アメリカ中間対応をマスターする

特許事務所での売り上げ向上を考えた時、単価の高い仕事をやると言う方法がありますね。そこで、今回はアメリカ中間対応をできるようにして利益を高める方法について考えていきたいと思います。

アメリカ関連の業務は単価の高い

これは実務でアメリカ出願に携わっている人にとっては当たり前の話かもしれませんが、今回のアイデアの前提になる話なので簡単に説明します。

一番簡単な比較は明細書作成にかかる代理人費用だと思います。アメリカの「平均」は$8800だそうです。(https://thervo.com/costs/how-much-does-a-patent-cost)このデータをそのまま鵜呑みにするかは別の話として、日本の代理人費用よりも明らかに高額ということがわかります。当然このような費用の差は、明細書作成だけでなく中間対応にも反映されます。

極端な話、拒絶対応のような手続きとしてはとても似通った作業であっても、日本とアメリカの代理人費用には雲泥の差があることがわかります。

逆に言うと、アメリカの中間対応業務の一部でも日本で行うことができれば、その収益の一部を日本の特許事務所で稼ぐとことができるのです。

アメリカ中間対応には顧客にもメリットがある

本来米国で行われる業務の一部を日本の事務所が行うことのメリットは顧客にもあります。一番大きな点は、発明をよく知っている明細書を書いた人が中間対応をすることでより強い特許を得ることができるということです。

内外を専門に扱っているアメリカの代理人がどれだけ明細書に書かれている技術内容について知識があるか考えたことはありますか?彼らは日々大量の内外案件を扱っています。つまり、1つ1つの案件をじっくり読み込むよりも、より効率的に「処理」していくことにインセンティブが働く傾向にあります。

当然、内外をやっている代理人のすべてがそうであると言っているのではありませんが、それでも1件に使える時間は有限です。その中で、明細書を書いた日本の代理人よりもより深く発明を理解するような芸当をできる人はめったにいないと考えても過言ではないでしょう。

そのため、より発明やクレームに関する知識が豊富な日本の代理人がアメリカの出願であっても中間対応をすることにクライアントの観点からも多くのメリットがあることがわかります。

問題は日本の代理人の知識・経験とアメリカ代理人の理解

このようにアメリカ中間対応を日本側で行うことは、事務所にとってもクライアントにとってもメリットがあることですが、問題も多くあります。

その1つが、日本代理人のアメリカ特許実務に関する知識と経験。日本における中間対応と似ているところもありますが、違うところもあるので、アメリカにおける特許実務をわかっていないと適切な対応ができません。もちろん、英語も仕事で十分使えるレベルの熟練度が要求されます。日本業務だけでも膨大な知識と経験が必要なのに、アメリカ業務をちかも英語でやらないといけないというのは弁理士にとって大きな負担になってきます。

しかし、最近はDeepLなど機械翻訳の精度が劇的に上がってきているので、英語のハードルは確実に低くなってきています。このようなツールを賢く使えば、英語が必ずしも得意でなくても、中間対応ができるようになるかもしれません。

また、アメリカ特許実務に関しては、このOLCなどで情報を得ることもできるし、英語が得意であれば(またはDeepLなどを活用して)英語の文献や情報で直接学ぶこともできます。更に、Takumi Legal Communityのようなアメリカの知財に特化したコミュニティに入って、定期的に行われるワークショップなどに参加したり、現地の代理人に質問したりすることで、随時対応していくという方法も考えられます。

アメリカの中間対応を日本で行うには弁理士の負担は確かに増えますが、以前に比べて負担の度合いが低くなり、便利なツールやサービスもあるので、すでにあるものを賢く使いこなすことで、現実可能なレベルにまで負担が軽減してきていると思います。

日本の弁理士が対応できるようになっても、現地のアメリカ代理人の理解がなければ中間対応はできません。ライセンスビジネスなので、日本の弁理士さんがアメリカのパテントエージェントでない限り、アメリカの代理人を活用しないといけません。しかし、アメリカの代理人としては本来自分の業務であり貴重な収入源である中間対応の仕事を日本の代理人がやってしまうといい印象を持たないかもしれません。

いままで使っていた事務所だったら、彼らの収入が減るので問題に発展しそうですが、このタイミングで他のより理解を示してくれる事務所に変えるのも手だと思います。ビジネスは常に変化していくので、長年使っていた事務所であっても、利害関係が成立しなくなることもあるでしょう。それは仕方がないことです。逆に利害関係が崩壊しているのに、関係を続けるのは健全ではありません。

アメリカには知財を取り扱う特許事務所や法律事務所がたくさんあります。その中から、自分の取り組みに理解を示してくれて、適切なサポート(作成された中間対応のレビューなど)を適正価格で行ってくれるところは必ず見つかるはずです。

TLCの紹介

ちなみに、このアイデアのベースになっている話題は、OLCを更に進化させた全く新しいコミュニティ型のプラットフォームTakumi Legal Communityで最初に取り上げました。

TLCはアメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる今までにない新しい会員制コミュニティです。

現在第二期メンバー募集の準備中です。詳細は以下の特設サイトに書かれているので、よかったら一度見てみて下さい。

ニュースレター、公式Lineアカウント、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

公式Lineアカウントでも知財の情報配信を行っています。

Open Legal Community(OLC)公式アカウントはこちらから

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

letter
商標
野口 剛史

困難な外国人被告への訴状の送達の画期的な対策

一般的に、外国にいる被告をアメリカで訴えるには訴状の送達が課題の1つとなります。通常は、ハーグ送達条約に基づき、手続きを進めることになりますが、煩雑でとても手間がかかります。しかし、商標に関するランハム法では、別の方法を使って海外にいる被告でも送達の条件を満たすことができ、今回、そのランハム法15 U.S.C. § 1051(e)を利用した送達が行われ、その合法性が第9巡回控訴裁で認められました。

Read More »