限され、それ以上の出願には出願人の正当性が必要でした。USPTOの提案した制限は法廷で争われ、最終的には、その後の大統領政権で新しいUSPTO長官によって規則は取り消されました。
しかし、今回バイデン政権下におけるUSPTO長官にKathi Vidal氏が指名されたことでUSPTOの今後の動きに注目が集まっています、もしかしたら、今後予定されている公聴会では、現大統領政権下でのUSPTOの優先事項が明らかになるかもしれません。
参考文献:Calls for USPTO to adopt policies to modulate drug pricing