知財のためにやること、やるべきでないことトップ10

  1. 発明、技術開発、その他の知財を生み出す可能性のある従業員に対して、生み出された知財を会社に譲渡するよう契約を結ぶ

 

このような知財譲渡契約書がないまま、知財が創造されてしまいうと会社の知財部を悩ます問題に発展しかねません。このような知財譲渡契約書は、単体ではなく、雇用をするときの雇用契約書の一部として知財譲渡規約があるとスムーズに進む場合が多いです。どのような形の契約書でもいいのですが、大切なポイントは、従業員が働き始めた時に、契約を結ぶことです。細かくなりますが、譲渡の文言は、“agrees to assign”という表現ではなく(このような言葉が使われていて譲渡が認められず裁判で負けてしまった会社があります)、将来の発明についても現時点で譲渡すると明言するような文言を用いましょう。(文言の詳細等は、知財に詳しい弁護士に相談してください。)

 

  1. 重要な技術を開発したらすぐに特許として守れるか考える

 

特許を取る上で大切なことの1つが「待たない」ことです。競合他社に同じ発明に対して特許出願をされてしまうと、難しい立場になってしまいます。また、出願しないまま、発明が使われた製品を売ったり、発明を公開してしまったりすると、公開から特許出願までの猶予期間(アメリカの場合、公開から12ヶ月)が認められているアメリカなどの一部の国でしか特許を出願することはできません。特に公開されてしまうと出願できなくなる国が多いので、複数の国で出願することを希望する場合は、特に出願を待たないことが重要です。

 

  1. 特許を出願するか決断する前に、先行例調査を行う

 

出願前に先行例調査を行うと、自分の発明が特許になりそうかより明確にわかります。理想は、特許庁の審査官が行うようなレベルの先行例調査をすることです。アメリカでの出願は多くの費用と時間がかかるので、先行例調査を事前に行うことで、出願がコストに見合うかを早期に判断することができます。

 

  1. もし発明が特許で守れそうな場合、出来る限り、外部に開示する前に特許出願をする

 

  1. もし発明を外部に開示する前に特許出願ができない場合、秘密保持契約を結ぶ

 

ビジネスの状況によっては、どうしても特許出願前に、サプライヤーや共同開発パートナー、顧客などに発明を見せなければいけない場面があると思います。そんなときは、自社の発明・技術を開示する前に、秘密保持契約を結ぶことが有効です。

 

  1. 既存の秘密保持契約の元、頻繁にある特定の会社と機密情報を共有している場合、新しいプロジェクトが始まるときなど、区切りがいい時に、 既存の秘密保持契約が継続していることを確認する

 

期限の他に、既存の秘密保持契約の範囲に新しいプロジェクトの内容も含まれているのかを確認することが重要です。

 

  1. 特定の会社との秘密保持契約には気をつける

 

秘密保持契約は、気をつけないと問題になることがあります。例えば、秘密保持契約を結ぼうとしている会社が似たようなアイデアをすでに持っている場合、自社ですでに持っている情報が、相手の機密情報によって制限されてしまうことがあります。そのような懸念がある場合、最初の会議は機密情報なしという理解の元に情報交換を行い、自社と相手の会社の活動やアイデアの概要を把握することにして、その後、お互いに情報交換を進めていくのであれば、お互いの他の活動に影響を及ぼさないような秘密保持契約を結ぶことをおすすめします。

 

  1. 新しい製品の名前には独特な名前をつけ商標として守る

 

商標(Trademarks)の強さは商標によってそれぞれです。商標が強ければ強いほど、より多くの似たものを排他することができます。製品の特徴、原料、質などを強調する名前は顧客にメッセージを伝えやすいと思うかもしれませんが、商標としてはあまりおすすめできません。そのような名前よりも、より独特な名前をつけることで、より商標としての威力は強まります。

 

  1. 新しい製品の名前を決める前に、商標調査をする

 

新製品の発表にはお金や時間がかかります。主力商品であればなおさらです。しかし、新製品を発表してからその製品の名前が、他社の似た製品の名前に似ている場合、商標侵害の疑いが懸念されます。そのようなリスクを避けるためにも、新製品の名前を決める前に、商標調査をすることをおすすめします。

 

  1. 商標の登録を考える

 

商標は商用で使うだけで発生しますが、連邦商標登録をすることで、さらなる価値を生みます。

 

  1. (おまけ) 会社のドメイン名が会社の名義で登録されていることを確認する

 

ウェブサイトの構築と運営を外部に委託している場合でも、ドメインなどの権利はすべて自社に帰属していることを確認してください。

 

まとめ作成者:野口剛史

 

元記事著者:Eric J. Snustad and David C. West. Fredrikson & Byron PA

https://www.fredlaw.com/news__media/2018/05/01/1862/top_10_list_of_basic_dos_and_donts_for_ip

 

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