ソフトウェア特許のドラフトポイント:先行例の問題と解決方法を明記する

アメリカではAlice事件の後(Post Alice)、ソフトウェア関連の特許適格性(Patent Eligibility)が問題になっています。最高裁がAlice事件で特許適格性情報について言及したものの、その最高裁の方針を具体的に特許庁で審査したり、また、地裁やCAFCで審議するにあたっては、まだ混乱があり、ソフトウェア関連特許の特許適格性は例え権利化できたとしても不明確です。

ここでは、最近CAFCで有効と判断されたU.S. Patent Nos. 8,713,476 と 8,434,020からソフトウェア特許の特許適格性についてのヒントを得たいと思います。U.S. Patent Nos. 8,713,476 と 8,434,020は、Core Wireless Licensing S.A.R.L. v. LG Electronics, Inc.において権利行使された特許です。この判例で、対象特許のクレームはgraphical user interfaces (GUI)の改良について書かれていて、インデックスに関わる抽象概念ではないとCAFCは判断しました。この結論の理由として、CAFCは、1)電子機器における情報のまとめと表示に関わる特定の方法をクレームしていること(the claims were “directed to a particular manner of summarizing and presenting information in electronic devices” )と、2)明細書内で、先行例のユーザーインターフェイスに対する問題が明確に書かれていて、かつ、特許がどのようにそのような問題を解決するかが書かれていたことに注目しました。

1つ目の点からは、特許適格性の判定が難しいことがわかります。過去の判例を見ると似た書式のクレームに対して特許適格性なし(U.S. Patent No. 7,707,505のクレーム1。Internet Patents Corp. v. Active Network, Incで問題になった)と判断された経緯があります。このように、同じような書式のクレームであっても特許適格性の判断は変わってくるので、このCore Wireless 事件からこの1つ目の点における教訓を得るのは難しいところです。

しかし、2つ目のポイントは、今後のソフトウェア特許明細書の作成に役立つ点があります。対象になった特許、特に’020 特許において、先行技術は遅く、複雑で、操作を学ぶことも難しく、特に初心者にとっては難しいものだった(the prior art is “slow, complex and difficult to learn, particularly to novice users”)ことが詳しく説明されていました。更に、明細書内において、特許でクレームされた方法は、いかにユーザフレンドリーな操作を可能にするか(how the patented process “saves the user from navigating to the required application, opening it up, and then navigating within that application to enable the data of interest to be seen or a function of interest to be activated”)が詳細に書かれていました。

アメリカ向けのソフトウェア関連の明細書を書く弁護士・弁理士は、このCore Wireless事件における判例を、他のソフトウェア関連の判例と共に、詳しく学ぶべきと元記事の著者である Jake W. Gallau氏は進めています。ソフトウェア関連の特許適格性の判断は未だに難しい状況にありますが、Core Wireless事件における問題提起と解決方法の開示を学び、日々の実務に応用することは、ソフトウェア特許の有効性を上げるものになります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Jake W. Gallau. Baker Botts LLP

http://www.bakerbotts.com/ideas/publications/2018/march/core-wireless

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

binders-filings-data-record
再審査
野口 剛史

IPR、CBM、PGR統計データ:2021年4月と5月

PTABでおこなわれているIPR、CBM、PGRに関する4月と5月の統計データをまとめた情報です。特に大きな変化はありませんが、統計的なデータが頭に入っていると役に立つと思うので紹介します。

Read More »
Spanx
特許出願
野口 剛史

特許審査履歴解説: すでに廃止されたFirst Action Interviewを用いて苦戦しつつも権利化した案件 (Spanx)

First Action Interviewというあまり使われていない早期審査が行われたケースです。1回目のOAが来る前にインタビューができたり、OA対応の期限が短かったりと、効率的な権利化に向けての手続きがセールスポイントになっていましたが、すでにこのパイロットプログラムは廃止になっています。廃止の原因はわかりませんが、今回の出願の審査もそんなに早くなく、逆に通常よりも遅いような印象があるので、First Action Interviewはうまく機能しなかったのかもしれません。しかし、OA対応を行った代理人はインタビューやAFCPも効率的に使い、対応としては良かったほうだと思います。ただ、発明が衣類に関わるものだったので、技術エリア的に、新規の特許の取得が比較的難しい分野だったので、苦戦を強いられたのかもしれません。

Read More »