バイデン政権の知財放棄賛成はポストコロナでも大きな問題に発展する可能性も

パンデミック対策のために知的財産権の放棄を支持するというバイデン政権の決定は、知財業界に大きな懸念をもたらしています。米国特許庁不在の中、決定された国の方針、そして今後のパンデミックで起こり得る知財放棄の問題を考えます。

コロナワクチン知財放棄に関するWTOでの議論はまとまる目処がたたず、的財産権の放棄を支持するというバイデン政権の決定は一見「政治的なパフォーマンス」で実態のないものだと思われるかもしれませんが、それは大きな間違えです。

今回のパンデミックで知財放棄が考慮されたのであれば、次に同じような危機に面した場合、同じように知財が問題視される可能性が考えられます。

今回のバイデン政権の決定で注目したいのが、米国特許庁の長官が任命される前に決定を下したという点です。現在米国特許庁は、代理長官が役割を担っていますが、代理長官は政治的に選ばれた人材ではありません。そのため、今回の政権の決定に関与していたことは考えにくく、バイデン政権の中で誰が「コロナワクチン知財放棄賛成」の影響を考えてアドバイスをしたのでしょうか?もしかしたら、誰も専門家がいなかったのかもしれません。そうだとしてら、それ自体が大きな問題です。

また、近い将来、バイデン政権が正式に特許庁長官を任命したとしても、その長官は政府の方針に従い知財放棄賛成という立場を取らないといけなくなります。その時点で、アメリカにある様々な知財団体と多くの知財コミュニティを「敵に回す」ことになります。

もし特許庁長官に知財に対して懐疑的な人が任命されてしまうと、長期的にアメリカの知財業界に大きな影響を及ぼす可能性があります。そして、この問題は、製薬やバイオ技術だけにとどまらず、あらゆる技術に派生していくことでしょう。

参考記事:Biden’s backing for the covid vaccine IP waiver should concern all rights owners

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