NPEにも影響を与えるTC Heartland以降の裁判地の問題

最高裁のTC Heartlandにおける判決は、特許訴訟が行われる裁判所の分布を大きく変えた。一時期、NPEはほぼthe Eastern District of Texasのみで特許訴訟を行なっていた。しかし、TC Heartlandにおける最高裁の判決から、被告側から裁判地の変更の申し立てが相次いだ。

 

TC Heartland事件 ― TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC において、最高裁は、特許訴訟の際には特別な裁判地(venue)に関するルール28 U.S.C. § 1400(b))が適用され、米国内企業の「居住」(resides)している地は、会社の設立地であると限定的な解釈をした。

関連記事:裁判所選びができなくなる?実は特許訴訟には裁判地を限定する特別なルールがあった

「法律の変更」は進行中の訴訟に大きな影響を与える

TC Heartland速報:外国被告人が関わる場合の適切な裁判地とは?

最高裁におけるTC Heartlandの判決以降、NPEは裁判地の変更を認めざるおえなかったり、テキサス州における訴訟を取り下げ、別の地で新たに訴訟を起こす必要に迫られた。この判例によって、NEPの訴訟はテキサス州以外の地でTC Heartlandにおける判決に準じた裁判地で行われる可能性が高い。

 

TC Heartland事件以降、the District of DelawareがNPE訴訟に関して最も人気のある裁判地になった。2番人気は、僅差でthe Eastern District of Texas。The Central and Northern Districts of California と the Northern District of Illinoisも人気で、その管轄には多くの新興企業の本社があるLos Angeles, Silicon Valleyや Chicagoなどを含む。そのため、そのような裁判地は、トップ5にランクインしている。(元記事のグラフを参照)。

 

TC Heartlandの以前と以後を比べると、とても大きな変化が見て取れる。NPE関連の訴訟は57% the Eastern District of Texasで行われていて、2番人気の裁判地はthe District of Delawareで、わずか8%ほどだった。

 

通常企業の特許訴訟は、TC Heartland事件に特に影響は受けず、通常通りの訴訟の分布になっている。The District of Delawareにおける通常企業による特許訴訟の減少は、NPEによる訴訟が同じ裁判所に流れ込んできたので、混んでいる裁判地を避けるような戦略をとったことによるものだと思われる。(元記事のグラフを参照)。

 

TC Heartland事件以降の直後、現在進行中の特許訴訟において、裁判地を変更できるかという点で混乱があったが、CAFCは、In re: Micron Tech., Inc., において、TC Heartland事件で最高裁が下した裁判地(venue)に関する判決は、既存の法律を変更するものであって、現在進行中の特許訴訟における裁判地の特定にも影響するとした。

 

参考文献:「法律の変更」は進行中の訴訟に大きな影響を与える

 

また、CAFCは、In re Cray, Inc., No. 2017-129 (Fed. Cir. Sept. 21, 2017) において、Eastern District of Texas Judge Rodney Gilstrapによるルールを覆し、28 U.S.C. § 1400(b)に書かれている裁判地に関わる要素の一つ「習慣的な定着したビジネスの場」(“regular and established place of business”) は、地域内にある被告人の物理的な場所(“a physical place within the district” that is the “place of the defendant” )である必要があると判決した。

 

参考文献:特許訴訟に関わる裁判地の要素: In re Cray

 

まとめ作成者:野口剛史

元記事:RPX Blog

http://www.rpxcorp.com/2018/01/02/2017-in-review-a-year-of-transition/

 

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